明治安田生命J1リーグは日本代表戦開催の影響を受け、1stステージのクライマックス目前で“プチ中断”となっている。今回はJ1中断期間中も変わらずに試合を消化している明治安田生命J2リーグについて、少しベーシックなことを確認しながらスポットライトを当ててみたい。
では、まずはルールの確認だ。J2からJ1へと上がれるのは3チーム。成績以外の要素が左右するケースもあるが、基本的には42試合のリーグ戦で1位になったチームと2位になったチームは、そのまま来季J1へと「昇格」を果たす。
今季のJ2で言えば、現在、大宮アルディージャが1位を快走中。スタートダッシュには失敗したものの、4月19日の大分トリニータ戦から9勝2引き分けで負けなしの無敗ロード。勝点を「40」まで積み上げて、少しばかり抜け出した格好となった。昨季無念の降格となったオレンジ軍団だが、18試合9失点(1試合平均0.5失点)という驚異的な守備の堅さが光る。4月19日以降の11試合で言えば、わずか2失点(1試合平均約0.18失点)。安定して勝ち星をあげるのも当然の数字だ。
一方、2位につけるのは、名波 浩監督の指揮下、J1返り咲きを狙うジュビロ磐田。大宮との勝点差が「4」という位置にいる。仮にこの順位のままいくならば、大宮と磐田が昇格となる。J2の2位以内を、俗に「自動昇格圏」と言うのはこのためだ。
そして3番目の昇格チームは、リーグ戦42試合を終えたあとに行われるJ1昇格プレーオフにて決定される。参加資格が与えられるのは、基本的にリーグ戦の3~6位に入ったチーム。現時点の順位で言えば、3位のツエーゲン金沢、4位のコンサドーレ札幌、5位のアビスパ福岡、そして6位のジェフユナイテッド千葉がその資格を保持していることとなる。
一方、J2の最下位チームは原則としてJ3に「自動降格」となり、21位のチームは入れ替え戦に回ることとなる。こうしたルールがあるため、J2の22チームは、それぞれの予算規模や戦力、クラブを取り巻く情勢に応じて、この3つのいずれかを目標とするのが基本軸だ。つまり、「2位以内に入っての自動昇格(優勝ならなお良し)というJ2最強クラス」、「6位以内に滑り込んでプレーオフからの昇格を狙う中堅クラス」、「20以内に入ってのJ2残留を目指す下位クラス」である。
あまりJ2を観たことがない方が試合に行く場合、対戦する両チームがこの3つのどこに当てはまりそうなのかをイメージしておくと、いろいろと分かりやすいかもしれない。よくある「どうして周りの人は引き分けで喜んでいるのだろう?」といった疑問が氷解するかもしれない。
たとえば6月14日の第18節において、試合前4位だった福岡の井原 正巳監督は、同5位だった千葉との対戦を引き分けで終えた後で、「ダンゴ状態なので、このポジションをしっかりと確保していきたい」というコメントを残している。もちろん2位以内に入れればベストなのは言うまでもないが、冷静な指揮官が見据えるのは、6位以内へ食らい付いて3つ目の枠をもぎ取ることだと窺えた。
井原監督が指摘するように、今季のJ2は「ダンゴ状態」。戦力面を思えば、もしかすると大宮や磐田が抜け出していく流れはあり得るが、「6位以内」を巡る争いが「ダンゴ」でなくなる可能性はゼロと言い切ってしまっていいだろう。なにせ6位の千葉から勝点3差、つまり1勝差の位置に11位の横浜FCまでが収まり、6差つまり2勝差の位置を含めると13位のファジアーノ岡山までが入ってくる。今季の昇格争いで出遅れてしまった印象のある岡山だが、まだまだ「圏内」のチームと見るべきだ。
そして、このリーグが「ダンゴ」の印象を強めているのは、セレッソ大阪が8位という位置にいることもある。国際的実績のある外国籍選手がチームを離れる中で戦力を再編成しての逆襲を期すサクラ色のチームが、J2の夏をさらに熱く激しいものにしてくれるかもしれない。