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2015/11/30(月)21:00

広島練習レポート(11月30日)【決勝】

ラジオの取材を受ける清水。好調を維持しておりG大阪戦のキーマンとなりそうだ(写真提供:紫熊倶楽部)
ラジオの取材を受ける清水。好調を維持しておりG大阪戦のキーマンとなりそうだ(写真提供:紫熊倶楽部)

突然、森保 一監督の怒声が響いた。
「やり続けろっ」

紅白戦でボールがラインから出たと何人かの選手がセルフジャッジし、プレーをやめた。その瞬間である、指揮官の怒りが爆発したのは。
「笛が鳴るまで、やめるなっ」

神は細部に宿る。アメリカの建築家がデザインのディテール(細かな部分)の重要性を表現した言葉だが、その主語を岡田 武史元日本代表監督は「勝負の神様は」と言い替えている。「勝負を分けるのは、往々にして小さなことの積み重ねだ」と。勝負師としてリアリズムに徹底してこだわるからこそ、ディテールをとことん突き詰める。名将・岡田 武史に近い考え方を持っているのが、「リアリスト」という表現を好んで使う森保監督だ。そして彼がやっていることも、この「神は細部に宿る」なのである。

練習でもセルフジャッジを許さない。続けることをやめることを許さない。そういう精神は、日頃からこのチームには叩き込まれている。だが、それでもちょっとした瞬間に、原則から外れることもある。森保監督は、その細かな部分を見逃さない。そしてその出来事が起きたその瞬間に厳しく指摘し、修正する。

佐藤 寿人が「ウチは『これくらいでいいだろう』というスキは絶対に見せないチーム」と胸を張るのも、細部にこだわりを見せる指揮官の哲学が練習から浸透しているからだ。

森保監督の言葉で空気がさらに引き締まった練習の中で、輝きを見せているのが清水 航平である。レギュラーシーズン最後の3試合で、ガンバ大阪戦のダメ押し弾も含む2得点・3アシスト。爆発と言っていい強烈な印象を残し、広島の連勝に大きく貢献した。この日の練習でも、彼らしい空気が引き裂けそうな身体の切れを見せつけ、得点を決める。千葉 和彦が「航平が得点を取ってくれそう」と期待をかければ、佐藤も「身体が切れている。攻撃では航平のところで優位に立てるのでは」と自らのJ1通算最多得点記録を演出してくれたワイドアタッカーを称賛した。

「アシストできているのは、中の選手が僕を信じて走ってくれていることが大きいですね。寿人さんの記録につながるクロスが出せたことも、本当に嬉しい」と語る清水だけでなく、広島にはミキッチや柏 好文、山岸 智など、能力の高いワイドアタッカーたちが存在し、凌ぎを削っている。この4試合、彼ら4人で3得点・5アシスト。チャンピオンシップでも間違いなく、サイドが広島の攻撃のキーポイントだ。

「得点は、もちろん狙いたい」
さらなる活躍を誓う清水の視線はまっすぐに、12月2日の万博を見据えている。

[文:中野 和也]

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