今シーズン第1節から、共同通信社より全国加盟の地元紙向けに線の入った順位表が配信されている。だが、この順位表をそのまま掲載しているところが意外に少ない。その理由を尋ねたところ、「リーグ戦は年末まで続くので、地元でチームの順位に注目が集まるのは、戦いも終盤に入る秋口からが普通である。だから、早々にラインを載せる意味も必要もない」とのこと。試合数が、プロ野球に比べ3割程度のJリーグ。単純な順位表では、J2に昨シーズンから導入されたプレーオフ制度の存在すらファンでなければ伝わらない。
ラインは、全部で5本ある。J1には、ACL出場(3位以上)と自動降格(16位以下)の2本。J2には、自動昇格(2位以上)、昇格プレーオフ出場(3位~6位)そして降格可能性(21位以下)の3本。第1節の順位は、カーレースに例えるとスタート地点のポールポジション。次節から、ホームのすぐ上や下にいるチームの成績も等しく重要な意味をもつ。 毎節すべての対戦カードをにらみながら、「どこがどこに負けて、また何点差だったら、うちの順位はどうなるこうなる」。地元では、試合当日までこんなシミュレーションの話題で盛り上がる。毎節、勝てば3点、引き分けると1点。貴重な勝ち点の積み重ねで、順位が動く。「この調子で最後まで線の上に残っていてほしい、もうひと頑張りすれば線の上に脱出できるから。」線を巡る様々な思いが、新たなファンをスタジアムに運んできてくれる。 線入り順位表の活用例は、50周年を迎えたドイツのブンデスリーガにある。他会場の得点経過が、スタジアムのオーロラビジョンを利用して、会場内に速やかに紹介される演出はとても好評だ。これも、平均入場者数が4万人超と世界一多い理由の一つかもしれない。 他会場で得点が入ると、最初に告知する音が鳴る。それを聞いた観客たちの視線が、一斉にオーロラビジョンに向く。
そのとき、スクリーンにはスポンサーのマークが映し出されている。直後に、両チームのエンブレムを使って試合経過が表示される。このとき、ホームの順位の上下に位置するチームやライバルの動向は最も気になるところ。その対戦相手方の得点には、場内が歓声に包まれる。これで、他会場の様子を気にせず目前のゲームに集中できる。この場面は観客全員が注目するため、スポットだがスポンサー価値が高いらしい。Jリーグでも採り入れてみてはどうだろう。 J1では第8節を終わり、大宮アルディージャがクラブ史上初の首位に立った。ドイツでは、たとえ1節でも首位の座に就くことが、長いクラブ史において誇りや伝統になる。サッカー専門誌Kickerでは、首位に延べ何節立ったかをランキングで紹介しているほどだ。 9ヶ月にわたる長丁場をともに戦い抜いた年の瀬、わがチームの名が線上にある姿に、「メリークリスマス!」と歓喜の声が聞こえて来る。1本の線があるだけで、人々の日常生活を豊かにしてくれる。