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コラム

Jリーグ副理事長 原博実が試合解説“イイ時間帯ですね。”

2016/8/27 11:13

大島 僚太への期待【明治安田J1 2nd 第9節 浦和vs川崎F】(♯5)

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2ndステージと年間勝点でともに首位を争う浦和と川崎Fの直接対決を視察してきた。試合を迎えるにあたりホームの浦和が優位な状況にあったと思う。直近10試合を9勝1分と勢いを加速させていた浦和に対し、鳥栖に敗れたことに加えて怪我人も多い川崎Fは苦しい状況にあったのではないかと思う。

■フォーメーション
それは両チームのメンバー構成にも表れていたよね。浦和は良い流れを保つために前節とほぼ同じスタメンで(関根 貴大が駒井 善成に代わっていたが)、オリンピック帰りの2人(興梠 慎三と遠藤 航)をベンチに置いていて、一方の川崎Fは対浦和ということに加え、怪我人が多くサイドバックが不在の状況だったことから、浦和と同じ3-4-2-1のシステムで臨んでいた。攻撃時には5トップになる浦和に対抗するために、実質的には5バックと言える布陣だった。

さらにオリンピック帰りの大島 僚太をスタメンで起用していた。大島はブラジルから帰ってきてからインフルエンザにかかってしまったそうだ。にもかかわらず、彼を最初から使わなければいけないのだから、川崎Fの苦しい台所事情が窺えたよ。

■大島 僚太のプレー
実はこの試合、90分間ずっと大島のプレーに注目して見ていたんだ。だから今回のコラムはこの日の大島について書いてみたいと思う。

ブラジルから帰ってきたばかりで、しかも病み上がりだったから、本当に大丈夫なのかと思って見ていた。実際に大島はミスも多く、そこまで質の高いプレーを見せていたわけではないと思う。たとえば前半43分のシーン、中盤で前を向いてボールを持ったのに、結局後方に下げてしまうシーンがあった。足元でボールを欲しがった大久保と、スペースに出したかった大島との意思疎通がうまく図れていなかったように見えたけど、おそらく疲れからか判断が遅くなっていたことも原因だったように思う。

一方で疲労をにじませながらも、さすがのプレーを見せる時もあった。例えばこのシーン。相手が前方に送り出したボールをカットし、そのままダイレクトで味方につなげるプレーを見せていた。普通は止めてからどこにパスを出そうか考えるのだけど、ボールを受ける前に味方の位置が見えているから、ダイレクトでのプレーを選択したのだと思う。こういうのは簡単なようで実は結構難しいプレー。それをあっさりとやってのけたのを見ると、やはり技術の高い選手だとあらためて感じさせられたよ。

なかでも一番驚かされたのは、決勝点の起点となった場面。中盤からドリブルで仕掛けるなかで、タックルを受けながらも失わず、ボールを前に運んで行ったシーン。

先日オリンピックのブラジル代表の試合を視察してきたけど、こういうプレーはネイマールがよく見せていたよ。メッシやイニエスタなんかもそう。スクランブルな状況になっても、しっかりと自分のものにして、前に持って行けるのは大島の優れている部分だと思う。

さらにこぼれ球を拾って、余裕をもって相手をかわして右サイドに展開し、そこから決勝ゴールが生まれた。この一連の流れのなかで、阿部 勇樹と那須 大亮というふたりの実力者をかわしたのも見逃せないポイントだよ。決して良い状態ではなかったのに、しっかりと結果につながる仕事をこなした。そこは高く評価してもいいと思う。

■大島の疲労度
少しプレーから逸れるけど、大島は本当に疲れていたと思うよ。映像にも一瞬映っているけど、決勝ゴールが決まった直後の彼の動きを見ていても、それはよくわかる。みんなが喜びに行くなかで、大島は歩くのが精いっぱいで、歓喜の輪に飛び込んで行けてないんだから。実は1点目の場面でもそうで、映像をよく見てみるとゴールが決まった後、他の選手が喜んでいる中に行かないで体力を温存していたのが分かるよね。まだ前半の早い時間帯だったのにこの状態なのだから、本当によく90分間もプレーできたと思う。

■まとめ
こうした試合を経験していく中で、大島はさらに成長していくと思う。オリンピックでも世界を相手に落ち着いてプレーしていたし、怖がらずにボールを受けてもいた。この試合でも体が動かないなかで、ここぞという場面で力を振り絞り、見事に結果を出した。2点目の起点となったあのボールの持ち出しを見たとき、嬉しくなったよ。

一方でまだ課題があるのも事実。先ほど指摘したシーンで、後ろに下げないで前に出せる選手になれるかどうか。世界ではそれが当たり前だから、ぜひともそうしたワールドスタンダードを身に付けてもらいたいと思う。

決してこれは大島だけの課題じゃなく、Jリーグ全体にも言えること。オリンピックを見ていても、ブラジルやナイジェリアの選手は行く時には絶対に行くよね。いざという時の圧力のかけ方、前に行く迫力をもっとJリーグの試合でも見られるようになれば、さらに日本のレベルは上がっていくよ。

残念ながらオリンピックはグループリーグ敗退に終わってしまったけど、4年前、惜しくもメダルを逃したロンドン大会のメンバーには、その悔しさをバネにA代表までのし上がり、2年後のブラジル・ワールドカップのメンバー入りを果たした選手がたくさんいたよね。ふたりの酒井(宏樹、高徳)、山口 蛍、清武 弘嗣、齋藤 学、権田 修一、オリンピックには出られなかったけど大迫 勇也、柿谷 曜一朗も同じ世代の選手。

今回のリオオリンピック世代の選手たちも、同じように突き上げを実現してもらいたい。大舞台で味わった悔しさを今後につなげられるかどうか。彼らのこれからの成長に期待したいね。

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