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コラム

百年構想のある風景

2015/1/30 10:00

Radio

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メキシコ五輪銅メダルの勢いで臨んだミュンヘン大会(1972)の最終予選。日本対マレーシアの雨中の一戦を、隣国ソウルから実況中継するラジオにかじりついて応援した。 当時は、"ながら族"という生活スタイルが流行。勉強しながら、家事しながら、運転しながら、横たわりながら、お気に入りのパーソナリティの声に耳を傾ける。小型でポータブルなラジオは、我が良き友だった。 最近、このラジオの価値が見直されている。その中心は、コミュニティFMだ。1992年に初めて開局して以来、20年間で全国に約250局に増えた。広域FMやAMに比べて、最大出力20Wと電波の届く範囲が狭い。このため、放送エリアが市町村単位に限定された小さな「まちのラジオ局」として、地域に根ざした情報発信を得意とする。音楽やニュースだけでなく、東日本大震災では、安否確認やインフラ復旧情報など災害時の緊急放送に重要な役目を果たしている。

観光ボランティアの募集、商店のお買い得情報や育児相談に至るまで地域の生活情報を詳しくタイムリーに住民全員で共有できる手段の存在は、地元自治体や商工会議所、商店街にとって、何よりのパートナーである。このため、出資、補助金やCMスポンサーなど様々なカタチで互いの絆を深めている。経営を支える収入の柱は、地元の企業や店舗からのCM収入である。 親しみのもてる愛称がつき"ホームタウン"を有するコミュニティFMは、Jリーグがめざす地域のスポーツクラブのあり方に似ている。どちらも、失われつつある地域のアイデンティティやコミュニティの復活に一役買う。Jリーグのホームページ(放送ガイド)を覗くと、コミュニティFMによるラジオ中継が増えている。

一例をあげれば、J1では、仙台シティFM、FMかしま市民、かわさき市民、FMしみず、浜松FM(磐田)、FMとよた(名古屋)、J2では、らむれす(札幌)、調布FM(FC東京)、湘南平塚コミュニティなど。遠くアウェイまで帯同して、北から南からホームチームの戦いぶりを地元ファンに届けてくれる熱心なところもある。 インターネットの時代、まちのラジオは、世界中どこにいてもパソコンを通じて番組を楽しむことができる"地球Radio"になった。名物アナウンサーの実況中継に、ボールの行方や選手の動きを耳で追いながら、想像力を膨らませ思わず誓いたくなる。 「次は、スタジアムへ行こう!」。