夜7時キックオフだった第2節以来のホームゲームに県立カシマサッカースタジアムが紅く染まった。集まった観衆は32,099人。近年、浦和戦以外で3万人を越える来場者数が3万人を越えたのは、2010年5月1日のG大阪戦以来のこと。たくさんの視線がピッチに向けられるなか、両チームが白熱した試合を展開した。
注目を集めたのはやはりフォルラン。どういうプレーを見せてくれるのか、観客だけでなく、対戦する鹿島の選手たちも探りながらの試合開始だったが、さすがワールドクラスというプレーよりも動きの少なさが目立つ。スピード感あふれるC大阪の攻撃リズムに一人だけ乗れていない感じが漂っていた。それでもC大阪の攻撃は迫力があった。長谷川アーリアジャスール、山口蛍のフィジカルは強く、杉本健勇の高さがポイントになり、南野拓実が前を向いて積極的に仕掛けていく。すると19分、鹿島が不必要なファウルをおかしたことでFKを得ると、そのクリアを山下達也が奪い、最後は長谷川アーリアジャスールが逆サイドに突き刺す強烈なミドルシュートを打ち込み先制点をあげる。
第3節まで無失点で来ていた鹿島にとっては初めて与える先制点。しかも、相手はリーグ戦6連勝中のC大阪。DFのミスから失点したことで自らビハインドを背負うことになってしまった。
しかし、ここから鹿島が圧倒的に攻める展開が続くようになる。「チーム全体でコンパクトにやる狙いがあった」(長谷川)C大阪は、自陣に引いてカウンターを狙うようになる。鹿島はダヴィを起点にして相手DFラインの裏を狙う攻撃を仕掛けていくが、これを山下がダヴィと激しく体をぶつけ合いながら防ぐ。山口の早いカバーリングもあり、ダヴィがチャンスを迎えた場面は少なく、狭いサイドに追いやられることが多かった。
後半になると鹿島のトニーニョ セレーゾ監督が動く。豊川雄太と土居聖真を下げ、本山雅志とジャイールを投入し状況の打開を図る。しかし、本山は切れ味鋭いドリブルと絶妙なポジショニングで攻撃のタクトをふるったが、ジャイールはコンディションがまだ整っていないのか足を止めてのプレーが多く、サイドに開いてスピードを生かした突破という持ち味は見られなかった。「攻撃に関してはボックス付近までは運ぶんだけれども、そこからの崩しがうまくできていない」というセレーゾ監督の分析通り、あと一歩の精度が足りず、攻めている割には決定機をつくれなかった。
逆にカウンターから何度となく相手ゴールを脅かしたのはC大阪。曽ヶ端準のセービングによってなかなか追加点を奪えなかったが、86分、柿谷曜一朗が左サイドを崩しゴール前に待っていたフォルランにお膳立てのパスを送ると、これをフォルランが難なく沈め貴重な追加点となるJリーグ初得点を決めた。
鹿島としては、追撃しているなかでの失点。ヤマザキナビスコカップでも同様に追加点を奪われたことで試合を苦しくしただけに悔いが残る失点だった。
「1-0でいくことが相手のプレッシャーにもなるし、勢いをもって攻めているところで取られてしまった。こっちが先に決めていれば流れが変わったけれど、それにしても簡単にやられすぎた。厳しさがまだまだ足りないと思う」
ゴール前で獅子奮迅の働きを見せた曽ヶ端は怒りを押し殺しながらコメントを残す。どんなときでも明るさを失わない昌子源も、さすがに失点に絡んだショックを隠せず「F東京戦、このC大阪戦は良い勉強になった」と静かな口調で語った。
1年間、様々な経験を積み重ねることで若いチームは成長していく。大事なのは同じ過ちを何度も繰り返さないことだ。
以上
2014.03.24 Reported by 田中滋
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