Jリーグはアジア諸国のプロサッカーリーグとパートナーシップ契約を交わしている。その数は9ヶ国(タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、イラン、カタール)に及ぶ。リーグ間の提携を機にクラブや選手・指導者などの相互交流を促進し、お互い協力し合ってアジア全体のレベルアップを図っていこうというものだ。日本にとってはJリーグ所属の選手を含む多くの関係者が「高温多湿の東南アジア」や「灼熱乾燥の中東エリア」の経験が積めるメリットは大きい。先日は、カタールの首都ドーハに足を運んだ。カタールのプロサッカーリーグである「カタール・スターズ・リーグ」とのパートナーシップ契約のためだ。
近年カタールの若手の躍進は著しい。昨年、日本が朝鮮民主主義人民共和国に敗れベスト8で敗退したAFC主催のU19選手権ではカタールが見事優勝している。カタールはその結果、現在ニュージーランドで開催しているU20ワールドカップにアジアを代表して出場しているのだ。そうした若手世代を育成する象徴的なシステムがトレーニング施設「ASPIRE(アスパイヤー)」だ。サッカーに限らず、様々な球技や陸上、体操、水泳などの施設が用意されている。子供たちに幅広くスポーツを楽しんでもらうことでバランスの取れた運動能力を育むとともに、子供たちの運動能力を様々なデータとともに捕捉して、適性を活かしたキャリア指導、育成をしている。「潤沢なオイルマネー」と言って片づけてしまっては本質を見誤るように思う。将来を見越した育成世代に対する投資計画、そして総合スポーツ施設とサイエンスの融合、指導者の育成はしっかりしたビジョンのもとで精緻に設計されたものだ。
とはいえ、潤沢な資金を興行面にも生かしているのは事実だ。ちょうど滞在中に日本の天皇杯にあたる「エミールカップ」の決勝を観戦した。優勝したチームはアル・サッドで、この日2得点を挙げたムリキ選手が優勝に大きく貢献するMVPだったのだが、彼は2013年シーズンに中国の広州恒大で活躍し、AFCアジアチャンピオンリーグの得点王として優勝の立役者となった選手だ。外国人選手のみならずカタール人選手、特に前述のアスパイヤー出身で共にカタール代表の10番ハルファン・イブラヒム、8番アリ・アサッドの活躍も目についた。そして、アル・サッドには2015年シーズンからFCバルセロナで活躍していたシャビ選手が移籍することが報じられている。
もう一つ、カタールでの試合観戦で忘れられないゲームがある。それは、テレビで観戦したJ1リーグ「川崎フロンターレ」対「サガン鳥栖」の生中継だ。Jリーグの試合は現在約70ヶ国で放送されているのだが、私自身が海外で生中継を視聴するのは初めてだった。アラビア語での中継で実況内容は分からないのだが、何とも緊迫した試合だった。海外の視聴者からは「Jリーグの試合はテンションの高いゲームが多い」とか、「最後の最後まで諦めないプレーが面白い」といった評価を頂くこともある。僅かずつではあるが、海外の視聴者数を伸ばしてきてもいる。Jクラブのホームタウンで行われている試合が実は世界の様々な国で視られ、楽しまれているのだ。それとともにクラブ名称に入っているホームタウンの名称も海外の人に認知され、オフィシャルパートナーやクラブスポンサーの認知も上がっていけば本当に嬉しい。より私たちのレベルを上げてJリーグのファンを増やしていこうと思ったドーハの宿だったのです。