「サイレントタイム」という言葉は、災害時の救出現場で、ヘリコプターや重機などの使用を一定の期間ごとに、一斉に止め静寂を保ち、瓦礫の下から助けを求める声や物音が聴こえて来ないか、聴き漏らすまいと集中する時間のことである。 昨年2月のニュージーランドの大地震では、ビルの倒壊現場の救出作業中、1分間サイレンを鳴らした後、数分間一斉に重機などの運転を止めて、生存者の声やかすかな物音を確認した。サイレントタイムの間に、かすかな声でも聞こえたら、すぐにそれを確かめ、全力で救出活動にうつる。1995年の阪神淡路大震災や昨年の東日本大震災の際にも設けられた。また、大海原を航行する大きな船舶にとっても、小船から出る微弱なSOSを受信するために使われる大切な用語だという。
Jリーグは、ここまで来た。開幕当時の10クラブから40クラブに。この20年間、理念は、Jリーグのすべてである。横浜フリューゲルスなどの経営危機とJ2発足、準加盟制度の創設、クラブライセンス制度の導入など、幾度となくサイレントタイムの必要に迫られ、その都度「豊かなスポーツ文化の振興」という原点に立ち返り行動してきた。 今、"Jリーグ"という言葉には、二つの意味が宿る。J1、J2を示すプロリーグと底辺を支える地域に根ざしたスポーツクラブ。どちらも、「あなたの町にはJリーグがある」風景である。後者のクラブづくりを推進するために、地域リーグ下の県リーグまで対象を広げた準加盟クラブ制度の真価が試される。 Jリーグは、これからだ。クラブライセンス制度の導入後は、日常の「収益力」が問われる時代になる。
その源泉は、サッカー専用の「スタジアム力」にあるだろう。スタジアムを単なる競技や観戦の場と考えるのは、もはや時代遅れ。世界のスタジアムは、一年中いろいろな人々に夢を与え収益を生み出す「街なか複合型スタジアム」が主流となった。クラブライセンス制度は、世界No.1を誇るブンデスリーガを模範とする。スタジアム環境や平均観客数において、1963年の開幕から20年目の姿は、Jリーグの現状とさほど変わらなかった。ただし、それは30年も前のこと。 これから先、Jリーグが世界のトップリーグに発展するために、いま何を変えていかねばならないのか? 何を変えてはならないのか? 両者を見分ける知恵と勇気が求められる。だからこそ、サイレントタイムは繰り返され、その後にはより強いアクションがついてくる。