サッカー中継などで最近よく耳にするのが「DOGSO」(ドグソ)という言葉です。耳慣れないこの言葉は、いったいどういった事象を指すのでしょうか。
DOGSO(ドグソ)とは
DOGSOとは「Denying an Obvious Goal Scoring Opportunity」の略語で「決定的な得点機会の阻止」という意味になります。
D=Denying(阻止する)
O=Obvious(決定的な)
G=Goal S=Scoring(得点する)
O=Opportunity(機会)
DOGSOの条件を満たすファウルによって決定機を阻止した場合、反則した選手には、原則レッドカードが提示されます。
DOGSOという言葉が生まれたきっかけは、1980年頃が発端となります。当時、相手の得点機会を妨げるために意図的なファウルが増えてきたことから、1990年のイタリア・ワールドカップから決定的なチャンスを阻止したファウルに対する罰則規定が設けられました。
その後、2007年に「決定的な得点の機会の阻止」という項目が独立し、2018年には日本サッカー競技規則にDOGSOという言葉が記載されました。
そしてVAR(ビデオアシスタントレフェリー)の導入によって、「決定的な得点の機会の阻止」をレフェリーの主観ではなく、映像で確認できるようになりました。ファンやサポーターもDOGSOか否かを議論する機会が増えたことから、サッカーでは一般的な言葉として使われるようになっています。
DOGSO(ドグソ)の4要件
決定的な得点の機会の阻止とは具体的にはどのようなシーンを指すのでしょうか。DOGSOに該当するプレーかどうかを判断する条件は次の4要件をすべて満たした時となります。
要件1:反則とゴールとの距離
反則を犯した場所とゴールの距離が近い場合は、DOGSOの要件を満たすと判断されます。一般的にはペナルティエリア内、ペナルティエリア付近で、目安としてはゴールまで25m以内の距離で決定的な得点機会を阻止するファウルを犯した場合にDOGSOに該当されます。
ただし、具体的な距離の基準はなく、ペナルティエリアから少し離れた位置での反則でも、DOGSOが適用されるケースもあります。例えばハーフウェーライン付近であっても、ボール保持者の前方にDFがおらず、ゴールキーパーと1対1となる場面では、DOGSOが適用される可能性は高いと言えます。
要件2:プレー全体が相手ゴールに向かっているかどうか
攻撃側のプレーがゴール方向に向かっていることが、2つ目の要件となります。したがって、ポストプレーなどで攻撃側がゴールに背を向けた状態でのファウルは得点機会の阻止とは判断されず、DOGSOの適用外になります。ただし、身体の向きだけですべてを判断するのではなく、ゴール方向にベクトルが向かっていると判断されれば、たとえ身体が横に向いた状態(ゴールキーパーをかわそうとして一時的に身体が横に向くプレーなど)であってもDOGSOの要件が満たされることになります。
要件3:守備側競技者の位置と数
守備側競技者の位置と人数によっても、DOGSOは判断されます。具体的には守備側が数的不利に陥っていたり、守備ブロックが崩れている時など、ディフェンス側が不利な状態であることもDOGSOの要件となります。仮に人数が揃っていたとしてもプレーに関われるポジションにいなければ、その状態でファウルを犯すと決定的な得点の機会の阻止とみなされます。
要件4:ボールをキープできる、またはコントロール出来る可能性
ファウルがなければ攻撃側がボールをキープ、またはコントロールできる可能性があった時も、決定機とみなされDOGSOの要件を満たしていると判断されます。トラップミスなどでボールをコントロールできていない、パスが上手くつながらずボールに追いつけない状態などは、決定機とはならない可能性が高いため、DOGSOと判断されることはありません。
DOGSO(ドグソ)とSPA(スパ)は何が違う?
要件1:反則とゴールとの距離
「DOGSO」と似た意味を持つ言葉に「SPA」があります。「SPA」は「Stop a Promising Attack」の略語で、「大きなチャンスとなる攻撃の阻止」という意味になります。
S=Stop(阻止)
P=Promising(大きなチャンスとなる)
A=Attack(攻撃)
SPA(スパ)とDOGSO(ドグソ)の違い
「DOGSO」が「決定的な得点の機会を阻止する」ファウルに適用されるものであるのに対し、「SPA」は「大きなチャンスとなる攻撃の阻止」で、DOGSOの4要件全てを満たしていない場合のファウルが、「SPA」となります。
SPA(スパ)とDOGSO(ドグソ)の違い
DOGSOに該当するファウルを犯すと、原則的にレッドカードが提示されます。ただし、主審がアドバンテージを取った場合は、結果的に「決定的な得点の機会」を阻止できていないためレッドカードとはならず、反スポーツ的行為としてイエローカードが提示されることになります。
またペナルティエリア(PA)内でのDOGSOに関しても、レッドカードとならない可能性があります。これまではPA内でのDOGSOは「PK」「退場」「次節出場停止」と3つの罰則が与えられ、「三重罰」と呼ばれていました。しかし、相手に得点機会を与え、退場により数的不利に陥り、さらに次節に出場できない措置は厳しすぎるという意見があり、現在は「三重罰を緩和する」ルールが存在しています。
PA内でボールに対してチャレンジしたファウルであれば、PKは変わりませんが、レッドカードではなくイエローカードになります。ただし、ボールに対するチャレンジではなく、相手選手を掴むなど意図的なファウルの場合は、「三重罰」を受けることになります。
SPA(スパ)に該当するプレーへの罰則は?
DOGSOの4要件のうちひとつでも満たさなければSPAと判断されます。そしてSPAに該当するファウルは、原則的にイエローカードとなります。ただし、DOGSOと同様にレフェリーがアドバンテージを取った場合は、イエローカードは提示されません。またPA内のファウルに関しても軽減措置があり、PKは与えられるものの、イエローカードは提示されません。
まとめ
VARの導入により、該当シーンが映像で確認できるようになりました。レッドカードやイエローカードは、試合の行方を大きく左右するものです。このプレーは「DOGSO」なのか、「SPA」なのか。それともカードが出ないプレーなのか。「DOGSO」「SPA」の要件を理解していると、試合観戦がさらに面白くなるはずです。
これを見ればDOGSOがわかる!