いよいよ幕が上がる2015シーズンの明治安田生命Jリーグ。このコラムではピッチ内外でJリーグを存分に楽しみながら、選手たちやサポーターの思い、隠れた取り組みなどを悠々自適に記していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
さて、新シーズンはJ1の2ステージ制+チャンピオンシップの導入が話題を集めているが、実はJ2が過去最高に熱い。開幕前に話を聞かせてもらったJ2クラブの監督は、皆が「今シーズンの昇格争いは今までで一番激しいものになる」と口を揃えていた。
それもそのはず。J1経験クラブは半数の11クラブを占め、昇格候補は両手でも足りないほど。有力選手も数多く在籍し、過去にFIFAワールドカップに出場した経験を持つ選手は日本人選手15名、外国籍選手2名の計17人に上る。さらに来年のリオデジャネイロ オリンピック出場を目指す若き日本代表も多く在籍し、今月のAFC U-23選手権2016予選に臨むU-22日本代表23人にはJ2から5人が選出。先に発表された50人の予備登録にも14人がノミネートされている。クラブ、選手ともに実績だけでなく、将来を見据えたハイレベルな戦いが期待できるのも、今シーズンのJ2が持つ特徴と言える。
その中心として注目を集めるのは、やはりセレッソ大阪だ。昨年のFIFAワールドカップ日本代表でもある山口蛍を軸に、2010年のFIFAワールドカップ 南アフリカ大会で得点王に輝いたフォルラン、同大会でドイツ代表としてゴールを決めたカカウが在籍。新たに2006年のFIFAワールドカップ ドイツ大会でブラジル代表相手に先制点を叩き込んだ玉田圭司を名古屋グランパスから獲得した。他にもロンドン オリンピックで活躍した扇原貴宏、韓国代表GKキム ジンヒョンら、豊富な国際経験と実績を持つ選手が並ぶ。J1でも上位進出を予想したくなるほどのメンバーだ。この豪華布陣には、ロアッソ熊本の小野剛監督が「他のチームの監督さんとは『普通車のレースに、F1カーが混じって来ちゃったね』と話していますよ」と苦笑いを浮かべるほど。J1で優勝候補の一角に挙げられていた昨シーズンの主力選手がほぼ残留しており、メンバーだけを見れば、確かに「抜けた存在」と言えるかもしれない。
ただし、今シーズンのJ2は起伏が激しく、強力なライバルが居並ぶオフロード。たとえ普通車とF1カー並みにスペックが違ったとしても、容易に先頭で走り抜けられる道ではない。当然ながらマークは厳しくなることが予想され、さすがのF1マシンも道に適応できなければ、想定以上に苦しむ可能性は十分にある。そして今シーズンのJ2には、それだけの“曲者”が揃っている。
前線にムルジャと家長昭博という強力コンビを要する大宮アルディージャは、普通車ではなく「スポーツカー」と称すべき布陣。昨シーズン前半にJ1で無敗街道を走ったメンバーで、同じく一年でのJ1復帰を誓っている。徳島ヴォルティスもJ1で戦った昨シーズン以上と言える補強を施して捲土重来を期しているはずだ。3シーズン続けてJ1昇格プレーオフで苦汁をなめたジェフユナイテッド千葉も「今シーズンこそは」の思いで臨んでくるだろうし、名波浩監督の下で新たな黄金時代を目指すジュビロ磐田からも目が離せない。
京都サンガF.C.は抜群の決定力を誇るJ2得点王の大黒将志が最前線で存在感を発揮し、小野伸二と稲本潤一が注目を集めるコンサドーレ札幌もFC岐阜で昨シーズン17得点を挙げたナザリトを獲得してJ1昇格プレーオフ争いに絡んでくることが予想される。井原正巳新監督の就任で話題を呼んだアビスパ福岡はクラブの象徴的選手だったプレーヤーを呼び戻して強いメンタルをベースに再建に臨み、戦略的なチーム作りを進める田坂和昭監督率いる大分トリニータも再びJ1の舞台を目指している。地元の熱いサポートを受けるファジアーノ岡山はJ1経験こそないものの、FIFAワールドカップ出場経験を持つ加地亮、岩政大樹を獲得し、チームに足りない経験を補って新たなステージを目指す覚悟が感じられる。近年、上位躍進を遂げたギラヴァンツ北九州、V・ファーレン長崎も虎視眈々と上位を狙う。他にも若手のブレイクや昨シーズンまでの積み上げを糧に、J1昇格プレーオフ争いを賑わせるクラブが出てくる可能性も十分にあるだろう。
すべては書ききれないが、今シーズンは各クラブとも例年以上にメンバーが揃っており、J1への“オフロード”は熾烈を極めることが予想される。球際の強さはもちろん、今まで以上にゴールや勝利への強い意欲も求められるだろう。毎節のように昇格争いのライバルと激突することになる選手や監督にとっては大変だが、リーグとしては本当に見どころ盛りだくさん。新レギュレーションの導入で短期決戦の面白さを見いだせそうなJ1だけでなく、重要な試合の連続となるJ2を見逃す手はない。近年はJ2でベースを作って羽ばたいたクラブがJ1で結果を残すケースが増えており、来年以降につながる各クラブのチーム作りも楽しめる。今年の日曜日はスタジアムへ足を運ぶ機会が増えそうだ。
まさに群雄割拠。2015年3月8日、史上最大とも言える戦国J2の幕が上がる。