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コラム

Jリーグチェアマン 村井満の“アディショナルタイム”

2014/8/13 10:00

「雲行き」との戦い(♯14)

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運営担当者の心強い味方が、ウェザーニューズ社のリアルタイム予測情報システム「COMPLETE」。試合二日前から情報が提供され、当日はリアルタイムで予測が提供される。(8月10日、秋田市八橋運動公園球技場運営本部にて)
運営担当者の心強い味方が、ウェザーニューズ社のリアルタイム予測情報システム「COMPLETE」。試合二日前から情報が提供され、当日はリアルタイムで予測が提供される。(8月10日、秋田市八橋運動公園球技場運営本部にて)

8月に入り、Jリーグでは文字通り熱い戦いが繰り広げられている。これからの日本は台風シーズンでもある。先日8月9日のサンフレッチェ広島対サガン鳥栖戦は、強大な台風11号の影響で中止、延期となった。その後も台風11号は記録的な豪雨をもたらしながら西日本を通過し、四国・中国・関西地域を中心に多くの住民に避難勧告が出されることになった。

 

刻々と変化する天候の情報は運営本部のホワイトボードに張り出される。(8月10日、秋田市八橋運動公園球技場運営本部にて)
刻々と変化する天候の情報は運営本部のホワイトボードに張り出される。(8月10日、秋田市八橋運動公園球技場運営本部にて)

こうした悪天候やそれに伴う交通事情への影響などを事前に予知し、ファン・サポーターをはじめとするすべての関係者の身の安全を守る裏方的な役割を担うのがホームチームの運営担当者だ。運営担当は、試合の中断・中止・キックオフ遅延などの判断をするにあたって、必要に応じてマッチコミッショナーや対戦する両クラブの実行委員、レフェリーと協議の場をセットする。最終的に試合の中止を判断するのはレフェリーだが、的確な判断ができるように正確な情報を収集、インプットするのが役割だ。この時期、運営本部では運営担当を中心として天候予測システムの周りに人垣ができることも多い。

 

快晴の相模原ギオンスタジアム
快晴の相模原ギオンスタジアム

私は直近3週の週末は、明治安田生命J3リーグの会場に足を運んでいた。順にSC相模原の相模原ギオンスタジアム(7月27日)、藤枝MYFCの藤枝総合運動公園サッカー場(8月3日)、ブラウブリッツ秋田の秋田市八橋運動公園球技場(8月10日)である。J3の場合、経験豊富な運営スタッフが潤沢にいるわけではないので、天候が一転悪化すると運営本部はまさに戦場のような様相を呈する。

 

ほんの数分で暗転したスタジアム。雷鳴がとどろきだした
ほんの数分で暗転したスタジアム。雷鳴がとどろきだした

私が相模原ギオンスタジアムのピッチ上でキックオフ前にファン・サポーターの皆様に挨拶をした14:30過ぎは写真のように快晴だった。しかし、その直後、キックオフ時刻の15:00前には、一転天候は悪化して、雷を伴う風雨に変わったのだ。

 発達した積乱雲はゲリラ豪雨だけでなく竜巻、落雷の危険をもはらむ。センターポールに掲げられているJリーグ旗の向きが急転して真逆に変わった。その合図に合わせるかのように激しい雨と強風がピッチを打ち付ける。運営本部の指示で両サイドの看板が寝かされた。スタンドには屋根はなく、それまで日よけに使われていた日傘は、雨傘に代用された。ついに雷鳴がとどろきだした。急転する変化を受けてSC相模原の運営本部は危険を回避するため、キックオフ時刻1時間を遅らせる判断を下す。お客様を守るためにバックスタンドにいるお客様全員をスタンド下のコンコースに移動するようにアナウンスするが、なかなか行き届かない。「正面にまだお客様が座っているぞ。至急避難を。」との声が運営本部に響き一斉に避難を呼びかけ続ける。一方で、J3の場合、スタジアムには照明設備がないケースが多い。ここ相模原も照明設備はない。キックオフ時刻を16時まで延長したものの、これ以上の中断は試合終了が暗くなり始める18時を過ぎることを意味する。運営本部は、試合の中止も視野に入れ、冷静に天候の分析を行った結果、ようやく16時キックオフを決断した。

 現在36都道府県に51クラブを擁するJリーグは、安心安全な試合環境を整えるべく日々自然災害に備えている。先日の秋田でも台風11号の余波を受けて臨戦態勢が敷かれていた。戦っているのはピッチ上の選手だけではないのだ。そして、こうした知見をホームタウンの防災に役立てることが出来たら何よりだ。街中に屋根付きで、広めのコンコースが確保されたスタジアムができれば大規模防災拠点として機能するかもしれない。Jクラブは常に地域に役立つ存在でありたいものだ。