9月6日、Jリーグヤマザキナビスコカップ 準々決勝の第2戦が終わり、4強が出そろった。ちょうど日本代表のワールドカップアジア2次予選が同時期に行われたため、各チームに代表選手は不在。夏場の連戦を経て負傷者が増えていることもあり、「ニューヒーロー」の台頭が期待されるステージとなった。
ただ、現実はそう簡単でも、単純でもない。鹿島アントラーズとFC東京によるホーム&アウェイの2試合は、青赤軍団の若手選手たちの小さからぬ可能性と、大きな壁の存在を意識させる過程と結果となった。
「スタメンを取ろうという気持ちで臨んだ。(代表選手たちが)帰って来ないうちに差を詰めて、戻って来てから(先発争いの)勝負というプランでいます」
U-22日本代表候補にも名を連ねるDF奈良 竜樹は、試合へ臨んだ意気込みをそんな言葉で語っている。森重 真人、丸山 祐市といった実力者が名を連ねるFC東京の最終ラインでポジションを勝ち取るのは容易ではない。だからこそ、この2試合が肝心。そういった強い意欲は第1戦の序盤から感じられたし、能力の高さを見せ付けるような場面もあった。
ただ、第1戦終了後に「印象の悪いプレーもあった」と認めたように、そして第2戦終了後に「一言で言うと力不足」と総括したように、そのパフォーマンスに合格点を与えるのは難しい。第1戦は迂闊なプレーが目立ったし、第2戦では後ろから攻撃をほとんど組み立てられなかったこともあって、代表選手不在の影響を強く感じさせてしまったのも確かである。「中盤でつなぐのか、前に蹴って拾うのか。どっち付かずだった」と嘆いたとおり、早々の失点でチームとしての意思統一が失われる中で、存在感を出すことはできなかった。
今年移籍してきたばかりの選手でもあるし、第2戦で流れに飲み込まれてしまったのは仕方ないと言えば、そうだろう。ただ、「スタメンを取る」という大目標からすれば、劣勢のとき、上手くいかないときにこそ力を発揮することが必要だし、どんな監督であれ、そういう選手こそ先発で使いたくなるというもの。単純に1対1の能力で言えば、奈良は十分にJ1クラスの選手だろうが、先発を張るにはまだまだ足りない部分が多かった。
もっとも、そうした「力不足」が見えたこと自体が、若い選手にとっては第一歩でもある。第1戦終了後、奈良が「練習し応えのある3日間をまた過ごせるのが嬉しい」と語っていたのは印象的だった。試合で出た課題を練習で消化し、次の試合にぶつけていく。そのサイクルこそが選手を育てる基本中の基本。この2試合で出た課題を練習で消化できるかが、奈良の未来を分けていく。
もしかすると今度のインターバルは3日ではなく30日になるかもしれない。だが、そこに「練習し応え」を見出してほしいし、見出せなければ先もない。必ずどこかで来るであろう「次の試合」で奈良がどんなプレーを見せてくれるのか、今から楽しみにしている。