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コラム

川端 暁彦の千態万状Jリーグ

2015/5/6 18:49

5月5日、こどもの日。あるヒーローインタビューから思ったこと(♯10)

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日本全国で連戦の続いたゴールデンウィーク。試合後のヒーローインタビューで、こんなことを言っていた選手がいた。

「皆さまの貴重なゴールデンウィークのお休みを僕らの応援のために使っていただき、ありがとうございました」

ハットトリックを達成したヒーローから突然出てきた営業的なフレーズに、スタンドだけでなくチームメイトからも優しげな笑いが漏れた。ついつい質問に「そうっすね!」で返してしまうその選手は、しかし直後に「しまった。『そうっすね』はマズイ!ちゃんとしたことを言わなくては!」と表情に浮かべて、懸命に応え直していた。その後も適度に笑いを取りつつの受け答えは、聞き手が熟練のリポーターだったことを差し引いても、なかなか大したものだったように思う。

服部選手の受け答えはなかなか大したものだった
服部選手の受け答えはなかなか大したものだった

この選手の名前は、服部 航平。京都サンガF.C.U-15に所属する中学3年生で、彼がハットトリックを達成したのは、5月5日に行われたJFAプレミアカップの決勝戦。中学生年代の春の全国大会決勝戦で、コンサドーレ札幌U-15を相手に3度ゴールネットを揺らし、6-0での大勝へ貢献してみせた。

この試合でスカパー!のヒーローインタビューを受けていた選手はもう一人いる。同じく京都U-15のMF江川 慶城。一所懸命さが光った服部とは対照的に、こちらは「流暢」という言葉が似合うような堂々たる話しぶり。さわやかに言うべきことを言い切って、きちんと返す。かつての日本代表主将・宮本 恒靖氏を思い出すような、そんな語り口である。

キャプテンの江川選手は自然と気配りのできる選手だ
キャプテンの江川選手は自然と気配りのできる選手だ

実は中学校では生徒会長も務めているそうで、岸本 浩右監督も「僕はいらないんですよ。キャプテンが“監督役”までやってくれますから」と無類の信頼を置いている。囲み取材でも、試合に出られなかった選手がいかにチームのために頑張ってくれたかを記者に力説し、大敗してしまった札幌U-15についての配慮も示すなど、自然と気配りのできる選手なのがよく分かった。かといって真面目一辺倒ではなく、見事なヘディングシュートを決めた先制点について問われれば、「『利き足は頭だ』って言われるんです。今年頭で6、7点決めているんですけれど、足は0点なので」なんて返しで笑いを誘うあたり、プロでもあまりお目にかかれないメディア対応力である。

ただ、問いに対して真っ直ぐに応える彼らの様から見えたのは、「メディア対応力」というより、「ファンサービス精神」の原点だったようにも思う。テレビカメラの先には、記者の持つペンの先には、「どこかの誰か」がいるのである。別に小洒落たことを言う必要はなくて、きちんと自分の意志のこもった言葉を応えようとするその姿勢自体に、人は好感を抱くものである。持って生まれた気質はそれぞれあるのだろうけれど、姿勢は整えられるものだ。

栄光を掴んだチームの成長が楽しみである
栄光を掴んだチームの成長が楽しみである

いずれにせよ、この日会場を訪れた人々も、テレビカメラを通じて観ていた人々も、「京都サンガF.C.」に対する好感度は自然と上がったのではないか。アカデミーチームが同じユニフォームを着ているということは、つまりそういうことでもある。願わくは、彼らがもしもプロになったとき、この日と同じ気持ちでテレビカメラの前に立ってくれればと思う。