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【J1:第13節 鳥栖 vs 横浜FM】レポート:勝って得るものあり。敗れても得るものあり。考え抜かれたFKで、今季一番のアグレッシブさを見せた試合の決着をつける。(13.05.26)

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試合中に見せた一本のFK。
時間にしてわずか数秒のものなのだが、その中に含まれていたものはとてつもなく大きなものだった。
90分間の試合を左右しただけではなく、今季の好調さを証明し残り試合に勢いをもたらした。
そして、そこに関わった選手たちが、さらに大きく成長するアイデアとテクニックも含まれていた。
中村俊輔の蹴った77分のFKには、それまでに経過した試合時間と彼自身の経験から生まれたアイデアとテクニックが織り交ざった見事なものだった。

77分、鳥栖ゴールほぼ正面の25m地点でのことだった。
中村俊輔は、蹴る直前にマルキーニョスと富澤清太郎に声をかけた。かけた内容は、蹴り入れるボールの軌道と位置について。細かくは語らなかったが、少なくともそれまでに蹴り入れていたボールとは違うものであると伝えたそうだ。
彼ほどのテクニックを持つ選手であれば、ボールを自在に繰ることはたやすいことであろう。
しかし、ボールを受ける側にしてみれば、どんなボールが来るのかは予測がしづらいものである。
富澤清太郎はこの時の状況を「ボールの軌道やどこに蹴ってくるのか、あとはフォームを見て自分なりに読みながら・・・」走り込んだそうである。日頃から一緒にプレーし、日々のトレーニングで積み上げた経験で共有できたプレーであることは間違いないし、それがチームの実力であり、勢いなのであろう。
それだけ、この一本のFKの持つ意味は大きなもので、そこから得られた一勝は、「本当に大きな勝利」(樋口靖洋監督/横浜FM)だった。

中村俊輔の言葉を借りて振り返りたい。
「ボールに対して、まっすぐに走った。そうすることで、鳥栖のゾーンDFの動きが止まる。その止まったDF陣の前に、曲がるボールではなくまっすぐに入るボールを入れた。そうすれば、先に(富澤清太郎が)触れるし、先に触ることができれば、コントロールできる・・・」とのことだった。
あとは、富澤清太郎が後ろにボールをそらすだけだった。
鳥栖DFにもGKにも、高くはない軌道が読みづらかっただろうし、まっすぐ入れられたことで対応できる時間もなかった。
時間にしてわずか数秒のものなのだが、直前に蹴ったFKから瞬時に相手の動きを読み取り、次に生かすテクニックとアイデアが詰まったFKだった。

この一点が、今節の90分の中で決まった唯一の得点であり、決勝点である。
入れられた鳥栖は、これでリーグ5連敗となった。
しかし、スタジアムに集まった13197人のファンやサポーターから大きな拍手と声援を試合後に受けていた。
それは、今季一番のアグレッシブさを見せたことへの期待を込めたものに違いない。
その期待を抱かせた大きな要因に、多くの経験を積んだ一人のDFの判断と統率力が生かされていた。
この日、6試合ぶりのリーグ戦出場となった小林久晃は、一週間かけて横浜FM対策を考えていた。
「(中村)俊輔が持ったらマルキーニョスが裏に走るだろうなということもあって、あまり(DFラインを)上げすぎないことが良いかとも考えていた。でも、そうなると中盤のスペースが大きくなってきつくなるだろうし、(これまでの)いい時はDFラインが高く守れているので、勇気をもって・・・」最後までDFラインを高く上げて、横浜FMの攻撃を抑え込んでいた。
シュートは14本も打たれはしたが、「今日は何本シュートを打っても入る気がしなかった」とFWマルキーニョス(横浜FM)に言わしめるだけのプレッシャーをかけていたのである。この試合だけで、8本のシュートを放ったマルキーニョスにである。
鳥栖にも、冷静な判断力と統率力を持ったベテラン選手の存在が光っていた。
敗れはしたものの、今後の戦い方の指標を示した試合だったといえるだろう。

これから、一か月間の中断期に入る。
勝った横浜FMは、今季の好調さをさらに増幅させる期間となるだろう。
敗れた鳥栖も、今後の指標を手に入れたことで、立て直す期間となるに違いない。
互いに見せた今季一番のアグレッシブな試合は、勝者にも敗者にも大きな意味をもたらせた試合だった。

ボールを保持している方が攻撃側で、アドバンテージを有している。
ましてや、セットプレーでは相手のプレッシャーを受けずにボールを動かすことができる。
ゴールに近ければ近いほど、守備側にはプレッシャーがかかり、得点(失点)の可能性が高くなる。
相手にセットプレーを与えない方が良いのはわかっている。
しかし、最後のところで止むを得ずファールをしてでも止めないといけない場面もある。
なぜ、そこまでして止める必要があるのだろうか。
サッカーは、ゴールに近づけば近づくほど、得点(失点)の可能性が高くなるスポーツだからである。

以上

2013.05.26 Reported by サカクラゲン
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