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アクション事例「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」(ヴィッセル神戸)

JリーグとJクラブは気候アクションを、ロードマップに沿って推進しています。
“気候変動問題の解決”と“地域活性”の両方に効く という観点で、より多くの皆様に知っていただき、たくさんの地域で広がっていってほしい活動をピックアップしてお伝えしていきます。

ヴィッセル神戸「スポーツとともに、もっといい未来へ。
A BETTER FUTURE TOGETHER」

ヴィッセル神戸は6月16日、明治安田J1リーグ第18節の川崎フロンターレ戦を、楽天グループ株式会社の協賛試合「Rakuten SUPER MATCH」と銘打ち、国立競技場で開催しました。
49,541人のファン・サポーターが集まったこの一戦では、楽天がスポーツをきっかけに、多くの方の「もっといい未来」を創っていくことを目的に掲げるスローガン「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」のもと、「Green for Future」「Sports for Everyone」という2つの活動指針に基づき、持続可能な社会と全ての人がスポーツを楽しめる世界の実現に向けたさまざまなアクティベーションが展開されました。

My Better Future Card Booth

ファン・サポーターが専用ブースで自画像を撮影し、それぞれが目指したい「もっといい未来」を選ぶと、A Iがイメージしたデザインのデジタルカードを作ることができる

Bottle Cap Exchange Box、Sustainable Cutlery

会場内外にはペットボトルキャップの回収ボックスが設置され、ボトルとキャップの分別を促進。キャップ回収業者に納めた売却益は、世界中の子どもにワクチンを提供するための資金として活用

Athlete Message Board

ヴィッセル神戸のFW大迫勇也選手、FW武藤嘉紀選手、DF酒井高徳選手、MF山口蛍選手らサッカー選手に加えて、楽天イーグルスや楽天モンキーズの選手たち、バスケットボールの町田瑠唯選手、スケートボードの藤澤虹々可選手ら「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」の理念に賛同するアスリートのメッセージも掲げられ、それぞれに手書きの応援メッセージを送ることができる企画

「楽しみながら」環境を考える

これらの企画の参加者には「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」特別仕様の選手カード(リサイクル素材)がプレゼントされ、ファン・サポーターはトレーディングカード感覚で集めることができました。またスタジアムで観戦することができないファン・サポーターに向けても、オンラインクイズ企画を実施。こちらの参加者にもデジタル版のトレーディングカードがプレゼントされました。

こうしたさまざまな企画が実施された「Rakuten SUPER MATCH」ですが、どの企画にも共通していたのは、ファン・サポーターが「楽しみながら環境活動に触れられる」という点です。
ヴィッセル神戸ではこれまでも「一致団結 みんなでつくるサステナブルな社会」をテーマに、スタジアム・練習場・選手寮で使用する電力を100%再生可能エネルギーでまかなったり、ファンクラブの子どもたちを対象にSDGsに関するオンライン勉強会を開いたりと、環境活動への積極的な取り組みを続けてきました。
今回の「Rakuten SUPER MATCH」ではそうした地道な活動に加えて、ゲーム形式のブースやトレーディングカードのプレゼントを通じて、「より楽しみながら触れられる企画」というところに重点が置かれていました。

楽天グループで「スポーツとともに、もっといい未来へ。A BETTER FUTURE TOGETHER」のプロジェクトを担当する長田希望氏(楽天グループマーケティングディビジョンブランドパートナーシップアクティベーション部ヴァイスジェネラルマネージャー)はこの日、報道陣向けに行われたトークセッションで次のように話していました。
「まずはカードを集めることをきっかけに環境にいいことをしよう、ごみを分別しようということで、ぜひともサポーターの方々に取り組んでほしいと思いますし、小さなことがきっかけでもできることがあるんだよということをお伝えしたいです。ごみの分別や環境について学べるようなブースも設置していて、そこに行ってもカードがもらえるようになっているので、ぜひ楽しみながら触れていただければと思っています」

こうした環境問題への向き合い方はJリーグの取り組みとも重なるところです。Jリーグでは2023年にサステナビリティ部が発足し、公式戦1,220試合で使用される電力を再生可能エネルギーとすることで電力由来の温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという施策を行ってきました。
今年(2024年)4月にはJリーグ特任理事の中村憲剛氏、小野伸二氏、内田篤人氏が出演する動画「サッカーができなくなる日!?全員に見てほしい、地球温暖化による異常気象と気候変動の現状、その対策の必要性」を公式YouTubeチャンネルに公開。近年の気温上昇や夏場の試合の厳しさを論じつつ、Jリーグサステナビリティ領域担当の辻井隆行執行役員は「これは真剣な問題だけど、楽しくやっているほうが仲間は集まる」という点を強調しました。

