今日の試合速報

コラム

百年構想のある風景

2015/1/30 10:00

街スタ元年

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

元日の徳島新聞の一面トップに『徳島駅北にスタジアム、活性化へ構想』という大見出しの記事がでた。徳島ニュービジネス協議会の提言によるものだ。地元の新年会では、この新鮮な話題でもちきりだという。 掲載されたスタジアムのイメージ図には、駅に直結する陸橋を阿波踊り連が練り歩く姿が見える。J2徳島ヴォルティスのホームスタジアム(2万人収容のサッカー場)を核にして、商業施設を備えた複合型の「街なかスタジアム」(街スタ)だ。ショッピング、ビジネスや市民交流機能を兼ね備え365日の稼働をうたっている。

街スタは、2週間に一度、2万人の賑わいを演出する街の大集客装置。アクセスの好条件が、試合の前後は、千人単位の大勢のアウェイサポーターを一般の観光客にする。試合のない日でも、多機能複合型にすることで、空洞化した街の中心部に賑わいを取り戻す求心力(シンボル)になる。周囲は水と緑に囲まれ、屋根には太陽光発電パネルを設置した環境にやさしいグリーンスタジアム。もしもの災害時には、厨房機能やトイレ・シャワー完備の快適な空間をもち、大規模な防災拠点として期待できる。 2013年からJリーグにクラブライセンス制度が導入されるが、健全な経営基盤を確立する収益力の源泉は、「スタジアム力」である。複合型のお手本バーゼル(スイス)のザンクト・ヤコブ・パルクの責任者だったケルン氏は「これからは、スタジアムは、いろいろな機能を果たしていかなければならない」と語った。足を運ぶ様々な動機が混ざり合う街スタは、文化・経済の両面で大きな力を生み出す。約160億円の建設費は、仮に40年(国立競技場は既に約50年)使用され、80万人の徳島県民みんなが最低年一回は利用するとすれば、一人わずか?年500円で分かち合える計算になる。

「街スタ」は、日本のまちづくりの新しい可能性を追求している。しかし、現実は手ごわい。一昨年秋、小倉駅の北500mに計画を発表した北九州市や、昨年、松山城下の堀之内に提言した松山商工会議所も、理解と情熱という側面で根気のいる戦いがつづいている。 スーツ姿と椅子に座る現代スタイルで、新作落語を披露する柳家花緑さんにも、かつて既成概念の壁が立ちはだかったという。だが、落語の伝統に誇りや自負があるからこそ、この新しいスタイルに挑戦できる。Jリーグ元年の時もそうだった。古いしがらみを破る勇気が、気持ちの後押しになる。街スタ計画もまた、江戸時代の徳島城の史跡を残すなどしながら、新しいカタチへ一歩踏み出す勇気をのぞかせる。いくら街スタと叫んでも、常に中身が勝負だ。地元に愛されるホームチームが在ってこそ、多くのファンに来てもらえる。