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AFC CHAMPIONS LEAGUE (ACL) 2016

2016/02/29(月)12:30

森保 一「クラブの歴史を塗り替えたい」【ACL出場クラブ 監督インタビュー:広島】

  チーム一丸となってリーグ連覇、そしてアジアの頂点を目指したいと話す森保監督。
チーム一丸となってリーグ連覇、そしてアジアの頂点を目指したいと話す森保監督。

――昨シーズンは明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ(以下CS)王者に輝き、FIFAクラブワールドカップ(以下FCWC)で3位に入りました。新シーズンに向けてはどういうテーマ、目標を立てたのでしょうか?

「昨シーズンは12月にチャンピオンシップがあってJリーグで優勝。そこからFCWCで3位に入ることができました。天皇杯でも頂点を目指して戦いましたが、残念ながら12月29日の準決勝でシーズンが終わってしまい、そこからちょうど3週間くらいのオフに入りました。今シーズンに向けてまず考えたことは、私が監督になって2012年、2013年にリーグ連覇した後のシーズンのことです。やはり対戦相手が我々のサッカーを分析、研究してきますし、高いモチベーションで試合に臨んでくる。非常に難しい戦いになります。そしてJリーグとAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を並行して戦う厳しいスケジュールの中で、海外を含めたタフな移動をしながら、アジア各国の強豪チームと対戦しなければならない。ピッチ内外で疲労しながら戦い続ける覚悟も必要です。新しいシーズンに向けて、いろいろとバージョンアップを考えなければとは思いますけど、相手の対策や高いモチベーションを考えると、昨シーズンのクオリティを維持することも簡単ではありません。それは過去の優勝で分かっているので、まずは自分たちがすべての部分でクオリティを上げることが必要です。そこでやっとギリギリの戦いができるくらいでしょうし、メンタル的にタフな戦いになることも準備しなければいけない。ただ、私が監督になって4年間で3度のJリーグチャンピオンを獲得していることで、今シーズンもファン・サポーターの皆さんは大いなる期待をしてくれていると思うので、さらなる高みを目指したいと考えています」

――その中で監督としては具体的にどんな部分を上積みしていきたいと考えていますか?

「昨シーズンは数字だけを見たら、勝点、得点数、失点数などJリーグ歴代最高の成績を出しています。ただ、同じメンバーならバージョンアップを考えられますが、21ゴールを決めて得点ランキング2位に入ったドウグラスが移籍してしまったので、新たな選手を入れて構築していくところから始めなければいけない。あまりバージョンアップを考えるより、まずはしっかりとベースの部分を作り上げていくことが必要だと思っています。総合力を高めるためには、どんな組み合わせでも意思疎通をできるようにしなければいけませんが、“阿吽の呼吸”はそんな簡単に作れるものではないです。でも、難しさを分かっている中で、選手たちには『お互いのイメージを合わせて、息の合ったコンビネーションで崩せるようにしよう』と話しています。各ポジションでポジション争いが激しくなっていますので、選手たちには各自の良さを出すことと、チームコンセプトをしっかり発揮することの両立を伝え続けようと思っています」

――今シーズンは分厚くなった選手層でAFCチャンピオンズリーグに臨むことになります。

「昨年、FCWCにJリーグ王者として開催国枠で出場しましたが、あの大会にはやはりアジア王者として出たいと感じました。もちろん簡単な戦いではないですし、クラブとしても過去3度のACLで最高成績は2014シーズンのベスト16止まり。まずはこの壁を破って、また一つクラブの歴史を塗り替えたい。その上でアジアの頂点を目指していきたいと思っています」

――これまではアジアで思うような結果を出せなかった理由はどこにあると考えていますか?

「そこは間違いなく選手層だと思います。それにスケジュールの難しさもありました。最近はJリーグが日程調整をしてくれることで、タイトな日程の中でもより良いコンディションで戦えるようになっています。この二つが非常に重要です。JリーグとACLの両方で並行して結果を出していくためには、本当に2チーム分の戦力がなければ難しい。アジア王者を狙うのであれば、選手層をしっかりと整えなければならないわけです。我々は潤沢な資金で選手を集めるクラブコンセプトではないので、なかなか難しい部分はありますが、それを言い訳にする気はないです。Jリーグのチャンピオンとして、日本を代表するクラブとして、アジアの高みを目指していかなければいけないと思っています。監督就任から今年で5年目になりますが、我々のスタイルに合った素晴らしい選手が加わってくれていますし、若手も厳しい練習を経て、公式戦で経験を積みながら成長してきました。選手層を厚くすることで、チームの総合力を上げてきたと思っています。昨年末は非常にタフなスケジュールの中、FCWCで毎試合選手を大幅に入れ替えながら、3位という成績を勝ち取りました。それはチームとして大きな自信になりましたし、そういった戦い方でも結果を出していけるというシミュレーションもできたので、自信を持って今シーズンに臨めます」

――FCWCでは結果はもちろん、監督としては試合ごとに起用した選手が活躍してくれました。

昨年のクラブワールドカップでは茶島や皆川の台頭もあり、3位で大会を終えた。
昨年のクラブワールドカップでは茶島や皆川の台頭もあり、3位で大会を終えた。

「そうですね。ただ、広島の試合を見る機会が少ない方には、茶島(雄介)や皆川(佑介)などは認知度が低いかもしれませんが、私からすれば十分に活躍が計算できる選手でした。すでにJリーグヤマザキナビスコカップや天皇杯で結果を出していましたし、Jリーグでの出場経験もあった。その彼らが日本中のサッカーファン・サポーターの方々が注目しているFCWCで活躍してくれたので、今シーズンは彼らが試合に出ても分かってもらえると思います。この表現が合っているかは分かりませんが、名前の売れていない選手がさらにいろいろな部分で全国のサッカーファンの皆さんに知ってもらえるようになればいいですね。そうやって選手としての価値を上げていってもらいたいとも思っています」

