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コラム

川端 暁彦の千態万状Jリーグ

2015/8/9 15:53

緑の旋風吹き荒れるJ2リーグ 「残り3分の1」の行方は?(♯19)

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8月8日、明治安田生命J2リーグ 第28節が全国各地で行われた。J2は全42節であるため、これで全体の3分の2の日程を消化したことになる(※ただし、群馬と岐阜の試合が荒天のために未消化である)。明治安田生命J1リーグが東アジアカップに伴う中断期間でもあることから、今回はJ2リーグのレギュレーションを改めて確認しながら、「3分の2の現在地」を確認してみたい。

まずは優勝争いと昇格争いだが、優勝に関しては8連勝となった大宮アルディージャがもはや独走状態となっている。21勝4分3敗。28試合をこなして15失点、1試合平均でおよそ0.54失点という数字は驚異的。仮にここから大きく調子を落としたとしても2位以下が追い付けるかは微妙なところで、「当確」マークを付けたくなってしまうほどである。厳しい暑熱の影響を受ける夏場の戦いで順位が大きく入れ替わるのはJリーグの常だが、その夏に圧倒的な強さを示してきた大宮に、もはや死角はないのかもしれない。

圧倒的な強さでリーグを独走する大宮に死角は見当たらない
圧倒的な強さでリーグを独走する大宮に死角は見当たらない

2位・ジュビロ磐田は直近10試合を4勝3分3敗とほぼ五分の戦績で推移。順位を競っていたツエーゲン金沢の急失速で順位的には2位に上がっているが、リーグの全体観としては少しも楽になっていない。交代選手の役割が相対的に大きくなり、選手層の差が出やすい夏場に勝点を稼げていない現状は、磐田にとって何とも嬉しくない流れだろう。

そして、その夏にやたらと元気の良いチームが3位まで上がってきた。10節さかのぼった第18節終了時点では9位にいたのだから、まさにジャンプアップ。名門・東京ヴェルディが、ここに来て2位までに与えられる「J1自動昇格」を争う候補に名乗り出ている。

怒涛の5連勝で3位に浮上した東京V。自動昇格圏も射程距離に
怒涛の5連勝で3位に浮上した東京V。自動昇格圏も射程距離に

昨年、最優秀育成クラブにも選ばれた東京ヴェルディは、アカデミー(小学生から高校生までの育成組織)出身の選手たちが大半を占めている。所属している選手が多いだけでは大した意味もないが、今季出場機会を得た27選手に限定して見てみても、6割以上に当たる17選手がアカデミー育ちである。さらに言えば、監督の冨樫 剛一氏もアカデミー育ち。下から育てた選手と、下から育った指導者を軸に、J2で旋風を巻き起こしている。

今季開幕前、つま恋でキャンプを張った冨樫監督と話す機会があったが、大言壮語をしないこの指揮官の口から「いや、結構いい感じなんですよ」という言葉がサラッと漏れたのは印象的だった。自信の源は、強みも弱みもよく知っている教え子たちを抱えていたこと――ではなく、「4割弱」への信頼もあったのではないかと見る。

アカデミー出身者主体の東京Vだが、井林ら外様の存在も見逃せない
アカデミー出身者主体の東京Vだが、井林ら外様の存在も見逃せない

東京Vで今季25試合以上に出場した選手は6人いるが、そのうち3名はいわば「外様」の選手たち。GK佐藤 優也、DF井林 章、MF中後 雅喜。チームの背骨を預かり、黒子として奮戦する選手たちを無視して「アカデミー育ちの活躍で勝っている」と総括してしまうのは少々乱暴というものだろう。特に井林の存在感は、明らかに特別なものになってきたように見える。

7月18日の第24節・ギラヴァンツ北九州戦から怒濤の5連勝。東京Vから磐田の背中が見えるようになったが、4位・セレッソ大阪から8位・V・ファーレン長崎まで勝点『7』の差に収まる。6位以内に与えられるJ1昇格プレーオフ資格について言えば、14位・横浜FCまでが勝点『7』の差に収まっており、大宮が独走していると言ってもリーグの全体観が混戦模様であることに変わりはない。

J2リーグは残すところ3分の1。リーグのフィナーレとなる第42節は11月23日。あと3か月半の戦いということになる。