辻井執行役員はこの日のトークセッションにも出席し、ヴィッセル神戸と楽天のプロジェクトについて、楽しみながらできる企画の数々に「サッカー人気も広がっていくし、やればやるほど環境に良いしということで、Jリーグとしても嬉しい取り組みだと思います」と感銘を受けた様子でした。

またヴィッセル神戸エバンジェリストの槙野智章氏も「環境のことを今一度皆さんに知っていただくことにもなるのかなと思うし、サッカーを通して、試合を通して、それを楽しんでいただくことはもちろんですが、自分が日頃から何をしているのか、何をして過ごしているのかも知っていただけるようになると思いますね」と前向きに話しました。

実は史上初の取り組みも…

トークセッションの中では、楽天グループがヴィッセル神戸とともに実施しているホームゲーム運営の「サーキュラリティ評価」の先進性も話題にあがりました。

サーキュラリティ評価とは、ホームゲームの運営に投入される「インフロー」と排出される「アウトフロー」に関連するさまざまなデータを可視化し、ホームゲーム運営全体の資源循環性を評価するという仕組み。電力使用量やごみの量にとどまらず、使用する資材や排出先にまで目を配らせる取り組みとなっています。

長田氏によると、サーキュラリティ評価は「サッカークラブでは初めての取り組み」。2023年には明治安田J1リーグ第3節のガンバ大阪戦、JリーグYBCルヴァンカップグループステージ第1節の名古屋グランパス戦、明治安田J1リーグ第4節の浦和レッズ戦で実施していました。

そこでは調達した資源のうち再生可能な資源の割合「サーキュラー・インフロー率」が61%、排出した資源のうち再生可能な資源が実際に回収され資源循環が実現された割合「サーキュラー・アウトフロー率」が73%、ホームゲームにおける、全体の資源の循環性の割合「マテリアル・サーキュラリティ率」が66%とそれぞれ算出。詳しく資源の循環性が可視化されました。
【参照】CIRCULARITY ANALYSISサーキュラリティ評価の取り組み https://corp.rakuten.co.jp/event/betterfuturetogether/circularity/

こうした評価結果をもとに楽天とヴィッセル神戸は「エコステーションで排出された可燃ごみのうち、プラスチックの容器包装が7割弱を占める状況です。プラスチック容器包装のリユースもしくはリサイクルに取り組むことによって、可燃ごみの総量を大きく減らすことができます」といった考察を導き出し、今回の「Rakuten SUPER MATCH」で設置されたパネルにも掲示されていました。

長田氏は「なかなかチャレンジングな活動ではあるのですが、そこで明らかになったごみの量、CO2の排出量をもとに、ファン・サポーターの皆さんと何か取り組めることがあるんじゃないかということを考えながら、誰もができる豆知識をボードで展開しています」と話し、評価結果からスタジアムの展示に至るまでの取り組みを紹介していました。

またJリーグの辻井執行役員も「試合をするためにはいろんな資材を運び込んだり、いろんな食料を運び込んだりして、上流からものを投入して実現するわけですよね。それが最終的にどういう形になって出ていくかというのを全部可視化することは今まであまり行われていなかったんです」とその意義の大きさを強調していました。

 現時点でのサーキュラリティ評価は「燃料の燃焼によって直接排出する温室効果ガス」を示すスコープ1、「供給された電気・熱・蒸気を使うことで、間接的に排出される温室効果ガス」を示すスコープ2の算定にとどまっており、「原材料仕入れや販売後に排出される温室効果ガス」を示したスコープ3の算出はできていないという課題もあるようです。

 楽天とヴィッセル神戸は今後、新たなガイドラインを設けた上で、段階的にスコープ3の算定に向けて進めていくとのことですが、Jリーグの辻井執行役員はこうした段階的なチャレンジにも大きな意義を見出しました。

「サーキュラリティ評価をやっていらっしゃる企業の担当の方に話をうかがっていると、まだまだ改善点はすごくあるということなんですけど、僕がすごく良いなと思ったのは、日本は100点主義で完璧にしないと出しちゃダメみたいな、未完成だと突っ込まれるというのがあると思うんですが、僕はできていないことも含めて可視化して、それをみんなで眺めながら、じゃあどうやっていこうかという順番のほうが前に進めるのかなと。完璧主義よりも一歩前進というアイデアもそこにあるのかなということも感じています」(辻井執行役員)

