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2015/12/19(土)22:45
【プレビュー:3位決定戦】最後の力を振り絞ってアジアの雄に立ち向かえ
準決勝 リバープレート戦で燃え尽きたか。それとも、中3日で切り替えることは出来ているのか。明日の広州恒大戦は、そんな覚悟が問われる試合となる。
18日間で6試合目。信じ難いハードスケジュールではあるが、選手たちの表情は晴れやかだ。
「確かに身体は疲れているけれど、メンタルは大丈夫。こんな素晴らしい大会で、世界の強豪と戦えているわけだから」と塩谷 司は言う。広島にとっての今大会最大の発見というべき茶島 雄介は、「自分にとってはどんな試合もそうだけど、明日の3位決定戦は本当に重要。得点に絡む決定的な仕事がしたい」と勢いを加速させるつもりである。強い眼力を持って記者会見に臨んだ青山 敏弘も、「ここまで成長しながら戦えている。3位の座を勝ち取り、クラブとしてのレベルを上げていきたい」。言葉の1つ1つに力がこもり、頼もしさは増幅されていた。
ただ、バルセロナには完敗したとはいえ、広州恒大は強大なチームである。今季のACLではグループリーグでこそ状態があがらず、鹿島やウェスタンシドニーに苦杯を喫したものの、監督をファビオ・カンナヴァーロから経験豊富なルイス・フェリペ・スコラーリに交代してからは一気の快進撃。ボランチにパウリーニョ、FWにエウケソンやリカルド・グラール、そしてロビーニョなどブラジル代表経験者がズラリ。違いをつくれるマイスターたちと強烈なフィジカルをもっている中国や韓国の代表選手たちがかみ合い、今季のACLを制覇。柏やG大阪も善戦はしたが、1度も勝利することなく敗退の憂き目にあった。フェリぺ監督就任以降、敗れたのはバルセロナが初めてというのだから、その力は強烈である。
特に要注意人物はパウリーニョだ。クラブワールドカップの初戦、クラブ・アメリカ戦では相手に圧倒され、先制点を浴びた「負け試合」を彼がひっくり返したと言っていい。一気のドリブルで左サイドを突破し決定的なクロスを入れて同点弾を演出すると、試合終了間際にセットプレーから強烈なヘッドを決めて決勝点。メキシコの雄をどん底にたたき落とした。バルセロナとの戦いでもセットプレーから「あわや」というシーンをつくりあげ、欧州王者を慌てさせた。強くて、高くて、上手い。今季のACL柏戦では圧巻の35mFKをたたきこみ、名手・菅野 孝憲を呆然とさせたシーンも記憶に新しい。
そのパウリーニョとのマッチアップが予想される青山は「確かに素晴らしい選手です」と前置きした上で「ここで自分が上回っていければ、チャンスはある。(名前を)意識しすぎないようにすること」と強気の言葉。当然だろう。戦う前からやられることを考えるのであれば、プロの名前をはずした方がいい。
広州恒大はバルサ戦から中2日と疲労もあるだろう。DFツォン・ウェンも負傷し、戦力的にも厳しい。だが、それでも個々の戦闘能力では彼らが上をいく。広島は対リバープレート戦を見ても、肉体的にはもうボロボロ。中3日とこれまでよりも少し余裕はあるが、劇的な回復は難しい。
「メンバー構成はまだ100%、自分の中では決まっていない。よりいい状態の選手を見極め、ベストの布陣で臨みたい」
森保 一監督のこれまでの起用法から考えれば、よりフレッシュな選手を先発から使っていく可能性も高い。千葉 和彦の出場停止を受け、リベロに誰が入るか。そこも含めて、明日の采配が気になるところだ。
「来季のACLで勝ち上がれば、必ずどこかで戦わねばならない相手。この3位決定戦で、我々が広州恒大を相手に戦えるということを、見せつけたい」
予算規模でいえば、広州恒大の10分の1にも及ばないと言われている広島だが、勝負は予算では決まらない。そんなスポーツに対する夢を、希望を、全国のサッカーファン、サッカー少年たちに見せてほしい。疲れているし、身体も頭も悲鳴をあげているはず。そこをもうひと頑張り、何とか、力を振り絞ってほしい。
[文:中野 和也]