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コラム

Jリーグ副理事長 原博実が試合解説“イイ時間帯ですね。”

2016/9/17 12:10

野津田のポジションと闘莉王の復帰【明治安田J1 2nd 第11節 新潟vs名古屋】(♯8)

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いよいよ今シーズンも佳境を迎えるなかで、優勝争いと同様に残留争いも現実のものとして迫ってきている。今回はその残留争いを強いられているチーム同士の対戦となった9月10日のアルビレックス新潟vs名古屋グランパスの試合を観てきたので解説する。

まず新潟の視点から見ていくと、この試合に勝てば年間順位で(降格圏となる)16位の名古屋との勝点差を10に広げられる一方、敗れれば4ポイント差まで詰められてしまうという状況。勝つか負けるかで大きく状況が左右する、彼らにしてみればまさに大一番と言える一戦だった。

■新潟のフォーメーション
この重要な試合に向けて非公開練習を続けてきた新潟は、普段の4バックから3バックに変更する奇策を用いてきた。映像を見ると分かるけど、実際は攻撃時には4-1-5、守備時には5バックへと変化する。本来は攻撃的なタイプの選手である野津田 岳人が、この日は下がりめのセントラルミッドフィルダーとして起用された。

■野津田のプレー
野津田は攻撃時には最終ラインまで降りていき、ビルドアップの役割を担っていた。ボールと相手を動かし、できたスペースに自身が飛び出していくイメージだったと思うけど、その頻度は少なく、なかなか持ち味である攻撃力を示すことができなかった。後半に入ると徐々に前に出ていく場面は増えていったけど、前半のうちに先制し、逃げ切り態勢に入った名古屋の守備を崩すには至らなかった。

■闘莉王の復帰
実に19試合ぶりに勝利を挙げた名古屋は、なんといっても田中マルクス闘莉王の存在に尽きる。降格の危機に瀕した古巣を救うべく、急遽ブラジルから戻ってきた闘莉王にとっては去年の11月以来の実戦。10か月もブランクがある選手が、準備もそこそこにプレーをするなんて、普通はあり得ないことだ。でも闘莉王は90分間ピッチに立ち続け、しかもチームに勝利をもたらしたのだから、やはりタダ者ではないよね。

この試合、闘莉王の動きを注意深く見ていたんだけど、確かに序盤の動きには、ブランクが感じられたよね。頭の中にイメージはあるのに、体が思い通りに動かない。そんな感じがあったから、ちょっと心配していたんだけど、13分にハーフウェーライン付近から右サイドにきれいなサイドチェンジのパスを通した場面があった。次の映像がそのシーンだけど、このプレーで闘莉王は完全にノッたと思ったね。

そこからは明らかに元気になったし、声を張り上げ、大きなジェスチャーで味方へ指示を出したり、鼓舞したりする、本来の闘莉王の姿が見られるようになっていったよ。

ただ、プレーが切れるたびに膝に手を突いて、明らかに疲弊した姿を見せていたし、ヘディングしようとしてジャンプしても、頭を越されるシーンもたびたび見られた。前半にイエローカードをもらった場面などは、相手のスピードに対応できず、完全に遅れてタックルにいっていた。そうしたフィジカル的な部分では、まだまだ取り戻せていない印象を受けたけど、一方で危険を察知する能力や、絶対にやられてはいけない場面では体を張って対応するなど、彼の持つ経験値や闘争心といったものは、まるで衰えていなかった。

これは映像でも説明するけど、試合終盤に相手のシュートをお腹で食い止めた場面があったんだ。あれは相当痛かったはず。一度は倒れたんだけど、次の攻撃に備えるべく、すぐに立ち上がってプレーを続けたんだよね。この姿にはちょっと感動したよ。

■まとめ
闘莉王が示した勝利の執念こそ、これまでの名古屋に足りなかったものかもしれない。終盤はほとんど6バックのような状態だったけれど、新潟の攻撃をしのぎ続けたチーム全体からは、勝利を求める強い想いが伝わってきた。そのメンタルを刺激したのは、間違いなく闘莉王の存在によるものだと思う。次の映像を見ても分かるけど、タイムアップの笛が鳴った瞬間、名古屋の選手たちが自然と彼のもとに集まったのも、その求心力の大きさを表しているんだと思う。

新潟に勝利したとはいえ、名古屋はまだ降格圏に沈んでいる。置かれた状況は厳しいけど、この日の戦いぶりを見る限り残留の可能性はゼロではない。もちろん、そのためには闘莉王の活躍が欠かせない。残り6試合、彼のパフォーマンスに大いに注目したいね。

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