今日はベトナムリーグからアウォーズ(年間表彰)に招待されてホーチミンに来ている。行きの機内でJ3リーグのブラウブリッツ秋田のホームスタジアムである八橋運動公園球技場を訪ねた8月10日(日)の話を書きたい。
キックオフ2時間ほど前にピッチが見渡せるスタジアム内の会議室で中央大学の学生との意見交換の機会を得た。「日本で最も高齢化率の高い秋田県において、地域に活力をもたらすためにJリーグには何ができるか?」を議論したのだ。題して「高齢化を迎える日本の将来とJリーグ」。何とも大きなテーマだ。学生はゼミの活動の一環で秋田に滞在しながら検討を重ね、企画立案や実行にあたって必要なスポンサー集めの営業活動なども行っている。
「ホーム試合開催日に合わせてスタジアムに隣接する会場でグランドゴルフ大会を実施してはどうか」とか、「マッチデープログラムを高齢者向けに編集してはどうか」など多くのアイデアが出された。
その中で特に私の気を引いたのは、「秋田弁による場内アナウンス」というものだ。地域密着を標榜するJリーグにおいて地域色豊かなスタジアムは何よりの魅力だ。特にコストがかかるわけでもなく、幅広い客層に親しみを持ってもらえるかもしれない。これまで私は43クラブを訪問してきたが、ご当地の言葉で選手紹介や場内アナウンスがされたのを私は聞いたことがない。秋田の特色を明確に打ち出すことができ、他のクラブと差別化も図れるかもしれない。
ここで学生に提案してみた。「今日、私はピッチ上で一言ご挨拶をする機会をいただいている。私のパートの部分だけ、秋田弁で紹介してもらおう。いいアイデアは即トライしてみることが大事だよ。」と。私の申し出に学生は喜んで賛同してくれた。とはいえ、大変だったのはクラブ側運営本部だろう。シナリオにない内容だからだ。しかし、クラブ側も柔軟に判断してくれ、なんと、やってみることになった。
「本日は、あんべ悪りぃ天気のなが、なんと、Jリーグチェアマンの村井満さまが、おいがだブラウブリッツ秋田のために、東京がら出はってきてくれますた。へっかぐなのでここで、村井さまより一ごと言葉っこ頂戴したいど思います。」
不思議なもので場内は大きな拍手とともに親しみ深い笑い声で溢れ、とても暖かい空気に包まれた。学生のアイデアは私の想像を超えたエネルギーを会場に与えてくれたのだ。
Jリーグ全51クラブの中で、ブラウブリッツ秋田の岩瀬浩介社長は33歳。Jクラブ最年少社長である。一方ブラウブリッツ秋田の与那城ジョージ監督は日本を代表するベテラン監督で、51クラブ中2番目の年長監督だ(1番は柏レイソル・ネルシーニョ監督)。若者と年配がともに力を携えるそんなクラブなのだ。ここ秋田のように、高齢化が進む日本においてJクラブが若者とお年寄りを結ぶ絆になれたらどんなに素敵なことだろうか。