自動車、船、飛行機・・・子ども時代のお宝に、プラモデル、いわゆる「模型」がある。設計図に沿い、部品一つ一つを根気よく組み立て色を塗る。本物そっくりの模型が完成すると、想像力豊かに一人遊びに興じたものだ。模型は、大人も虜にする。その代表格は、世界的に鉄道模型だろう。その仲間に、欧州で見つけた“スタジアムの模型”を加えたい。 フランス生まれは、地元のスポーツ店にあった。プラスティック製の立体的な作品風、観賞用の置物タイプが主流で、ほこり防止の透明なケースまで付いている。
1938年FIFAワールドカップフランス大会時に建設された名門オリンピック・マルセイユのホームスタジアム「スタッド・ヴェロドローム」の模型は、本物そっくりのデザイン。スタンドはチームカラーの水色と白色に塗り分けられ、両脇には2基の照明塔が伸びている。 英国生まれは、アーセナルのファンショップの片隅で見つけた。紙製で二つに折りたたまれたBOOK型を開くと、中から立体的なスタジアムの模型が飛び出した。1913年から2006年までクラブの聖地となった「HIGHBURY」である。 百年にわたりチームを見守ってきたスタジアムの歴史が、冊子として年表や写真で綴られる。周囲の通りと名前が描かれた台紙には、小型電池と二つのボタンが付いている。一つを押すと、スタジアムに豆電球の照明が点灯した。もうひとつに触れると、スタジアムの中からサポーターの元気な「応援歌」が聞こえてきた。収録されている応援歌は、全部で4パターン。大げさだが、まるでスタジアムにいるような臨場感を味わうことができる。同様のものを、他クラブのファンショップでも見かけた。
ドイツの市役所のロビーには、「まちの模型」がよく飾られている。どこも、町の姿を立体的に忠実に再現した精巧なもの。大都市フランクフルトにも、庁舎の一階フロアー一面に、正確な木製の模型が展示されている。新しい建設プロジェクトを検討する際には、この模型を使って全体のバランスをみる。まちの姿は、住民の意識と行動の鏡である。まちの模型は、愛するまちの有り様をいつも市民に意識させているのだという。 いつの時代でも、模型は、大切な思いをいつも身近に置いておくための手段の一つ。そのスタジアムが“ホームのために”存在するかぎり、模型と化して、ファンそれぞれの心に特別な意味を宿していくだろう。 Take J home! さあ、Jリーグを我が家に持ち帰ろう!