11月15日、大阪・ヤンマースタジアム長居を舞台に23代目の王者が決定する。Jユースカップ第23回Jリーグユース選手権大会がファイナルマッチを迎えるのだ。今季からグループリーグを廃止して完全ノックアウト方式になった今大会、「負ければ終わり」の戦いをくぐり抜けて勝ち残ったのは名古屋グランパスU18と浦和レッズユース。東西両雄の激突ということになった。
どちらも育成に関しては実績のあるチームで、現日本代表にも浦和はFW原口元気、名古屋はDF吉田麻也をそれぞれ輩出。チームとしても浦和は初の決勝進出だが、ほかの大会で全国制覇の経験は持っており、名古屋に関しては4年前の大会王者。その意味で言えば、ネームバリューのないカードでは決してない。ただ、今季の戦いはどちらも苦しかった。
浦和は全国を9地域に分割して行うブロックリーグである『プリンスリーグ関東』で低迷を余儀なくされている。強豪ひしめく地域とはいえ、「降格」の二文字もちらつく状態。さらに部活動に励む選手にとってのインターハイ(全国高等学校総合体育大会)に相当する夏の全国タイトルである日本クラブユース(U-18)選手権大会には関東予選で敗れて出場自体を逃してしまった。「本当に悔しい思いをしてきた」(DF小木曽佑太)年だった。
ただ、そうした悔恨はエネルギーともなる。Jリーグでも、リーグ戦で結果を残せなかった年にカップ戦で爆発するのはしばしばある話。今大会の浦和は、まず気持ちの部分でリフレッシュされており、そして強かった。「サッカーでまず球際(の勝負に)負けないことは大前提。それがこんなに勝てないとは」。3回戦で浦和と当たった京都U-18の森岡隆三監督の言葉が象徴的だ。ボール支配率で上回っていたのは京都だったが、シュート数は16対4と浦和が圧倒。シンプルにFWを走らせる攻めだが、確かな連続性がある。準々決勝ではC大阪U-18、準決勝では大分U-18と、京都に続いて高円宮杯プレミアリーグWEST(全国を東西に分割する高校年代の最高峰リーグ)に所属する強豪を連破。どちらも球際の強さや走力の高さで知られるチームだが、その1点で浦和が見劣りすることはなかった。
チームのストロングポイントはやはり守備。5試合1失点という驚異的な成果を残したのはFW新井瑞希、時里元樹らが前線から惜しみなくディフェンスしたからこそだが、CBコンビの強健さも目を惹くものがある。U-16・17日本代表に名を連ねる期待の1年生DF橋岡大樹と、184cmの高さに加えてカバーリングの速さも備える小木曽が構えるディフェンス中央はまさに鉄壁。右サイドバックの関慎之介のようなポテンシャルの高い下級生が大会を戦う中で自信を付けてきたのも大きい。一発勝負の恐怖感と戦うカップ戦において、後方の頑健さはチームの安定感につながった。
対する名古屋も今季リーグ戦で苦しんできたチーム。最高峰のプレミアリーグWESTにおいて序盤から大苦戦。しばしば大量失点を記録して降格圏に沈み、残り3節という段階で瀬戸際の状態にいる。一度そういう状態に陥ると、大人でも立て直しは難しいものだが、その意味でもJユースカップは精神的にリフレッシュしていく好機だった。チームを率いる高田哲也監督も「みんな開き直ってやれている。やっぱりメンタルな部分は大きい」と言う。優勝候補に推す声も多かった東京Vユースを準々決勝で接戦の末に下すと、準決勝では同じく優勝候補と目されたFC東京U-18を3-3の乱打戦からPK勝負を切り抜けて勝ち切った。もともと地力はあったチームが、シーズン終盤に来てようやく覚醒のときを迎えたという言い方もできそうだ。
チームの目玉となるのは、エースにして主将であるFW森晃太。周囲から全幅の信頼を置かれるエースストライカーはここまで得点ランクトップとなる5得点を記録。劣勢の試合も多かったが、一人で持ち込む打開力と最後で決め切る決定力を兼ね備えたエースの存在がチームを支えてきた。起点にもなる森と、裏への飛び出しに秀でるFW北野晴矢の関係性も良く、ここに神出鬼没の左MF深堀隼平らが絡む攻めは迫力十分。パワフルな左SB吹ヶ徳喜、自在なパスさばきとミドルシュートで魅せるボランチの川崎健太郎といった飛び道具も備え、チームとして完成されてきた。後方では184cmの高さとビルドアップの落ち着きを買われてCBにコンバートされた池庭諒耶がキーマンとなる。
Jユースカップ決勝は11月15日、11時から行われる。堅忍不抜のサッカーで勝ち残ってきた浦和を、森を中心とする名古屋の攻めが打ち砕けるか否か。Jリーグを愛する人ならば、リーグの未来を目撃するために足を運んでもいいし、スカパー!のチャンネルを合わせてみてもいいのではないだろうか。