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2015/11/28(土)21:11

命拾いをした「いま」、勝機を見出したG大阪【レポート:準決勝】

延長戦まで縺れ込んだ死闘を制したのはG大阪であった。
延長戦まで縺れ込んだ死闘を制したのはG大阪であった。

運が、味方した。

一瞬のミスが命取りになる――。ガンバ大阪の長谷川 健太監督はそう思っていたという。延長戦の後半、G大阪は危うく「命」を落としかけた。丹羽 大輝のバックパスがあろうことか、自軍のゴールへ。「入ったと思った」。そこまで好守を連発してきた守護神の東口 順昭も、さすがに諦めたという。次の瞬間、ボールは力なくポストを叩いた。そこから、ほんの数秒間が、勝負の分かれ目だった。

命拾いをした「いま」こそ、勝機――。そう見定めたように、G大阪の面々が猛然と敵陣へと走り出す。一気にカウンターアタックに転じると、米倉 恒貴の右クロスを、ファーサイドで待つ藤春 広輝が右足ボレーでとらえ、鮮やかにゴールネットを揺らした。2-1。エクストラタイム終了まで残り2分のことだった。試合後、命拾いした丹羽は「普段から真摯にサッカーと向き合ってきたから……『サッカーの神様』って、いるんだなと」と、安堵のため息をついた。

一発勝負のチャンピオンシップ準決勝。運が味方したとはいえ、勝者の打つ手はしたたかだった。この日のシステムは4-4-2。宇佐美 貴史を左翼で使わず、巨砲パトリックとのタンデムを選択した。浦和レッズの強みであるサイドアタックを警戒して、守備力の高い大森 晃太郎を左翼に据えた。47分、均衡を破った今野 泰幸の先制ゴールは、大森のボールハントが出発点だ。2トップを那須 大亮と阿部 勇樹を見張り、この2人と三角形をつくってパスワークの軸となる柏木 陽介を、時に大森が、時に遠藤 保仁が背後からしつこくマークし、虎視眈々と「奪取→速攻」を狙っていた。

ベンチワークも抜かりがない。守備力に秀でたオ・ジェソクを右サイドバックで先発させ、米倉をジョーカーとして温存。サブに回った倉田 秋と同様、勝負所で使い、決勝点を呼び込む布石を打っている。さらに、延長では井手口 陽介をボランチに投入し、体力を消耗した遠藤をトップ下に上げて、ディフェンス面のリスクを最小化。攻と守のバランスに細心の注意を払い、しぶとく勝機を待った。アジアチャンピオンズリーグを含め、幾多の修羅場をくぐってきた経験値の成せる業だったか。

敗れた浦和にも、十分に勝機はあった。1-1で迎えた後半ロスタイム、森脇 良太の鋭い右クロスを、ファーで待ち構えた武藤 雄樹が渾身のヘッド。しかし、シュートは東口のビッグセーブに阻まれている。柏木は「内容では負けていない」と唇をかめば、ペトロヴィッチ監督も「勝利に値する戦いをしたが、運が我々に味方しなかった」と悔しさを隠さなかったが、こうも言った。「選手たちは勝つためにベストを尽くした。それを称賛したい」。こうして、浦和はファイナルの手前で姿を消した。

[ 文:北條 聡 ]

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