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コラム

Jリーグチェアマン 村井満の“アディショナルタイム”

2014/9/18 10:00

週末の富山にて(♯18)

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二人一組になっての「手つなぎ鬼」に夢中の子供たち
二人一組になっての「手つなぎ鬼」に夢中の子供たち

 チェアマンとしての各クラブ訪問も佳境に入っている。全51クラブ中46クラブ目となったのは、先週末(9/14)訪問したカターレ富山だ。

輝くような芝の上でサッカー教室に励む子供たち
輝くような芝の上でサッカー教室に励む子供たち

  スタジアムに隣接するサブグラウンドには、目に染みるほどの鮮やかな緑一面の芝生が広がり、透き通るような秋の陽光がたっぷりと注がれている。その中で子供たちは満面の笑顔でボールを追いかけ回っている。ここでは、Jリーグオフィシャルパートナーである明治安田生命富山支社主催の「Jでつながろうサッカー教室」が開催されていた。

 

試合前には両チーム選手による「差別・暴力根絶宣言」があった
試合前には両チーム選手による「差別・暴力根絶宣言」があった

  富山の冬は雪深い。県庁所在地別の降雪量を比較すると、富山市は青森市、札幌市、山形市に次いで日本でも4番目の豪雪地となっている。近年の温暖化でやや積雪量は少なくなっているとはいえ、平均で50㎝の積雪を記録する。子供たちは、まるで1年分の芝との戯れを取り戻すかのように走り回っているかのようだ。

起死回生の同点ゴールを決めた宮吉選手(中央)
起死回生の同点ゴールを決めた宮吉選手(中央)

 カターレ富山はサッカー教室に集まった100名近い子供たちを試合観戦に招待した。残念なことであるが、カターレは6月28日にVファーレン長崎に勝利して以来、7敗3分でここ10試合勝利から遠ざかっている。順位的には21位のカマタマーレ讃岐と勝点差で12点離れた最下位の22位。このままではJ3への自動降格も現実のものとなりかねない。そうした状況でも、カターレは招待した子供たちに「諦めない心」を伝えることができるのか、チームにとってはとても大切な一戦だ。

  試合前にカターレの酒井英治社長がピッチ上に立ち、ファン・サポーターに対して力強い言葉で「J2残留へ向けて覚悟をもってやる。ぜひ一緒に戦ってほしい」との挨拶があり、非常に引き締まった空気の中でキックオフのホイッスルが鳴った。試合は71分に大分トリニータに先制されるものの、チームはひたむきにボールを追い続け、ファン・サポーターも諦めずに選手たちに声援を送り続けた。その思いが通じたのか、84分に先ごろ京都サンガF.C.から期限付移籍で加入した宮吉選手のゴールで同点に追いつくと、ゲームは一気にカターレ富山のペースに。結果的には引分けのまま11戦連続未勝利とやや不名誉な数字は更新されることになったが、一方で今シーズン初めて2試合連続の勝点を獲得した。

  私は試合終了間際にはピッチサイドにいることが多い。そこでは、スタンドの声がよく届く。富山では多くの子供たちの声が私の耳に届いた。「また頑張って!」とか「カターレ富山!」など今日のゲームに何かを感じたから出た激励の声だ。勝利を信じた選手たちの全力プレーは、来場した子供たちにとって何よりのプレゼントになったことだろう。

  全力でプレーする姿や声高らかに応援する姿など、子供たちが様々な形でサッカーに夢中になっている場面に出会うと彼らから元気をもらうことができる。「サッカーはこんなに楽しいんだ」と理屈抜きで語り掛けてくれているからだ。そういえばずいぶん昔になるが、私も6年間ある少年サッカーチームに帯同していた時があったが、その時は本当に楽しかった思い出しかない。子供たちのおかげで近所のおじさん同士が彼らのサッカーを肴に一杯やることができたし、好きが高じて審判の資格まで取って彼らと一緒に走り回ることもできた。

  久しぶりに子供たちに感謝して過ごすことができた富山の一日だった。