6月1日、キリンチャレンジカップとFIFAワールドカップアジア予選に臨む日本代表メンバー25名が発表となった。そのうち、Jリーグから選ばれたのは13名。大卒2年目、川崎FのMF谷口 彰悟(チームではDF登録)、29歳で初代表となったG大阪のDF丹羽 大輝といったフレッシュな顔ぶれも名を連ねることとなった。
「競争心」という言葉を好んで口にするヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、就任から精力的にJリーグを視察して新戦力の発掘に努めてきた。合宿では時には容赦ない指摘にも聞こえるほどに強い言葉を選手に向けて言い放ち、奮起を促したことと合わせて、Jリーグに少なからぬ「ハリルホジッチ効果」が生まれているのは間違いない。
3日に行われた柏レイソルと浦和レッズの試合を観ていても、記者席では「浦和の武藤 雄樹はA代表にそろそろ呼ばれるんじゃないか?」なんて会話がごく自然に交わされていた。「代表の扉は開かれている。Jリーグで良いパフォーマンスを見せている選手には資格がある」といった発言は代表監督から出てくる決まり文句なのだが、ハリルホジッチ監督の「初動」を見ると、確かに説得力がある。「海外組だろうと、私の代表に指定席はない」なんて定番の言葉も、「この人ならやりかねない」という気にさせられるし、裏を返せば「Jリーグ組にチャンスがある」という気持ちが沸いてくるということでもある。武藤自身、代表への意欲を隠していないし、そのチャンスがあることを疑っていない様子なのも、実際にそうした抜擢が行われる気配を漂わせているからこそ、だろう。
夏にはJリーグ組のみで代表チームを編成することになると見られる東アジアカップ(中国)もある。2年前の同大会では山口 蛍や柿谷 曜一朗が大ブレイクを果たしたが、同様の、あるいは当時よりもっと大きな期待感がある。29歳で初めてメンバー入りした丹羽のような例もある一方で、若手の大抜擢もあるに違いない。そういう意味で、「ハリルホジッチ効果」がより顕著に出てくるのはこの後になるのかもしれない。
リーグと代表は国のサッカーの両輪だ。双方が尊重し合って、刺激を与え合うことで国としての“サッカー力”も付いていく。急激に海外組が増えたことで「Jリーグは代表に貢献していない」なんて極論まで出てきてしまったが、それは違う。海外組も元々はJリーグで育った選手だからというのもあるが、国のリーグから新しい選手が出てきて競争を重ねないことには海外組の選手もレベルアップしていかないし、意識も高まらない。
もちろん、これから代表とリーグの利害が対立していくこともあるだろう。これは世界各国で見られる現象でもある。ただ、「リーグと代表の二つが日本サッカーの両輪である」という意識があれば、お互いに譲り合いながら一つの目標を共有していくこともできるはず。日本代表とJリーグは、そういう関係であってほしい。