未来へのロードマップ

こうした活動はJリーグが進めている「シャレン!」(社会連携活動)と同様、リーグ・クラブとさまざまなステークホルダーが協力し合い、時にはクラブ同士の横展開も行いながら、前に進めていくことが期待されています。辻井執行役員は次のような展望を話しました。

「Jリーグは60クラブが41都道府県にあって、一つすごく良いなと思うのが地域の特色、地域性、文化、歴史、そういうものと渾然一体になって発展していくことです。ただ、同時に全部のクラブがそれぞれ個別に取り組んでいくともったいないこともあるかもしれません。たとえばCO2を測る方法を一つ一つのクラブが開発すると、ものすごく時間と手間がかかりますけど、それをJリーグが一手に引き受けて使っていただくということもできると思います。全体を通して串刺しできるものと、クラブの個性や事情を加味しながらやっていくものと、うまくバランスを取りながらやっていくことが大事だと思います」

そうした取り組みにおいては、楽天のように先進的な姿勢を持つステークホルダーの存在が頼もしいものとなります。辻井執行役員は次のようなメッセージでトークセッションを締めくくりました。

「楽天さんは再生可能エネルギーの導入やCO2の可視化などいろんな企業に先駆けた取り組みをしていたり、すでに再生エネルギー100%を達成されていたりと、ロールモデルとしてどんどん他の企業さんにも影響を与えていっていただきたいと思います。またスポーツにもすごく力を入れているので、ファン・サポーターと一緒に楽しく仕組みを変えていくことができれば良いなと思っています。

ファン・サポーターが意識と行動を変えるのはすごく大事ですが、いろいろな事情もあるので、それを全員に強いることは苦しくなってしまいます。そこで、仕組み自体がいいものになっていけば、一人一人が毎日意識しなくても環境負荷が低い社会になっていくと思います。

たとえば日本のエネルギーは8割くらいCO2を出しながら産み出していますが、そもそもCO2の出ない電気に変えられればそこまで一人一人が注意しなくても環境負荷は低くなります。スタジアムへの交通手段も全員がE Vカーに乗れるわけではないので、そういった公共交通機関があればいいと思います。そういった社会の仕組みづくり自体にもリーダーシップを取って前進していっていただけると、社会がより良い方向に行くと考えています」

もちろん、こうしたチャレンジをJリーグからも推し進めていくことが大切です。サステナビリティ部は今年、気候アクションの公式サイト(本サイト)を開設し、2024〜25年に「意識が変わる」、26〜27年に「行動が変わる」、28〜30年に「社会が変わる」というテーマを掲げました。持続可能な社会の仕組みづくりを実現するため、一歩一歩前進していきます。

Jリーグ気候アクションのロードマップ

意識が変わる

“気候変動とサッカーには深い関係があり、サッカーファミリーはその解決の力になれる。”

温室効果ガス

「Scope1,2」排出量と削減量を可視化

目指す状態

クラブがハブとなって地域資源(人・文化・自然)を活かしながら、再エネが広がり、自然環境保全・再生が進みはじめている(10クラブ程度)

サッカーファミリーとともに

サッカーファミリーが学ぶ場の深化・拡大

行動が変わる

“地球とサッカーを守るため、カーボンニュートラルを意識した選択と行動がサッカーファミリーのスタンダードになる。”

温室効果ガス

「Scope1,2,3」排出量と削減量を可視化

目指す状態

クラブがハブとなって地域資源(人・文化・自然)を活かしながら、再エネが広がり、自然環境保全・再生が進みはじめている(30クラブ程度)

サッカーファミリーとともに

サッカーファミリー、地域のステークホルダーが連携を深め、行動・実践が加速する

社会が変わる

“ホームタウン全てで、カーボンニュートラルと地域活性化を両立するための社会システム実現が進む。”

温室効果ガス

CO2排出量初年度対比50%削減

目指す状態

クラブがハブとなって地域資源(人・文化・自然)を活かしながら、再エネが広がり、自然環境保全・再生が進みはじめている(60クラブ程度)

サッカーファミリーとともに

様々なステークホルダーとともに、便利で環境に優しい仕組みづくりに向けて前進する

※Scope1:燃焼によって直接的に排出される温室効果ガスの量
 Scope2:供給される電気の使用に伴って排出される温室効果ガスの量
 Scope3:Scope1、Scope2以外に間接的に排出される温室効果ガスの量