明治安田生命J1リーグの2ndステージが幕を開けた。浦和レッズが走り切るのか、その他のチームの逆襲があるのか。興味の種は尽きないが、個人的に最も注目している選手がいる。横浜F・マリノスの顔、『ウルトラレフティ』中村 俊輔だ。
1stステージ最終節のヴィッセル神戸戦、中村はJリーグのピッチに帰って来た。開幕前に左足首にメスを入れ、4月の復帰直後には肉離れ。予想外に長くなってしまった戦線離脱によって1stステージの横浜FMは「俊輔不在」のなか、モンバエルツ新監督の下でチームビルディングを進めることとなった。
1978年生まれ。6月24日に37歳となった中村にとってその状況は必ずしもポジティブなものではなかった。神戸戦は途中出場で最も得意とするトップ下の位置に入ったが、それまでその位置で起用されていたのは三門 雄大。運動量を武器とし、サイドバックもこなすハードワーカーだ。
「監督はトップ下にゲームを作る人を求めていない感じはしている。前からボールを追いかけて行って、ゴール前に飛び出していく。そんな選手を求めている」(中村)
中村にとって「今までの横浜FMがやりたかったこととまた違う方向性を持っている」新指揮官のオーダーとどう折り合いをつけていくが大きな問題になっていたのは想像に難くなかった。神戸戦後、中村はこうも漏らしている。「どうもボランチの選手だと思われている感じがする」と。
実際、神戸戦の前も、練習で与えられるポジションはもっぱらボランチだったようだ。その位置で視野の広さ、ゲームメイクのセンスを発揮しつつ、ミドルシュートやFKでの得点も期待する。そんな意図であるのは中村だって百も承知だが、やはりボランチというのはまず守備ありきのポジションでもある。ハードワークを求められる位置で、どうやって自分の長所を表現していくのか。大ベテランはその葛藤を率直に吐露した。
「今までどおりのプレーをすることは監督へのアピールにはならない。そこをどう表現していくかだと思う」
一方で、中村には「経験」という引き出しがある。「同じフランス人であるフィリップ・トルシエ監督とぶつかり合った20代の頃を思い出すのではないか?」なんて質問をぶつけてみると、破顔一笑。
「昔の経験はあるよね。当時、(横浜FMの監督だった)アルディレスにも言われたんだ。左ウイングバックをやらされるから代表には行きたくないなんて言う俺に、『グラウンドにいなければ何もできない』って」
試運転だった神戸戦を終えて始まった2ndステージ。横浜FMのスターティングリストに中村俊輔の名前はあった。与えられたポジションはトップ下ではなく、ボランチ。その位置で何をするのか。37歳にして新しいプレーの「表現」を模索し続ける偉大なレフティはどう進化していくのか。強く強く、注目している。