１３時からのゲームで３位の京都が敗れたため、試合開始を待たずして神戸の２位以内が確定。キックオフ直前に来シーズンのＪ１復帰が決定（※）し「モチベーション的に非常に難しかった」と試合後の安達亮監督は正直に心境を発していた。逆に札幌は同じく１３時からのゲームでひとつ上の順位にいた松本が敗れていたが、「自分達はもう勝つしかない立場。他チームの結果は知っていたけど、気にはならなかった」と奈良竜樹。双方がそれぞれ異なる心境でゲームへと入っていった。

試合展開としては、拮抗した形でスタートしたと言っていいだろう。攻撃に関してはどちらもマイボールを大事にするスタイルで、守備に移った場合には素早く４−４−２のスリーラインでブロックをセットする。ただし、ボールの動かし方については違いがあり、札幌のほうはキープ力のある前田俊介が時間を作ってグループでパスを回すのに対し、神戸は中盤の底でプレーするエステバンにボールを集め、この選手が配球をしていくやり方だ。

そうして立ち上がりは互いに攻め合いながら時計の針を進めていたのだが、ここで展開に影響を与えたのが、冒頭で記した心理面だろう。「選手も人間ですし、昇格が決まった１時間後くらいのキックオフだったのですごく難しかった」と安達監督が言えば、「いつもの試合とは少し違う感じだった」と相馬崇人も口にした。言うまでもなく、神戸はこの試合も勝つために力を尽くしていたことは間違いない。ただし、Ｊ１昇格というＪ２においてはある種、優勝よりも重い意味を持つミッションを果たした直後とあっては、安堵感を払拭してプレーするのは相当に難しいのだろう。

そうした心理状態は当然、試合展開にも影響してくる。プレーオフ出場圏である６位以内に入るべく積極的に前へとボールを運ぶ札幌に対し、神戸のほうはエステバンがボール保持をし、顔を上げても動き出す選手の数が若干少ない。そのため攻撃のスピードアップをすることができず、攻撃を組み立て直しては手詰まりになる場面が目に付いた。

攻撃を作り直す回数が増えるにしたがって、エステバンのポジションは徐々に深くなっていく。にも関わらず、神戸のオフェンス陣は高い位置に張ってパスを待つばかりなので、結果、全体が間延び。中盤にスペースを生むと、札幌の前田や深井一希、レ コン ビンらにミドルシュートを狙われる回数が増えていく。そうして３７分、河合竜二が放ったミドルをブロックした北本久仁衛がハンドの反則を取られてしまい、ＰＫ。これをビンが冷静に決めて札幌が先制点へと結びつけた。

１点のビハインドとなったことで、後半の神戸は運動量の上がらないポポ、マジーニョを退け松村亮、杉浦恭平という若手を同時投入し状況打破を試みるも、松村がすぐに足を痛めてしまうアクシデントもあって効果的には機能せず。札幌も疲れから足が止まりつつあったタイミングだけに、村松の負傷は非常に痛かったことだろう。空中戦に圧倒的な強さを持つ田代有三も投入されたが、これも有効手段にはならず。後半中頃あたりの時間帯は、札幌がディフェンスラインを揃えられない場面も増えていたため、神戸もチャンスがなかったわけではない。それだけに、選手交代で攻撃を活性させられなかったのは悔やまれるところだ。そして１−０のスコアのまま、タイムアップの笛を聞いた。

この試合の結果、札幌は６位との勝点差は３。前節は千葉、今節は神戸と上位チームを立て続けに撃破した勢いを感じるものの、残り２節を残して３差というのは、依然、ひとつも落とせない状況には変わりない。一方、敗れた神戸のほうは、あらためて言及するまでもないが２位以内が確定した。だが、「新しい目標はもうハッキリしています」と指揮官が発したように、新たに目指すのは順位表の最上部。首位・Ｇ大阪との勝点差は４である。

両チームとも、現状の立ち位置を考えると、それぞれの目標を果たすには残り試合を２戦２勝が必須と見ていいだろう。次節、札幌は敵地で岐阜と、神戸も敵地で群馬と対戦する。シーズン終盤はすべてのチームが全精力を挙げて勝点を奪いにくるだけに、現時点での順位はもはや９０分の中では大きな意味をなさない。どちらも順位が下のチームとの試合になるが、ホンの少しも気が抜けない戦いとなるはずだ。

以上

※Ｊリーグ理事会の承認をもって最終的に確定します。

2013.11.11 Reported by 斉藤宏則