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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【J1:第32節 名古屋 vs 柏】レポート:劇的な幕切れを呼んだのはプロフェッショナルたちの意地と矜持。伏兵・ダニエルのゴールで名古屋が柏とのシーソーゲームを制し、連勝!(13.11.24)

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第5節での前回対戦同様に互角の勝負となった試合に、前回とは違って勝敗がついたのは何故か。それは一言でいえば「絶対に勝ちたかった名古屋」と「来季のために内容重視だった柏」の対戦だったから、と説明できるのではないか。

試合展開は実にわかりやすいものとなった。前後半それぞれの前半で名古屋が得点し、後半に柏が追いつく。この流れを生んだ理由もはっきりしている。
まずは柏の3バックシステムの未完成な部分が、名古屋の攻撃を容易にしたことである。柏の栗澤僚一曰く「今はまだ4バックの相手に対して守備がはまらない」。この隙を見逃さなかった名古屋は流動的なポジションチェンジを交えて次々と柏ゴール前へ侵出。19分と60分の小川佳純のゴールはいずれも名古屋の流動的な攻撃がもたらしたものだった。まず前半は下がり目のポジションを取った藤本淳吾からのサイドチェンジをワントラップで収め、DFの股間を抜いてゴール左隅に流し込んだ。柏のDFは人数が足りていたにもかかわらず、素早い展開に後手を踏んだ。後半のゴールは左サイドのスローインから玉田圭司、小川、永井謙佑と絡んでの崩しにやはり対応が遅れ、最後は小川がバーに当てながらも豪快に蹴り込んだ。小川はこれで今季9得点。2008年以来の2桁得点に王手をかけている。

しかし名古屋が順風満帆に試合を進めていたかといえばそうではない。小川の2ゴール以外にも多くの決定機を作りながらも、90分合計で3得点しか奪えていないのがその理由だ。田中マルクス闘莉王は「2点差にできれば計算できた試合」と振り返ったが、挽回を図る柏に対し効果的なカウンターを幾度となく繰り出しながらも、リードを広げることができなかった。それでも楢崎正剛は「今はそれで嫌な展開になるというよりは、チャンスを作れていることの方がポジティブ」と語ったが、当然柏からしてみれば「これはいけるかなと思っていたところもあって、今日はもう1点取れそうだなって雰囲気もあった」(増嶋竜也)となる。果たして前半は41分に左サイドの崩しから太田徹郎が同点ゴールを突き刺し、再びリードを奪われた後半はDFのクリアを玉田が処理ミスし、これが工藤壮人への絶妙のスルーパスとなってしまいあえなく失点した。2点目は不運な失点と言えばそれまでだが、それまでに逃したチャンスの数を思えば、流れを保持しきれなかった結果とも言えた。

それでも名古屋が勝利できたのは、冒頭で述べたように「絶対に勝ちたい」モチベーションが、チームに満ちていたからだ。その牽引役となったのが田中隼磨であったことは言うまでもない。今週、まずは新聞報道で来季の契約更新がないことが報じられ、その後自らのブログでも報告。試合前日に左サイドバックの阿部翔平とともに、クラブからも正式に契約満了が発表された。一報を受けた水曜日には「加入した時に『名古屋に骨を埋めるつもりでやる』と言った、その決意が果たせなかったことが申し訳ない。すべては自分の力のなさ」とクラブとサポーターへの愛着を口にしていた男は、前半4分の柏の攻撃を防ごうとゴール前でスライディングした際に左すねを強打。治療の後にピッチに戻り86分までプレーしたが、実はポストとの激突で10針を縫う重傷を負っていた。「骨まで見えていた」とは本人の談。しかし動きのキレが鈍っただけで、持ち前の運動量は平均値程度を保っていたことには感服するばかりだ。「この試合を合わせて3試合しかこのユニフォームを着れない。自分から脱ぐなんてできなかった」という鉄人に引っ張られるようにして、この日の名古屋はハードワークに満ちた戦いを展開した。オーストラリア代表の遠征から中2日でスタメン出場を果たしたケネディも運動量豊富に前線を動き回り、巧みなポストプレーでチームをアシスト。2トップを組んだ永井謙佑はまたも無得点に終わったが、瞬足を活かした守備での貢献度は非常に高かった。

そして試合を決めたのは、バックアッパーとしての責務を粛々と果たしてきた、プロフェッショナルDFだった。2度目のリードを奪った後の72分にピッチに投入されたダニエルは、本来のポジションではないボランチでプレー。いわば“ストッパー”としての役割を担っていたが、この日は攻撃で魅せた。2−2で迎えた後半アディショナルタイム、右サイドからのスローインを受けドリブルで前線へ向かうと、玉田に縦パスを当ててさらに前進。玉田がDFをかわそうと押し出したボールに突進し左足を振り抜くと、グラウンダーのボールがゴール右隅に吸い込まれた。いまだクラブからの正式リリースはないが、試合後の選手コメントから今季限りの契約満了が推測される助っ人の、名古屋移籍後初ゴールが決勝点に。あまりに劇的な得点には、GKの楢崎までもが前線までダッシュで祝福に駆け寄るほどだった。「神様はいるんだなって」(闘莉王)。試合はそのまま3−2で名古屋が勝利。連勝で順位を1つ上げ、1桁順位を照準に収めた。

ここで触れておきたいのが、「来季のために内容重視だった柏」という点についてだ。栗澤や増嶋は結果への口惜しさは隠さなかったものの、内容面には好感触を得ていると発言。ヤマザキナビスコカップを獲り、リーグ戦や天皇杯ではもはや“終戦状態”にあるため、試合の力点が結果重視である必要は確かにない。だが彼らに落ち度はないが、その思いの重さの差が、勝敗を分けたようにも感じられる。2得点目を挙げた工藤壮人などは危機感たっぷりのコメントを残したが、それもまた重視すべき要素。残り2試合での彼らの振る舞いにも注目だ。

一方で指揮官と主力の大刷新が噂される名古屋は、年代別代表さながらに現チームでの戦いで何かを刻もうとしている。次節はホームでの今季最終戦(11/30@豊田ス vs甲府)。ストイコビッチ監督たちが本拠に別れを告げるメモリアルゲームとなる。クラブの一時代を築いた「ピクシー・チルドレン」たちの集大成を見せるべき舞台だ。
「終わりが近づいてるんだなという気持ち。それでも来週の豊田スタジアムでの試合も含めまだ2試合ありますし、それが楽しみな部分もあります」
田中隼磨同様に契約満了を発表した阿部翔平の言葉は、名古屋を取り巻くすべての人々の総意である。

以上

2013.11.24 Reported by 今井雄一朗
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