ついに2013年J2のレギュラーシーズンは最終戦を迎える。チームを去る選手も発表され始め、終わりに向かう雰囲気が出てくるが、横浜FCと水戸の両チームにとっては、シーズン終盤に掛けてつかんだ自信を次の成長に結びつける、新たなスタートの試合とする必要がある。ともに14勝13分14敗の勝点55で並ぶ両チームがその自信をピッチにより多く表現し、シーズンでの勝ち越しという結果で来シーズンにつなげるための大事な試合となる。

横浜FCは、昇格プレーオフ進出へのぎりぎりの戦いの中で大事な試合で勝点を落としたものの、シーズン後半戦は安定した戦いを見せた。特に第31節のG大阪戦から7試合負け無しを続け、昇格プレーオフ進出の望みが絶たれた後の第40節、第41節のアウェイ2連戦で連勝を果たすなど、チームとしての地力は増してきている。この試合は出場停止となるが、チームの心臓として動き続けた寺田紳一は「ビルドアップの部分は昨年よりも意識が高まってきた。さらに、昨年はボールを持っていても相手が怖くない場面が多かったが、最近は機を見て、一本で狙えるなら繋がないで怖いプレーを選択することが出てきた」と語る。また、高地系治は「悪い時期がずっとあったが、それを全員で乗り越えてちょっとずつでも変わってきていると思う。試合に出ている選手も出ていない選手も、他人事ではなく自分のことに置き換えて取り組むことが出来てきている」とチームとして苦境を乗り切る強さが出てきたと振り返った。J1昇格プレーオフに進出した昨年と比べ勝点も順位も下となったが、昨年にない手応えも感じていることは確か。「良くなってきているので、本当はもっとやりたかった。全く同じメンバーでサッカーはできないと思うが、その中で個人個人が課題を見つけていればさらに成長できる」（寺田）というように、最後を3連勝で締めることがその手応えを将来の横浜FC、そしてサポーターに還元する唯一の道となる。

対する水戸は、前節の京都戦（11/17＠Ksスタ）で持ち前の激しい寄せと豊富な運動量で京都のストロングポイントであるパスワークを寸断して、J1昇格プレーオフに進出する相手に対して堂々たる勝利を挙げた。守備面だけでなく、鈴木隆行のポストプレー、難波宏明の裏へのスプリント、そして橋本晃司のアイディアあふれるプレーがチームに攻撃面でも躍動感を与え続けた。決勝点となった78分の2点目のゴールは左サイドバックの輪湖直樹からのクロスを右サイドバックの石神幸征が走り込んで決めたもの。終盤でも衰えない運動量だけでなく、チーム全体に自信がみなぎっていることの証明だ。移籍に伴う契約の関係で、難波はこの試合に出場できないが、チーム全体が難波のスピリットを体現している。難波不在によるマイナスはないだろう。さらに、すでに柱谷哲二監督の続投も決まっている。前節の試合後には「（今季）できたことはある程度イニシアチブを取るゲームが毎年ちょっとずつ増えている。できなかったことは点を取れなかった」と語った。だからこそ、この試合ではゴールに直結するプレーを増やし、ゴールを挙げること。それが、来シーズンの水戸の躍進に繋がっていく。

試合展開としては、まずは京都と同様パスを繋ぐ横浜FCの攻撃と水戸の激しい守備の攻防が1つのポイントとなる。水戸の守備が機能すれば、京都戦の再現がなされる。一方で、高地が「うちがしっかり繋いでくるのは相手も分析しているわけだし、繋げないようにするためにガツガツきている。その辺はうまく対応しないといけないし、裏に蹴ることが悪いことではないので、状況判断をもっと良くしたい」と語るように、横浜FCが臨機応変な戦いを見せることでチーム同士の駆け引きに持ち込めば、また別の展開が見えてくる。前回の対戦（第11節 4/28＠Ksスタ）では、横浜FCがロングボールも織り交ぜることで早い時間に2点をリードした。ただ、後半は水戸の勢いが勝りドローに持ち込むことに成功している。「水戸の自信と勢い」対「横浜FCの状況判断」は、両チームが積み上げそのものの激突となる。

J2最終節は、熾烈なプレーオフ争いが興味を引くが、ニッパツ三ツ沢球技場で行われるJ2における横浜FCと水戸との、実に38回目を数える歴史ある対戦は、まさに両チームの意地のぶつかり合いとなる。見応えのある試合になることは必至。今年の総決算、そして来年へ続く希望を見届けたい。

以上

2013.11.23 Reported by 松尾真一郎