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  • 2015明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ特集
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2015/11/25(水)19:19

レノファ山口とチャンピオンシップ その「熱」はきっと「幸せ」を育む【川端 暁彦】

山口が演じた劇的な結末はディスプレイ越しでも大興奮させられた
山口が演じた劇的な結末はディスプレイ越しでも大興奮させられた

11月23日、明治安田生命J3リーグ最終節。SC鳥取の本拠地に乗り込んだ首位のレノファ山口は、絶体絶命の状況からラストワンプレーで試合を振り出しに戻し、同時に「J3優勝・J2昇格」の栄誉も勝ち取った。弾ける笑顔と歓呼の声。こんなことがあるのかという劇的な幕切れ。完全な部外者である上に、スカパー!オンデマンドのディスプレイ越しに試合を観ていた自分ですら大興奮だったのだから、現場にいた山口サポーターの感情が振り切れていたことは想像に難くない。

今季開幕に際して山口の本拠地・維新百年記念公園陸上競技場で取材させてもらったが、会場の温かい空気感はハッキリと思い出せる。今年、この場所で「サッカーを観る幸せ」に気付いてくれる人がきっとたくさん生まれるのだろうと思った。数字は正直なもので、昨季JFLを戦ったときには平均で1,000人に届かなかった平均観客数が4,000人を超えることになったのは、つまりこの「幸せ」に気付いてくれた人が相当数いたからで、その単純な事実に、私も一人のサッカーファンとして「幸せ」を感じる。

百年構想を打ち出すJリーグの拡大路線への異論は根強くある。「クラブ数を絞り込んでレベルの高い試合を見せたほうが客は呼べる」と。ただ、この山口に集うようになった数千人は、「地元のクラブ」というキーファクターなくして「サッカーを観る幸せ」に目覚めなかった人たちだろうという確信もある。そして、特に鳥取まで行ってしまった人たちはきっと、これからも山口を応援し続けるのだろうという確信も。サポーターにとって、こういう共有体験は、ずっと心に残っていく財産だからだ。そういう場を作れていることに関して、Jリーグに携わる人々はもっと自信を持っていいし、誇るべきだとも思っている。

その一方で、Jリーグが全国的に耳目を集める機会を漸減させてきたというのも事実ではある。昨年、一昨年の優勝クラブがどこだったかを尋ねても正確に答えられる日本人はそう多くないだろうという痛い実感もある。これも現実。ローカルな輪を広げながら軸となる柱も高くなって、より広い範囲から見えるものになっていくのが理想だとすれば、輪が広がりながらも柱の高さは変わらず(あるいは低くなって)見えなくなってきているのが現状のJリーグだろう。ローカルな輪の拡大と柱の存在は本来矛盾するものではないはずだ。

11月28日、明治安田生命J1リーグ 1stステージを制し、年間勝点2位の浦和レッズと同3位のガンバ大阪の一戦から幕を開けるチャンピオンシップは、その柱たる役割を期待された大会ということになる。一発勝負の高揚感というのは独特なものがあって、ライバル意識の強い2チームの対戦も、その後に待つ年間勝点1位・広島とのファイナルを含めて、特別な記憶に残る戦いになる――否。そういう戦いにしていく必要があるし、テレビという箱を通じて、「サッカーを観る幸せ」を感じたことのない人に何を届けられるのか。Jリーグの将来はこの場で何を見せられるかに懸かっていると言っても、実際のところ過言ではない。

今さら技術的に何かが変わるはずもなく、ならば見せて欲しいのはファン・サポーターに対する責任感の発露と、どこまでも熱く、狂おしいまでの情熱だ。山口の試合がそうだったように、門外漢がチャンネルを合わせただけでも、テレビのディスプレイ越しでも伝わっていくような「熱」。大会にエントリーする3クラブには、ぜひそれを見せてもらいたい。その熱は、きっと新たな「幸せ」を生んでくれるはずだから。

川端 暁彦(かわばた・あきひこ)
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』 元編集長で、2013年よりフリーランスに。育成年代からJリーグまで幅広く取材し、古巣を始めとして『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカーダイジェスト』『ゲキサカ』など各種媒体に寄稿している。近著に『Jの新人』(東邦出版)。

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