5月14日、日立柏サッカー場。明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第12節、柏レイソルが湘南ベルマーレを迎えた一戦は、来週のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)開催を控えて少々珍しい「木曜開催」だった。
そんな試合を、記者席の右隣に熱狂的な柏サポーターという一面を隠し持つ(隠せていない気もするが)某プロデューサーが座るという立地で観戦することとなった。しかも日立台の記者席は柏側のゴール裏に近く、応援がダイレクトで響いてくる。こうなってくると、ふと気付けば、ごく自然に柏目線で試合を追ってしまっていたりするのだから不思議なものだ。そんな意思の弱いサッカーライターをニュートラルポジションへ呼び戻してくれたのも、湘南ベルマーレのゴール裏から轟く心地よい太鼓の音色だったりもした。恐るべきは応援のパワーと呼ぶべきか。
湘南の曺 貴裁監督が「木曜の夜にこれだけの数の人が来てくれるとは」なんてことを漏らしていたが、家に帰って映像で振り返っていたら、確かに「会社帰り」風の方も多い。愛するクラブのために、仕事や家庭などでの困難(?)を乗り越えて集まった人たちであることは想像に難くない。この日の試合ではないのだが、ビシッとしたスーツ姿の男性がレイソルロード(柏駅からスタジアムへ続く道の通称)を歩きながら、レプリカユニフォームの戦闘服へ「脱皮」していく様を見たこともある。
5月15日、Jリーグは22歳の誕生日を迎えた。このプロリーグのスタートが、日本サッカーが大きなブレイクスルーを遂げる最大の原動力となったことは間違いない。ただ、このリーグの誕生が生み出したのは、「サッカー」という枠組みだけの変化ではない。今日、J1からJ3まであるJリーグの試合には、全国各地で合わせて数十万人の観衆が平均して詰め掛けている。
それだけの数の人々のライフスタイル自体を変えてしまったのが、Jリーグの22年であったという言い方もできるだろう。応援文化は日本独自の発展を遂げ、スタジアム周りの空気感もJリーグならではのものがあると同時に、クラブごとの特色・個性も明瞭になってきた。それもまた積み上げた歴史があればこそ。
今のJリーグがパーフェクトだなんて言う気は毛頭ないのだけれど、しかしまあ、22年で積み上げたものがなかったなんてこともあり得ない。今度の土曜日にはJ1の残り8試合があって、日曜日にはJ2・J3の試合がある。今週末も日本全国津々浦々で、数十万の人が「サッカー観戦」という四半世紀前にはほぼ存在していなかったものへ時間とお金を費やしている。この20年余りの期間でJリーグが作り出したものの価値は、決して安いものではないだろう。