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コラム

J2番記者リレーコラム オフ・ザ・ピッチのネタ帳

2015/8/27 18:38

ワールドクラスが桜軍団に残したもの(♯1)

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C大阪の練習拠点、大阪・舞洲にあるセレッソハウス、ヤンマーグラウンド。夏休み中には、子供たちを中心に、数多くのファン・サポーターが来場している。ただし、2か月前まで見られたようなウルグアイの国旗や、ウルグアイ人をはじめとする外国人グループの姿はすっかりと消えた。“FORLAN 10”のユニフォームを身にまとって試合会場に来場するサポーターも少なくなった。その様子に一抹の寂しさを感じさせる。

ディエゴ・フォルラン。2014年2月から2015年6月まで、浪速の地で桜色のユニフォームに身をまとって戦ったワールドクラスのストライカー。昨季はJ2降格など彼にとって厳しいシーズンとなったが、それでもJ2でのプレーを決断して臨んだ今季は、16試合(1381分)10ゴールと十分な結果を出した。間違いなく、前半戦を牽引していたのは、ウルグアージョ(ウルグアイ魂)を持つナンバー10だった。

多くのサポーターに惜しまれつつ、6月に日本を去ったフォルラン。そんな彼が残したものは、一体何だろうか。

クラブとしては、世界に向けて日本にセレッソ大阪というチームがあることを発信できた。彼の在籍により、C大阪は間違いなくグローバルな注目を浴びるようになり、「フォルランのいたクラブ」として世界から認知され始めている。

1年半と短い期間だったが、フォルランがC大阪に与えた影響はやはり大きかった
1年半と短い期間だったが、フォルランがC大阪に与えた影響はやはり大きかった

一方現場には、どんな影響をもたらしたのか。C大阪の日本人選手たちからフォルランについてよく聞かれた言葉は、「プロ意識の高さ」だ。「自分のトレーニングの姿をみんなに見てもらったことで、何か伝えられたのかなと思う」とフォルラン自身も述べていたが、その姿は、「サッカーに取り組む姿勢が最も真面目でストイック」(白沢 敬典通訳)だった。世界を渡り歩いてきた選手の振る舞いを間近で体感できたのは、桜色の戦士たちにとって価値ある経験になっている。

今季、C大阪に加入した橋本 英郎は開幕前からフォルランのいる貴重さについて、こう話していた。
「C大阪は海外に目が向いている選手が多い。フォルランのような手本がいるのであれば、そこからいろいろ聞く話があるんじゃないかなと。僕は(海外には)行けないかもしれないですが、向こうでの過ごし方だったり、そういう部分を聞いてみたいなと思っていた。彼からの情報は、たぶん記者とかメディアの人にしてみれば、お金を払ってでも聞きたいくらいの話だと思う。こんな選手が近くにいて、普通に会話できる場がある。それをしないのは、本当にもったいないこと」

実際に今季は橋本だけでなく、ピッチ内外でフォルランとコミュニケーションを取る選手が多かった。フォルランの離日前にも、食事会が開かれるなど、彼の思い、体験談に選手たちは熱心に耳を傾けていた。そんな機会が日常にあったことで、C大阪の選手たちにとって『世界』はよりリアルになっていたようだ。

若手、ベテラン関わらず、C大阪の選手たちはフォルランの話に熱心に耳を傾けていた
若手、ベテラン関わらず、C大阪の選手たちはフォルランの話に熱心に耳を傾けていた

また忘れてはならないのが、シュート意識と技術の高さだ。ゴールが見えたらシュートを打つというのはもちろん、明治安田生命J2リーグ 第5節のジェフユナイテッド千葉戦のように、たとえ背中を向けていてもゴールを意識し、鮮やかにシュートを決めきるシーンなどは、まさに超一流のそれだった。

「ディエゴの感覚は素晴らしいもの。あれは(シュートが)上手いからこそというのもあるけど、打てなければ(ゴールの)確率は上がらない。自分ももっと意識を高めてシュート練習しなきゃいけないなと感じている」(MF吉野 峻光)と、シュートへのどん欲な意識をチーム内に広めていった。

一方で「寄せないとすごいシュートが来るし、世界レベルでは『その一歩』というのが大事なんやなというのを、すごい感じさせてくれた」と語るのはDF山下 達也。練習で彼と日常的に対峙しながら切磋琢磨してきた守備陣にも大きな影響を与えている。

フォルランが去って、約2カ月。激しいJ1昇格争いも大詰めにさしかかろうとしている最中で、彼がいた余韻に浸っている暇はないというのが、現状ではある。ただし、フォルランのいた証は今なおC大阪に残っており、それが、チームやイレブンを少しずつでも成長させる要因となっているのは、間違いない。

文:前田 敏勝
兵庫県明石市出身。大学卒業後、サッカー誌の編集記者などを経て、地元・関西で、フリーライターとして主にC大阪、神戸の取材を行い、クラブオフィシャルやJ’s GOAL、各サッカーメディアに寄稿。C大阪ではACL全試合で現地取材を経験。