４カ月前とは好対照だった。当時、リーグ戦を０−３で落とした群馬・秋葉忠宏監督は悔しさを押し殺しながら会見に臨んでいたが、天皇杯２回戦の栃木との「北関東ダービー」を制したこの日、その表情はひどく誇らしげだった。
「我々らしくアグレッシブにやり続けたことで、最後の最後に栃木がＰＫのシーンで足にきて、キックがぶれたのかなと」
球際などベースの部分で劣った前回の反省から、そこを重点的に修正して臨んだ一戦で、指揮官の期待に応えた選手たち。最後までボールを動かし続け、群馬本来の攻撃的な姿勢を示したことが勝利を引き寄せた。ここ数年、勝ち切れなかった２回戦を突破し、３回戦では浦和に挑む。

一発勝負のヒリヒリとした緊張感。そのスパイスが、「北関東ダービー」の歴史上類を見ない死闘の呼び水となった。試合序盤から果敢にシュートを放ち、攻撃を完結させた群馬が優勢に試合を運び、１８分に加藤弘堅が直接ＦＫから栃木ゴールを脅かした。対する栃木は４バックを敷いた群馬の前にてこずり、ボールを運べずに単調な攻撃に終始した。それでも、立ち上がりから良い形を作っていた左サイドから攻め入り、３１分、３６分と立て続けに瀬沼優司がゴールに迫る。

逸機こそしたものの栃木は流れを引き戻し、後半に入ってからも次々と決定機を作る。だが、決め切れなかったことに加え、群馬が執拗に４−１−４−１の１ボランチの脇を突き続けたことで、イニシアチブを握るには至らなかった。一方の群馬もボールを動かし、栃木のミスに乗じたり、セットプレーからゴールを狙うも粘り強い守備に阻まれる。

９０分では決着が付かずに、延長戦にもつれ込んでからも天秤は両者に等しく傾いた。ノーガードの殴り合いとなった展開の中で雌雄を決する機会は巡ってきたが、栃木のＧＫ鈴木智幸と群馬のＧＫ富居大樹の両守護神の好守が光り、結局１２０分間でも白黒ははっきりしなかった。
スコアは動くことなく、トーナメントの勝者はＰＫ戦の結果に委ねられることに。先行の群馬が１番手の宮崎泰右から３人全員が成功したのに対し、栃木は３人連続して失敗するよもやの事態に陥り、リーグ戦のリベンジを群馬に果たされてしまった。

「どこかでやり返さないといけないと思っていた。その思いが今日、出せて良かった」
永田亮太が抱いていた強い思いを、群馬の選手たち全員が共有してことは想像に難くない。２度と同じ場所で、同じ相手には負けられない。その激しい感情が最も表れていたのがセカンドボールワークで、ベースの部分で勝ったことが勝因となった。リーグ前半戦は下位に沈んだが、継続的に今回のようにファイティングポーズを取り続けることができれば、下から這い上がって行けるはずだ。手にした感触を忘れることなく、リーグ後半戦を迎えたい。

リーグ前半戦の最終節を勝利で飾った栃木は、天皇杯２回戦も勝ち進み、リーグ後半戦に臨む青写真を描いていた。しかし、思惑通りに事は運ばなかった。決定機を逃し続けたことが、その要因として真っ先に挙がる。特に当たりが止まっているエース瀬沼は、ことごとくゴールに嫌われ、なかなかトンネルから抜け出せない。ぶち当たっている壁を打破しない限り、チームも上昇気流に乗れないだろう。自分で解決するしかない問題だけに、かなり精神的にはしんどい作業になるが、ここを潜り抜けられればまた一回り大きくなれるはずだ。「昨年に比べて試合に絡めている」とポジティブに捉えられているうちに、チャンスが何度か訪れているうちに、この不振から抜け出して栃木をグイグイ上へと押し上げたい。

以上

2014.07.13 Reported by 大塚秀毅