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コラム

百年構想のある風景

2015/1/30 10:00

マーチャンダイジング

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欧州のスタジアムは、いまファミリーで楽しめる空間に変わった。ホームゲームの後、大勢のファンが併設されたメガストアに吸い込まれていく。 入場料、テレビ放映権と並ぶ収入の柱に、MD:マーチャンダイジング(商品化)がある。MD収入は収益率が高く、経営の安定への寄与度は侮れない。ビッグクラブの条件の一つに、ファンショップの役割がある。このことは、マンチェスターユナイテッド(マンU)のアジアマーケティング戦略にもつながる。 ロンドン五輪の男子準々決勝が行われたマンUのホームスタジアム:オールド・トラフォードのメガストアでは、デビュー間近の背番号26のレプリカユニフォームが一着70ポンド(約1万円)と高価ながら飛ぶように売れた。この調子なら、クラブにとって香川真司選手は決して高い買い物ではないだろう。

マンUのメガストアは、20年前にトットナム・ホットスパーのMD担当から引き抜かれたエドワード・フリードマン氏の仕掛けだという。「大勢の観客を集める人気がありながら、入場料収入を得るだけで満足してはもったいない。同時に、観客や世界のファンにもっと「夢」を売っていきたい。」試合当日は、メガストアだけで一人1万円も消費されると聞いて驚かされた。 ビッグクラブは、いま商品開発に力を入れている。平均入場者数4万人超と世界一を誇るブンデスリーガでは、バイエルン・ミュンヘン、ハンブルガーSVやシャルケ04など総収入におけるMD比率が高いクラブが多く、特定の収入に依存しない構造になっている。 アジア各国の人々がテレビ中継や雑誌を見てファン心理を抱くと、まずクラブグッズの購入意欲が生まれる。オンラインショップでも購入可能な時代だが、自分の足で出向いて欲しいものを探したいのがファン心理。いつか憧れのホームスタジアムにあるメガストアを訪れたいと夢がふくらむ。

Jリーグの開幕当初は、その人気からリーグ収入の約4割(40億円)をMD収入が占めていた。あれから20年、欧州のビッグクラブに席巻されたアジア市場に、いよいよJリーグが本格的に進出を図っている。そこに期待される効果は、単に放映権の収入増だけではない。同時に、自国のスター選手がJリーグで活躍することも手伝い、MD収入の増加によってJクラブやリーグ全体の力が大きく底上げされるだろう。 いつも愛するクラブと共にある暮しは、大人になっても変わらない夢。 それが、「ファンという至福」なのかもしれない。