本日開幕――。セカンドステージが。早いものです。反撃準備は整ったでしょうか? ファーストステージを5位で終え、巻き返しを期す川崎フロンターレは準備完了と言っていいかもしれません。新しいパズルが完成したからです。ファーストステージのラスト7試合を5勝1分け1敗で乗り切った3-4-3システムを改良し、3トップから『2トップ+トップ下』へ。3-4-1-2の「1」にマエストロの中村 憲剛選手を据えるようです。この小さな変化が、大きな変化を生むでしょう。
第一に、大久保 嘉人選手がゴール前の仕事に専念できることです。3トップの場合、右の船山 貴之選手は「裏抜け」の得意なストライカー、左のレナト選手はドリブラーという事情もあり、ボランチからパスを引き出すため、しばしば中盤に落ちて組み立てに絡む機会が増えました。言わば「かりそめのトップ下」として働いたわけです。そこに憲剛選手がいれば、後ろに下がる必要はありません。それどころか、前線に留まれば次々とラストパスが……。再びゴール量産態勢へ転じるでしょう。
第二に、ポゼッションが高まることです。ミッドフィールドの中央でパスワークの起点がもう一つ増えるわけですからね。若いドイスボランチ(大島 僚太、谷口 彰吾の両選手)の負担も減ることでしょう。大久保選手が引いてこないと、縦パスを入れにくい状況も改善される見込み。相手DFとMFの間(あいだ)で受ける憲剛選手の力量は説明不要でしょう。先日のコパ・アメリカ(南米選手権)で優勝したチリの創造者ホルヘ・バルディビアみたいな………って分かりにくいですね。
第三に、可変システムが「起動」することです。基本は(1)3-4-1-2、次に(2)4-4-2、さらに(3)4-2-3-1にも変更可。例えば(2)の場合、ボランチの谷口選手が最後尾に落ちて4バックを構成し、憲剛選手も一列下がって大島選手とペアを組めば、4-4-2の完了ですね。また(3)の場合、右アウトサイドのエウシーニョ選手が一列上がって右翼に転じ、2トップの一角であるレナト選手が左翼に回って、左アウトサイドの小宮山尊信選手が後ろに引いて左サイドバックに入る反時計回りの配置転換で4-2-3-1の出来上がり。しかも、戦況を読み解く力に秀でた憲剛選手の合図があれば、ベンチの指示なしに、シフトチェンジできるわけです。
もっとも、ベースは3-4-1-2でしょう。ここから「4」のアウトサイドを担うエウシーニョと小宮山がポジションを上げて「ウイング」に転じ、3-2-1-4へ。さらに3バックを担う左右のストッパーが外に開いて「サイドバック」に転じ、そこから攻撃に加わって1-2-3-4に近い陣形を整える。いかに3人(憲剛、大島、谷口)の前方にパスコースを増やすか。浦和レッズやサンフレッチェ広島の「企み」と、ほぼ同じでしょう。
こうした可変システムが可能なのも、複数のポジションやタスクをこなせるポリバレントな選手がそろっているからです。専門家は3バックのセンターに入る選手くらいでしょう。ファーストステージで各選手をいろいろなポジションで使った風間 八宏監督の試みと選手たちの適応力が流動的なシステムへの扉を開いた格好ですね。しかも、主力選手の負傷などでサブの選手たちが出場機会を得て、選手層が厚くなったのも「うれしい誤算」でしょうか。
FW陣では戦列に戻った小林 悠、ここまで5ゴールを稼ぐ杉本 健勇、ファーストステージ後半戦で先発した船山の3選手が、MF陣では万能戦士の森谷 賢太郎選手が控え、3年前にボーフム(ドイツ2部)へ移籍した田坂 佑介選手が復帰。交代策の選択肢には困りません。目論見どおり、可変システムが機能すれば、攻撃の破壊力はファーストステージ以上でしょう。マエストロが、より2トップに接近してタクトをふるう、新フロンターレ交響楽団。最初の楽曲『多摩川クラシコ』の出来次第で、セカンドステージの優勝戦線が面白くなる―――かも(!?)