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コラム

北條 聡の一字休戦

2015/3/5 20:22

2015明治安田生命J1リーグ 「色別」 展望(♯1)

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北條聡です。このたび、連載をさせていただくことになりました。拙い物書きで大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願いします。

さて、1回目のテーマですが「ぜひ、J1リーグの展望で」というリクエストをいただいておりました。ただし、連載タイトルは「いざ開戦」ではなく「一時休戦」のダジャレですから、ストロングスタイルの展望というわけにはまいりません。ここでは優勝劣敗のアングルからやや離れ、それぞれのカラー(色)に特化した見どころを探ってみたいと思います。では、早速――。

三冠王者G大阪を牽引する遠藤保仁選手
三冠王者G大阪を牽引する遠藤保仁選手

真っ先にご登場願うのは昨季のタイトル(J1リーグ、天皇杯、ヤマザキナビスコカップ)を総なめにした三冠王者のガンバ大阪です。今季も不動の強者でしょうが、最大の魅力は『R指定的スタイル』ですね。簡単に言えば「大人のサッカー」です。かつては押しの強さが売り物でしたが、押してダメなら引いてみな――という押し引きの極意を会得し、成熟したチームへ転身を遂げています。そうしたカラーは、先導者である遠藤保仁(昨季のJリーグMVP)のイメージそのものですね。

鹿島の若き司令塔、柴崎岳選手
鹿島の若き司令塔、柴崎岳選手

アダルトな魅力において、ガンバ大阪と並ぶのがサンフレッチェ広島でしょうか。歴とした一昨季のJ1王者です。2012年に例の「~引いてみな」の奥義を学んで、したたかに脱皮。今季は再び大人の嗜みを見せてくれそうです。世代交代の過渡期にある鹿島アントラーズも、今季は「アダルト枠」への復帰に虎視眈々でしょう。何しろ、大人の流儀で一時代を築いてきた本家本元ですから。初心者の方々にはぜひ、柴崎岳という偉才を見ていただきたいですね。

日本代表にも選出された期待の若手、武藤嘉紀選手(写真は2014年)
日本代表にも選出された期待の若手、武藤嘉紀選手(写真は2014年)

FC東京も大人路線の一員ですが、その個性は「そうくれば、こうやる」というカメレオン的対応術に特徴づけられそうです。妙に知的好奇心をくすぐられるチームですね。あなたなら、どうしますか? 一緒にお考えくださいと言われているような……。その変化を読み解くのは観戦上級者の愉悦ですが、初心者の方々にとっては少々、敷居が高いかもしれません。ですが、ご安心を。女性には目の保養を、男性には気の高揚を約束する役者がそろっております。誰とは申しませんが……。

初心者の方々にオススメはJの老舗クラブです。例えば、横浜F・マリノスと名古屋グランパスは「巧い・速い・強い・高い」という分かりやすさが魅力です。前者なら巧さの中村俊輔、高さの中澤佑二がいて、後者には速さの永井謙佑、高さと強さの田中マルクス闘莉王が健在です。しかも、こうした選手たちの強みを最大限に引き出すためにチームが構成されているでしょうから、さらに分かりやすいと思います(たぶんですが)。いずれもピッチ上では「国際指名手配クラス」のツワモノですから、心ゆくまでお楽しみいただけるのではないでしょうか。

例の「押し引き上手」がJの王道ですが、正統派はつまらないという向きにオススメしたいチームをご紹介しましょう。押しの一手で覇道を突き進む川崎フロンターレです。押しの饒舌、引きの寡黙というギャップはございません。ボールを介した「会話」の主導権を握ったら、しゃべりっぱなしです。非凡なMCと個性豊かなひな壇芸人との愉快なやり取りを見ているような。ゲスト(対戦相手)は完全に置いていかれ、競演者のはずが、いつの間にか観戦者に回ってしまいます。思わず椅子から腰を上げて、声にならない声を上げてしまうような瞬間を味わえるでしょう……などと、つれづれなるままに書いていたら、字数オーバーが秒読みに。

というわけで、最後に触れたいのがJ2から昇格してきた挑戦者。特に湘南ベルマーレです。昨季のJ2を独走した破格のスタイルは老若男女、初心者から上級者まで楽しめる代物でしょう。秘密はシンプル・イズ・ベストです。いつ攻めるの? 今でしょ! いつ奪うの? 今でしょ!――なんてお説教を観戦者に言わせる隙を与えません。同じ「押しの一手」でも、こちらは猪突猛進。途中の駅をすっ飛ばす快速電車みたいな爽快感! 一度乗ったら病み付きになること請け合いです。

かくして、今季のJ1リーグもまた百花繚乱。今回、触れられなかったクラブの魅力については、おいおい当連載でご紹介していきたいと思います。それにしても、週末の開幕戦、どこのスタジアムへ足を運んだらいいのやら……。これほど楽しい「決定力不足」はございません。