今日の試合速報

コラム

百年構想のある風景

2015/1/30 10:00

県民チーム

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今シーズン、J2にFC町田ゼルビアと松本山雅FCが新たに加わった。いずれも、町田市(人口40万人)と松本市(20万人)を単独のホームタウンとする。Jリーグ規約第21条〔Jクラブのホームタウン(本拠地)〕には、「特定の市町村を定める」と明記されているからだ。ただし、経営基盤の脆弱な地域等では、中核となる都市を定め全県をホームタウンとすることが認められている(現在、該当するのは、山形、甲府、草津、富山、名古屋、岐阜、鳥取、岡山、徳島、愛媛、大分)。 カターレ富山のホームタウンは、富山市を中心とする全県だ。

先月、富山市を訪れたとき、地元の人たちから「カターレ富山(Jリーグ)、富山サンダーバーズ(BCリーグ)、富山グラウジーズ(bjリーグ)と、"県民チーム"が三つもあるのに、なぜ盛り上がらないのか?」と聞かれて、「県民チームという考え方に問題があるのかもしれませんね」と答えた。 県民チームという発想は、富山のように県名=県庁所在地名の場合に生じやすい。同一名は、東京を除く全国46道府県の中で、実に29府県にのぼる。一方、札幌、仙台、宇都宮、水戸、横浜、甲府、名古屋、神戸、松山などは、名前を聞いただけで固有のイメージが湧き、ホームタウンに対する帰属意識につながりやすい。 小学校の授業で、県名と異なる県庁所在地名を必死で覚えたものだ。特徴がなく覚えづらかった浦和市(当時)を、レッズのある今なら決して忘れることはない。

受話器の向こうから「桃太郎のまち、岡山市東京事務所の○○です」と元気な声が聞こえてきた。この応対は、岡山県と区別するために岡山市独自のアイデンティティを表現しようと今年から始めた工夫だという。ならば、「ファジアーノのまち」も加えられないか。マンチェスターシティやイプスウィッチタウンのように"City"や"Town"とクラブ名につけるのも一考だ。イングランドのプロリーグに属する92クラブには、四分の一にこうした名がついている。 嵐、SMAP、EXILE、AKB48など芸能界からホールディング・カンパニー制の企業統治、先進国の連邦制や欧州連合に至るまで、今や「ユニット」の時代である。一つ一つの個の自立があり初めて、ユニット全体のチカラも強くなる。いきなり県民チームと唱えることより先に、富山市、歴史ある高岡市や魚津市にホームタウンを分け、それぞれに地元クラブの核(コア)を確立する。後援会やサポーターズクラブの組織は、県内の市町村や自治会ごとに細分化して、誰もが参加しやすい身近なユニットをこしらえる。実は、平均入場者数が世界一多いブンデスリーガのスタイルでもある。 "県民チーム"とは、こうしたユニット「チーム富山」の存在の中に、自然に生まれて来る意識ではないだろうか。