11月17日に行われたJリーグ理事会では、いくつかの重要な決定がなされた。代表格は鹿児島ユナイテッドFCの来季J3入会が承認されたことだ。鹿児島県は遠藤 保仁や大迫 勇也を輩出した日本有数の「育成どころ」だが、ようやくJクラブが誕生したことになる。ここに至るまでの関係者の努力に敬意を表しつつ、今後のさらなる発展を期待したい。
Jリーグ百年構想も残り80年くらいになったのではないかと思うけれど、その構想が発表された時点で20年後に50を超えるJクラブが誕生していることを想像できた人は少なかったように思う。理念だけで飯は食えないが、理念なくしてスタートアップもできないもの。日本全国で起きた無数のチャレンジが、さまざまな地域の人に「愛するマイクラブ」を与えた事実はもっと素直に評価されていいと思っている。
もちろん、Jクラブを作ること自体が目的になってしまっていて、いざJリーグに入会した途端に目的意識がなくなってしまうようなパターンは危険だ。村井 満Jリーグチェアマンも鹿児島に対して「これからやってもらうことが山積みです」と釘をさしていたが、過去の例を思い起こしても「とりあえずJリーグ」になってしまっているケースは正直に言えば少なくなかった。鹿児島には高い志と地に足の着いた施策という二軸をしっかり打ち出してもらって、大地に根付いて天高く伸びていくようなクラブになってもらいたいと思う。
そのJリーグもいよいよクライマックスを迎える。22日には明治安田生命J1リーグがラストマッチ。サンフレッチェ広島の2ndステージ優勝は動きそうにない情勢だが、チャンピオンシップのシード権が付与される年間1位を巡る広島と浦和レッズの争いは一つの見どころ。広島が負けて浦和が勝つようなら、年間1位の栄誉は浦和の掌中に収まることとなる。
また、チャンピオンシップ出場権を得られる年間3位を巡る攻防も注目だ。FC東京(勝点62)とガンバ大阪(勝ち点60)が可能性を残しており、FC東京がサガン鳥栖に敗れるか引き分けるかしたうえで、G大阪がモンテディオ山形に勝利するようなら逆転で3位に躍り出る状況だ。青赤軍団にしてみると、初のリーグ王者を目指して「勝つしかない」一戦を迎えることになる。熱い試合になることは確実だろう。
翌23日にはJ2とJ3もラストバトルを迎える。J2は大宮アルディージャの昇格が確定したが、残る自動昇格の一枠を巡って2位・ジュビロ磐田と3位・アビスパ福岡が火花を散らす。得失点差で福岡が不利な状況ではあるが、特別な勢いを持つ。仮に3位に終わったとしても、「史上最強の3位」として昇格プレーオフに出てくることは確実だろう。
そのプレーオフ出場の権利が与えられるのは6位以内。こちらに残されたのも、同じく一枠のみ。6位・V・ファーレン長崎、7位・東京ヴェルディ、8位・ジェフユナイテッド千葉がそれぞれの思いを秘めて最終戦に臨む。東京Vと千葉は「他力本願」の状況ではあるが、6位の長崎にのし掛かるプレッシャーは相当なものだろう。「ドラマ」が待っていても不思議ではないし、逆に長崎がドラマを作ってくれる可能性も大いにありそうだ。
そして、J3である。こちらも1位・レノファ山口と2位・FC町田ゼルビアが同勝点で並んで最終戦を迎えるというシビれるシチュエーション。1位ならばJ2昇格、2位ならばJ2の21位と入れ替え戦という大きな分かれ道。心理的にはチャレンジャーとして猛烈に追い上げてきた町田が有利にも思えるが、山口はまさに正念場。たとえ2位でも「Jリーグ1年生」としては申し分ない戦績とはいえ、やっぱり笑顔でリーグ戦を終わりたいところだ。
Jリーグができて、20年余り。全国各地でこれほどまでに彩り豊かな「最終節」があって、悲喜こもごもの感情が爆発するとは誰も想像できていなかった。この国のリーグに関して課題や問題は確かに山積みなのだけれど、しかしJリーグによって生み出された「幸せ」も確実にあって、そのことも忘れてはいけないと思っている。