2014年秋、東南アジアの新興国ミャンマーの首都ネピドーにて、日本の若武者たちの夢は断たれた。ほとんどがJリーグの選手たちで構成されていたU-19日本代表は、AFC U-19選手権準々決勝でU-19朝鮮民主主義人民共和国代表と対戦。奮闘虚しくPK戦の末に敗れ、準決勝進出で手にするはずだった世界大会への切符を失った。
5月30日、FIFA U-20ワールドカップがニュージーランドにて開幕する。そのニュースを聞くだけで、あの瞬間の記憶が思い出されて何とも言えない気持ちになるのだが、敗れ去った過去が変わるわけではない。だが、あのとき唇を噛んだ選手たちは、今季のJリーグにおいて静かに存在感を示してくれている。
なかでも最も大きな光を放っているのは浦和レッズのMF関根 貴大だ。アカデミーから育ってきたこのウイングバックは、今季から浦和のレギュラーに定着。持ち味であるサイドからの果敢な仕掛けに加えて運動量も〝高値安定〟。そして何より貴重なゴールを奪うことでチーム内の存在感を高めると共に、浦和の首位ロード維持に貢献している。持ち前の賢さで着実に自分を磨いている姿を見ると、さらなる飛躍にも自然と期待したくなる。
一方、「自分たちの学年ではタカ(関根)が一番Jで結果を出していると思うし、本当にすごいと思う。でも負けたくはないですね」と言い切ったのは、名古屋グランパスのFW小屋松 知哉だ。高校サッカー選手権で大活躍を見せ、京都橘高校から名古屋へ加入したのは昨年のことだが、プロデビューを果たしたばかりの4月に左膝前十字靭帯断裂という大怪我を負う不運に見舞われ、長く戦線離脱を余儀なくされていた。U-19代表にとっても、とっておきのスーパーサブと見込まれていた彼の離脱は大きな痛手となってしまった。
だが、そんな悲運の男も帰って来たピッチで、今季は元気な姿を見せている。明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第13節のFC東京戦は、一方的に押されていた名古屋が勝ちを拾ったような試合だったが、決勝点となったオウンゴールは自慢のスピードで抜け出した小屋松のクロスをDFがクリアし切れずに生まれたもの。「やっぱり自分で決めたいですよ」と笑ったが、少しずつ手応えをつかむシーズンになっている。
そんな彼らにとって一つの目標は、U-22日本代表へのメンバー入りだ。現状主力となっているのは彼らの年上世代だが、「2個下だからとか関係ない。自分たちの世代が入っていかないと」と小屋松は言い切る。この2人以外にも明治安田生命 J2リーグではジェフユナイテッド千葉のFWオナイウ阿道が奮戦を見せているし、27日のヤマザキナビスコカップでは多くの選手が出場機会を得ていた。U-19代表では主将として期待されながら、小屋松と同様に負傷で戦線を離れていたコンサドーレ札幌のMF深井 一希もついにピッチに帰って来ている。
もちろん彼らだけではない。当時は候補にすら呼ばれていなかったサガン鳥栖のMF鎌田大地が非凡な才能を示しつつあるし、アルビレックス新潟のMF小泉 慶も昨季からその個性を発揮し続けている。ハリルホジッチ監督が就任してA代表に新しい風が吹いてチームが活性化したように、下の世代からの突き上げがあってこそ上も育つというものだ。
1stステージも残りわずかとなったが、“ニュージーランド世代”の逆襲がさらに激しくなることを期待したい。こぼれた水が戻らないからといって、新たな水を汲めなくなるわけでもないのだから。