――今シーズンはFCWC3位という自信、そして総合力アップなど、近年とは異なった状態でACLを迎えることになるかと思います。

「これまでも日本の代表として何とか高みを目指し、少しでもいい結果を出したいと思って戦っていましたが、チーム力としてはなかなかうまくいかない部分はありました。でも、監督5年目の今シーズンはいろいろな意味で一番チーム力がある年なので、よりいい結果を目指して戦いたいですね」

――それを踏まえて、ACLで勝ち上がるポイントはどこにあると考えていますか?

「アジアでの戦いはメンタル的にもフィジカル的にもタフな戦いに耐えられるかどうかだと思います。技術、戦術に関してはもちろんですが、きれいなサッカーをさせてもらえると思ったら大間違い。厳しく激しい試合をモノにするためのタフなバトルを制していくチームが勝ち上がって行くと思います。今のチームは選手個々がハードワークでき、チーム全体でしっかり結束してバトルすることができる。そういった部分をベースにすることで、どんな状況でもサンフレッチェのサッカーを見せられると思っています。ポイントは「どんな状況でも」という部分です。昨年も2チーム分の戦力があると公言してきて、タフな戦いになればなるほど我々のほうが相手を上回れると思って戦ってきました。そして昨年12月にはずっと口にしてきたことを結果として具現化できたわけです。選手たちにはそこを自信に持ってシーズンに臨んでもらいたいと思っています。

――やはりCSとFCWCで得たものは大きかったと。

重圧を跳ね退けCSで優勝できたことは、大きな成長につながったと話す。
重圧を跳ね退けCSで優勝できたことは、大きな成長につながったと話す。

「どちらも大きかったと思います。リーグ戦は1stステージ、2ndステージを合わせた年間勝ち点1位をつかみ取りましたが、本来であれば優勝して終わりという状況からCSを戦って真のJリーグ王者となることができました。一発勝負で勝たなければ年間を通して積み上げてきた勝ち点1位がすべて水の泡になるというプレッシャーはすごく大きかったですが、その重圧を跳ね退けてCSで優勝できたことは、選手にとってこの上ない自信になったでしょうし、同時に大きな成長につながったとも思っています。そこで心身ともにすべてを注ぎ込んで疲労したところから、FCWCで世界の強豪と戦いました。喜びを持って戦える素晴らしい大会だとは思いますけど、精神的にも肉体的にも非常に疲れている中で選手たちはタフに戦い、チームの総合力で結果を出してくれました。選手を入れ替えながらつかみ取ったFCWC3位という結果で、誰が出てもチーム力が変わらず、その上で勝てるというサンフレッチェのサッカーを表現できましたし、チームとして大きな自信に変えられたと思っています」

――具体的にはどんな部分で成長を感じたのでしょうか。

「とにかく精神的にタフになったと思います。FCWCが終わって一息ついて、そのままモチベーションもフィジカルも上がってこないかもしれないと思っていましたが、天皇杯準々決勝のFC東京戦では先制されながら追いついて延長まで戦い、逆転勝利することができました。あの試合で精神的にもフィジカル的にも本当に選手が成長したなと思いましたね。どんな戦いでも戦い抜けるだけのタフさを身につけた。新チームが始動してからも例年どおりの強度でトレーニングを積んでいますが、厳しい練習にもポジティブに、そして平気な顔で取り組む部分が見受けられます。選手の表情や雰囲気からは、強さやたくましさを感じています」

――今シーズンのACLは、森保監督にとって、そしてサンフレッチェ広島というクラブにとってどんな意味を持つのでしょうか?

目指すは頂点だが、一試合一試合地に足を着けて戦う姿勢は崩さない。
目指すは頂点だが、一試合一試合地に足を着けて戦う姿勢は崩さない。

「リーグ王者として誇りを持って戦いたいと思っています。Jクラブがアジア王者を目指すためにリーグ側もいろいろなサポートをしてくださっていますし、我々を支援、サポートしてくださる方に喜んでいただけるような結果を、より野心を持って目指したい。まずはクラブ最高成績のベスト16を突破して、地に足を着けながら一試合一試合を戦った積み上げで、最終的に頂点をつかみ取れればと思っています。そしてアジア王者としてまたFCWCを戦いたいですね」

――アジア王者になれば、新スタジアム建設の議論を後押ししそうですね。

「それに関しては、いっぱい話してもいいですか?(笑) 今、広島に新サッカースタジアムを建設するという気運は非常に高まってきていると思います。できれば市内中心部、旧市民球場跡地に作っていただけるようにしたい。我々はお願いする立場なので、少しでもいい結果を出して、ホームタウンの皆さんに喜んでもらったり、地域に潤いを与えられる存在でありたいと思っています。そして“おらが街のチーム”として広島市内の中心部でサンフレッチェを応援したいと思ってもらえるようにしたい。昨シーズンのリーグ優勝で気運が一気に高まってきたように思いますので、ACL王者になることで、スタジアム建設を後押ししたい。今シーズンはとにかく皆さんの心を動かすようなタフでアグレッシブな戦いをお見せして、チーム一丸となってリーグ連覇、そしてアジアの頂点を目指したいと思っています」

[文:青山 知雄]

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