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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

空飛ぶホームタウン

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欧州内を旅するときには、ルフトハンザ航空(LH)を利用することが多い。その機体にドイツ各地の都市名や州名を冠していることに興味を抱いた。機体外側の搭乗口付近には都市名が刻まれ、機内の最前部には、都市のエンブレムと、「当機を○○のまちに因み命名する」と独語と英語で記されたパネルがある。 LHには、現在約280の都市名(うち州名13)を名付けた機体がある。人口別にみると、50万人以上の大都市が11機、10万人以上が65機、残りの約200機には10万人以下の小都市の名が。うち半分は5万人以下、1万人に満たない9つの村の住民たちには何よりの誇りだ。何百というホームタウンの「地名」が、自動車のナンバープレートと一緒に地上を駆け回るのも、機体と大空を飛び回るのも、ドイツ人のまちを誇り、愛する豊富な表現力の一端である。

A340型機に命名された“Gander/Halifax”号、この一機だけはドイツの都市名ではない。なぜ、アメリカ東海岸ニューファンドランド島(カナダ)のGander/Halifax空港の名をつけたのか。2001年9月11日、LH400便がニューヨーク着陸を目前にして、あの同時多発テロは起きた。その混乱の中、同機を受入れてくれたのがこの空港である。その際、350人以上の乗客は、5日間Gander大学内の宿舎にお世話になった。  同年、この大恩をいつまでも忘れないようにと、両都市の名が新型機に命名されたもの。機体にシャンパンを注ぐ伝統的な命名式が、両市長夫妻、大学長、市民代表そして当時の乗務員らを招いてフランクフルト空港で行われた。 以前わが国でも、TDA(東亜国内航空)の約40の機体に地名がつけられていたことがある。

路線の多い九州や北海道の地名が目立ち、都市名よりも、島の名前(礼文、佐渡、隠岐、与論)、山の名前(大雪、磐梯、穂高、開聞)、半島名(知床、男鹿、伊豆、国東)が大半だった。旅の途中に、こうした地名と触れ合う文化が失われることはとても寂しい。 無形文化財たる「地名」を、わが国では地域のエゴや合併時の妥協などにより、少なからず使い捨て、消し去ってきた。形のあるものとは異なり、博物館に保存することは不可能だ。世界自然遺産や世界産業遺産を論ずるように、昔から地元になじんだ地名への深い想いをおろそかにしてはならない。 スポーツクラブの名称しかり、愛する地域の名を用い、守り続けていく“シーン”(場面)の創出こそが大切な時代である。