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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

子供は地域の未来

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城下カレイで有名な大分県国東半島のつけ根にある日出(ひじ)町(人口28千人)を訪ねた。小学校のそばで車を降りると、「こんにちは!」と行きちがう子供たちから元気な歓迎の声。「なぜ我々に挨拶したの?」「うちの町は、観光地だから!」とまちを愛する言葉が返ってきた。見知らぬ大人に挨拶をする子らの天真爛漫な笑顔に意表をつかれ、忘れ物を見つけた気分になった。 今シーズン新たに栃木、富山、岡山がJリーグ入り、仲間は27都道府県36クラブに。これを一番喜んでいるのは、ホームタウンに暮らす子供たちではないだろうか。身近にプロフェッショナルが存在する環境は、そこで育つ子供に、本物を“お手本”とする力をもたらし、けがれを知らずウソを見抜く力を与え、わがまちを愛する気持ちへと導いていく。

1999年にJ2が誕生、Jクラブが一挙に26になってから10年が経った。鳥栖(佐賀県)、甲府(山梨県)、山形、新潟など地方都市にもホームタウンは広がり、サッカー少年人口の増加に寄与している。 日本サッカー協会に登録されている小学男児の人数を、J2発足直後の2000年と直近の08年とで比較してみた。この間、男子児童数が約370万人と横這う中、少年サッカー登録人数は、23万人から28万人へ2割増加し着実な普及ぶりをみせる。 県別では、東京都の32,234人を筆頭に、上位24県のうちJクラブを有するのは、鹿児島、三重、滋賀を除く21県におよぶ。残念ながら、わが故郷高知は1,326人と最下位、盛り上がりの低さもうなずける。中でも、代表的な地域に根ざしたクラブを有する新潟(96%増)、茨城(69%増)、山梨(49%増)、山形(18%増)などの未来は明るい。 男児100人当たりの登録人口の割合をみると、全国平均は7.7人と1.5人のアップ。1位は、サッカーどころ静岡の15.1人。10位までには、徳島(12.7)、鳥取、島根、茨城、東京、熊本、栃木、長崎、大分(9.7)が入り、地方の躍進ぶりが目立つ。

この登録は、あくまで公式試合に出場するための必要条件である。メンバー全員を登録しているとは限らず、登録されていない少年たちが未知数であることも忘れてはならない。 ドイツのダルムシュタットで開催された全国少年サッカー大会をのぞいたときのこと。ピッチサイドに座る少年のユニフォームの背中に記された地名が気になり訊ねてみた。「Bornheimって、どこにあるの?」。彼は、振り返り自慢げに答えた。「フランクフルト市内にある町さ。世界で一番きれいなまちだよ!」。地元のクラブの存在を通じて、暮らすまちにアイデンティティ(誇り)をもつ子供に、確かな地域の未来が託されている。