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コラム

Jリーグチェアマン 村井満の“アディショナルタイム”

2014/12/24 10:00

Jユースカップ決勝と一発芸(♯26)

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優勝の喜びを爆発させた鹿島アントラーズユースの選手たち
優勝の喜びを爆発させた鹿島アントラーズユースの選手たち

 リーグ戦の終盤戦は既に数多く報道されている通りなので改めてのコメントは控えるが、公私ともに文字通りきわめて緊迫した展開となった。実はリーグ戦最終盤を目前にして、情けないことに若干体調を崩してしまった。何とか出来る限り体調を整えてJ1最終節の徳島ヴォルティス対ガンバ大阪戦(鳴門)に向かうことができ、翌日のJ1昇格プレーオフ決勝ジェフユナイテッド千葉対モンテディオ山形戦(味スタ)も参加できた。結果としてスタジアムに行ったことで、選手やファン・サポーターから元気をもらうことができ、私の体調も気がつけばほぼ回復していたのだが。

スピーチするキャプテンを笑わせようとする仲間たち
スピーチするキャプテンを笑わせようとする仲間たち

 J リーグは昨日12月23日にヤンマースタジアム長居で行われた「2014Jユースカップ決勝」をもって、2014年のJリーグ主催試合の全日程を終えた。決勝の対戦カードは鹿島アントラーズユース対ガンバ大阪ユース。ゲームは緊張感溢れる互角の展開。両チームとも譲らず、90分フルタイム・延長戦でも決着がつかず、最後はPK戦の末、鹿島アントラーズユースが栄冠を手にした。実は、この世代(97年生まれ以降の選手)は6年後の2020年には東京オリンピックの中核世代となる。翻って6年前に時間を戻せば、2008年の決勝カードはガンバ大阪ユース対セレッソ大阪ユースだったのだが、優勝したガンバユースでは宇佐美貴史選手が得点を挙げているし、対戦相手のセレッソユースには扇原貴宏選手や山口螢選手が出場しており、まさに将来のJリーグを代表する選手を輩出する登竜門ともいえる大会なのだ。

PK挑戦を志願し我先に手を挙げる小学生たち
PK挑戦を志願し我先に手を挙げる小学生たち

 決勝の終了後には、スタジアムのロビーに両チーム選手を招いてお互いの健闘を称えあう「ポストマッチファンクション」というささやかな交歓会を催しているが、私はそこで印象的な風景に出くわした。交歓会では両チームの選手の主将が挨拶することになっているのだが、おそらく先輩に突き出されて後輩選手たちが始めたのであろうか、一人また一人と人垣の前に出て一発芸を披露し始めたのだ。鹿島の選手が笑いを取ると、先ほどまでピッチで涙に暮れていたガンバの選手が負けじと一芸を披露したため、たちまち会場は笑いに包まれた。日本社会ではこうしたセレモニーでは行儀よく振る舞うことが美徳とされているが、私は彼らのユーモラスかつ独創的な自己表現にむしろ感心した。残念ながら一発芸の様子をカメラに収めることができなかったが、かろうじて大会関係者の前で真面目に挨拶するキャプテンを何とか笑わせようとしているやんちゃな仲間の姿を写すことができた。

 この光景を見て、私は行儀が悪いとは思わなかった。むしろ国際社会でも通じる表現力のあるコミュニケーションは世界を目指すサッカーにとっては身に付けるべき能力であり、そう考えると、日本の若者もまんざら捨てたものではないとさえ思った。

 交歓会と平行して、ピッチ上では小学5,6年生を対象にJリーグ主催の「DO! ALL SPORTSサッカークリニック」開催されていた。コーチはJリーグのOBから柱谷哲二さん、宮本恒靖さん、久保竜彦さんら日本を代表するプレーヤーのほか、関西Jクラブからユースチーム出身の選手も参加する豪華な布陣だ。この日のクリニックはシュートを中心に熱心な指導が展開されたが、最後のメニューのPKデモンストレーションの場面で、コーチが「PKを蹴りたい人」と尋ねると、多くの子供たちから一斉に「ハーイ!」と手が挙がったのは、嬉しい驚きだった。こうしたコミュニケーションの積み重ねが、交歓会にあったような表現力豊かな選手を育んでいるのだろう。

 師走の大阪で日本サッカーの明るい未来を感じた瞬間に心が踊った。