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コラム

Jリーグチェアマン 村井満の“アディショナルタイム”

2015/2/18 17:43

ドイツの瀬田さん(♯30)

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ドイツで出会った三人目の友人は瀬田 元吾(せた げんご)さん。一人目の大門さんがドイツで13年という長い選手キャリアを持ち、二人目の田口さんが本格的な指導者だとすれば、瀬田さんは現在ブンデスリーガクラブのビジネス部門で働く唯一の日本人だ。

私は、Jリーグのチェアマンになる前から瀬田さんの存在を知っていた。ドイツのクラブで働く日本人がいると聞き、直接コンタクトを試みては、彼が帰国するタイミングに合わせて話を聞かせてもらったり、サッカーを愛する地元の仲間に向けて講演をお願いしたことがあったのだが、一介のサッカーファンだった私の依頼にも関わらず、彼は快く引き受けてくれた。そんな縁もあり、今回は私のほうから彼の住むデュッセルドルフを訪ねた。

瀬田さんは学生時代、筑波大学のサッカー部に所属していたのだが、同級生には高校時代から全国に名前がとどろく有名選手たちが数多くいた。そうしたセレクションで入部している選手たちの中にあって、一般の受験で進学した彼は苦労を重ねることになる。それでも努力の甲斐があって3年の終わりからはトップチームに所属することになるが、レギュラーを奪取するまでには至らなかった。レギュラー選手の中にはJリーグに進む者も多かったが、瀬田さんの手はJに届かなかった。それでも、多くの友人が一般企業に就職していく中で、彼はプロサッカー選手への夢を消すことができなかった。

彼は就職を断念して「群馬FCホリコシ」でプロ契約を交わし、その後、サッカー人生を更に突き詰めようとドイツに渡った。瀬田さん24歳の時である。

フォルトゥナデュッセルドルフのホームスタジアムであるエスプリアリーナでの瀬田さん。ホテルが併設された素晴らしいサッカースタジアムだ
フォルトゥナデュッセルドルフのホームスタジアムであるエスプリアリーナでの瀬田さん。ホテルが併設された素晴らしいサッカースタジアムだ

彼は『キャプテン翼』世代で、西ドイツ出身の登場人物「カール・ハインツ・シュナイダー君」が好きだったという。そうしたドイツへの親近感も彼の背中を押したのかもしれない。彼はドイツの地で、アマチュア6クラブに飛び込みでテストを受け、フォルトゥナ・サテライトチーム(当時5部)に所属した。その後、他の5部のクラブを転々としたり、チェコへのプロテストに挑戦するなどチャレンジを続け、2010年に30歳で現役を引退する。

引退後の進路として、瀬田さんはドイツサッカーとの縁をつなぎたいと考えた。クラブのフロントに入るのであれば、ドイツで一番最初に世話になったフォルトゥナしかないと思い、彼は無給のフロント研修生から再スタートする道を選ぶ。どんな仕事でもするからと願い出たところ、彼が最初にもらった仕事はメディア関係者にビブス(カメラマンを識別するベスト)を渡す仕事だったという。しかし、彼はそこから這い上がっていく。デュッセルドルフの街はヨーロッパで3本の指に入るくらい日本人が多い。そんな環境の中で日本デスクを立ち上げて、微々たるものではあるが給料を貰えるようになったのだ。その後、彼は日立製作所の欧州現地法人『日立ヨーロッパ』とフォルトゥナデュッセルドルフを結び付け、スポンサー契約を結ぶ立役者となり、合わせて、クラブオフィシャルの日本語サイトや日本語マガジンを成功させファン層の拡大に貢献したのだ。

現在では、日独の架け橋となるための事業会社SETAGS UGを設立し、フォルトゥナデュッセルドルフと契約を継続する一方で、毎年デュッセルドルフで開かれるU-19の国際大会において日本の高校選抜の窓口などを担うなど、着実にドイツの地に軸を置いた活動を展開している。

ちなみに瀬田さんの座右の銘は「頑張る時はいつも今」。同名の彼の著書は必読の一冊だ。彼の人生の軌跡がリアルに再現されている。

フォルトゥナデュッセルドルフの練習場で。左が瀬田さん、右が大門さん(♯28参照)
フォルトゥナデュッセルドルフの練習場で。左が瀬田さん、右が大門さん(♯28参照)

今回は一週間という短期の休暇ではあったが、ドイツで活躍する三人と素晴らしい時間を過ごすことができた。失敗を恐れず飛び込む勇気と、夢に向かって愚直に努力を重ねるその姿勢には大いに刺激をもらった。ドイツに学びに行った私は、結果的に日本人から多くのことを学ぶことになった。サッカーは私にとって人生を学ぶ生きた教材だ。

上記は、訪欧からの帰国便で書いたものです。

昨夜の2月17日、日立柏スタジアムで行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフ「柏レイソル対チョンブリFC」の試合から2015シーズンの戦いがスタートしました。

私もスタジアムに駆け付けましたが、試合は二度のリードを追いつかれるなど予想以上の苦戦はしたものの、攻め続ける柏レイソルの選手の頑張りと、雨にも関わらず最後まで応援を続けたファン・サポーターの皆さんの結集した力で柏レイソルは本戦への出場権を勝ち取りました。

本当に嬉しい1勝でした。

この流れを受けて、ACL本戦、FUJI XEROX SUPER CUP、明治安田生命Jリーグ、Jリーグヤマザキナビスコカップに繋げていきたいと思います。