3月23日、2016年のJリーグヤマザキナビスコカップが開幕を迎える。冠スポンサーとしてはギネス認定を受けるほどの長きに渡ってヤマザキナビスコ社からサポートを受けてきたこの大会。まだサッカーもJリーグもどうなるかまるで見えていなかったJ創設前年の1992年から続く一個の伝統には、一人のサッカーファンとして素朴な感謝の思いがある。
そんなヤマザキナビスコカップは多くの若手がチャンスをつかんで飛躍していった大会としても知られている。日本代表の活動期間中に大会が実施されることもあり、今回もそのケース。ただ、代表選手が不在の間にニュースターが誕生するというメカニズムもある。今回はそんなヤマザキナビスコカップ開幕戦に臨む12チームから、注目のルーキーたちを紹介してみたい。
まずは神奈川ダービーに臨む2チームから。横浜F・マリノスはユースから昇格してきた18歳の和田 昌士が注目だろう。高校生だった昨シーズンにトップチームに2種登録されていたが、公式戦のピッチには立てず、悔しい思いも味わった。ただ、3月上旬に行われたU-19日本代表候補の東京合宿に初招集され、「めちゃくちゃ刺激になりました」と同世代と切磋琢磨する喜びを噛みしめると同時に、代表定着のための近道としても横浜FMで結果を出すことを誓った。ヤマザキナビスコカップはレギュラー奪取へ向けた最初のチャンスとなる。
川崎フロンターレからは、大卒ルーキーの長谷川 竜也の名前を挙げておきたい。164cmと小柄だが、相手DFとの駆け引きで小ささを逆用するな賢さを持ったファンタジスタ。テクニックに絶対的なこだわりを持つ静岡学園中学校・高校で6年に渡って“一貫教育”されているだけに、多彩な技巧だけで等々力を湧かせてくれるはず。あとはこのチャンスで「ゴール」という結果を残せるかどうか。ただ、期待はしてもらっていいはずだ。
ヴァンフォーレ甲府のFW森 晃太もぜひ注目してほしい選手だ。名古屋グランパスU18から今季加入してきた高卒ルーキー(厳密に言えば、まだ3月なので『卒業』はしていないが)。昨年のJユースカップでは勝負どころでゴールを刻んで得点王に輝く活躍ぶりを見せたストライカーで、切れ味鋭いドリブルからのシュートが持ち味。名古屋ではトップチーム昇格を果たせなかったが、違った形で夢を追うことを選んだ大志の持ち主でもあり、覚悟という名の温度感が並のルーキーとは違う。
そのほかにもヴィッセル神戸の技巧派MF小林 成豪、名古屋の大卒新人コンビである勝負強さの光るMF和泉 竜司、底なしの運動量で攻守に絡むDF高橋 諒といった昨年のユニバーシアード代表選手たちにもチャンスはありそうだ。ユニバ代表には入っていないが、プレシーズンマッチで滑らかなファーストタッチから一気に加速していくプレーで関係者を驚かせたジュビロ磐田のMF荒木 大吾のような選手もいる。今はまだレギュラーではなくとも、彼らの中からシーズンのキーマンになる選手はきっと出てくる。ヤマザキナビスコカップは、そういう大会として四半世紀近い時を刻んできたのだ。