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コラム

Jリーグ副理事長 原博実が試合解説“イイ時間帯ですね。”

2016/7/29 20:47

攻撃的なスタイルを貫くアルビレックス新潟のサッカー【明治安田J1 2nd 第5節 大宮vs新潟】(♯4)

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内容は悪くないのに、なぜか結果が付いてこない。2ndステージに入ってからのアルビレックス新潟はまさにそのような状態でした。しかし、開幕4連敗で迎えた第5節の大宮アルディージャ戦で2-1と逆転勝利を収め、初白星を挙げました。今回はこの試合をピックアップし、新潟の今後の巻き返しの可能性について考察していきたいと思います。

この大宮戦を迎えるまでの新潟は、一言でいえば「ツキがなかった」。第1節の柏レイソル戦ではオウンゴールの1点で敗れ、第2節の湘南ベルマーレ戦ではセットプレー1発に沈み、第3節の川崎フロンターレ戦では、前回のこのコラムでも取り上げたように、判定に泣かされた側面もありました。そして第4節のベガルタ仙台戦では、PK失敗直後にカウンターから決勝ゴールを浴びてしまいました。

もちろん決めるところで決めきれないところや、リスタートの対応の甘さも見られますが、ピッチ上で表現しているサッカーとは不釣り合いな結果しか得られていない現状は、運に見放されていたと言われても否定できないでしょう。

この大宮戦の失点も、クロスがそのままゴールに吸い込まれてしまう不運な形でした。選手たちは「またか」という印象を抱いたかもしれません。ところがこの試合では見事な反発力を見せ、嫌な流れを払しょくして見せたのです。

この日の新潟は4-1-4-1の布陣で、センターフォワードの位置には本来はMFの成岡 翔を配置。いわゆるゼロトップを採用していました。ターゲットに当てるというよりも、流動的に攻めようという狙いがあったのでしょう。成岡は大宮のセンターバック二人に揺さぶりをかけながら、前線からの守備も献身的でした。まずまずの働きを示していましたが、65分に退くと、代わって入った伊藤 優汰が戦況を大きく動かす働きを見せるのです(伊藤は右サイドに、ラファエル シルバがセンターフォワードに)。

この伊藤は前節の仙台戦でも途中出場し、鋭いドリブルを駆使して好機を演出するなど、スーパーサブとしての地位を確立しつつある選手です。伊藤にとって、この試合のおそらくファーストタッチだったでしょう。66分、右サイドで小林 裕紀のパスを引き出し、ラファエル シルバの同点ゴールをアシストしました。

この同点ゴールが生まれた一連の流れにこそ、新潟のサッカーが凝縮されていたように思います。ゴールの発端は、自陣で相手に激しくプレスを仕掛けた野津田 岳人の働きにありました。この積極的なプレスよって、チームとしてのボール奪取につながったのです。
ボールを奪うと野津田だけでなく、同じインサイドハーフのレオ シルバも高い位置に攻め上がり、迫力のある攻撃を体現しています。アンカーの小林も、伊藤の動きに合わせた素晴らしいスルーパスを通し、伊藤は持ち味である果敢な仕掛けから、DFに当たったとはいえ絶妙なクロスでラファエル シルバのゴールを演出したのです。

さらに、その2分後に新潟は野津田の豪快な一撃で逆転に成功しますが、同点に追いついた勢いを落ち着かせることなく、前からの守備で相手に圧力をかけ、2点目を奪うという強い意志を見せていました。この姿勢こそが逆転劇につながったことは間違いありません。

伊藤の投入からわずかの時間で逆転にまで至ったわけですから、吉田 達磨監督としては大当たりの采配だったでしょう。

吉田監督は昨季まで柏を率いていましたが、志半ばでチームを去ることに。そして今季から率いる新潟でもなかなか結果を出せないなか、ボールを大事にする攻撃的なスタイルを貫いています。結果を求めるのであれば守備を固めたやり方もあるはずですが、吉田監督は自らからの信念を曲げようとはしません。スタイルがぶれないからこそ、選手にも迷いは見られず、チームとしての一体感も生まれているように感じます。映像をご覧いただくと分かりますが、ゴールが生まれた直後のベンチの盛り上がりこそが、その事実を証明しているのではないでしょうか。

今後カギを握りそうなのは、ようやくフィットしてきた印象のある野津田と、アンカーを務める小林。野津田はリオ五輪のバックアップメンバーのためにしばらくチームを離れることになりますが、小林はこの日のように良いパスを出せる選手なだけに、彼の手綱さばきが新潟の攻撃をさらに機能させるための重要なファクターになるのは間違いないでしょう。

ようやく初勝利を挙げたとはいえ、年間勝点順位で新潟は残留争いに巻き込まれる位置に低迷しています。それでも、この日のようなサッカーができれば、今後はおそらく浮上していくはず。

シーズンを振り返った時、この大宮戦こそがターニングポイントとなった試合として挙げられるのではないでしょうか。

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