ともに2節まで1勝1分けだった両チーム。無敗を維持して2勝目を挙げたのは、この試合がホーム開幕戦となった鳥取だった。立ち上がりに先制されたものの、すぐに追い付くと、後半に2得点を挙げ、1節に続く逆転勝利を収めた。

立ち上がりの3分、最初にチャンスを迎えたのは鳥取。久保裕一のスルーパスに反応した住田貴彦が倒れながらもシュートを狙ったが、水戸ＧＫ本間幸司が勇敢な飛び出しを見せ、足元に滑り込んでキャッチした。この際に両者が激しく激突したため、試合は3分あまり中断。治療後に2人ともプレーを続けたが、このアクシデントがのちに、試合の行方を左右することになる。

強い風が吹く中で風上に立った水戸は11分、先制点を奪う。ＧＫ本間が自陣でのＦＫから前線にロングボールを送ると、鳥取守備陣の対応が一瞬遅れたスキを突き、ペナルティーエリア内でフリーになった鈴木隆行が右足で蹴り込んだ。鈴木は前節の決勝点に続き、2試合連続のゴール。これで主導権を握った水戸は、その後も本間のパントキックから、スペースに抜け出した難波宏明が惜しいシュートを放つなど、風上から効果的な攻めを見せていた。

しかし、徐々に落ち着きを取り戻した鳥取が、21分に同点ゴールを奪う。スローインから巧みな連係で右サイドを崩し、尾崎瑛一郎が久保に短いセンタリング。「尾崎さんがしっかり崩してくれていたので、ニアサイドに打ち込めば入ると思った」と振り返る久保が、ダイレクトで右足を振り抜き、イメージ通りにニアサイドの上を破った。

このゴールの直後、水戸ＧＫ本間が、3分の接触プレーの影響でプレー続行不可能となり、笠原昂史との交代を余儀なくされた。突然のＪリーグ・デビューとなった笠原は、懸念された試合への入りはスムーズだったが、試合後に柱谷哲二監督が「われわれの守備の柱が抜けてしまったことは、とても大きかった。想像した以上にチームとしてダメージがあった」と振り返ったように、最終的に水戸に大きな影響を及ぼすことになる。

鳥取の同点ゴールから後半の半ばまでは、両チームともボールを奪った後のパスミスが多く、なかなか決定機を作ることができなかった。しかし、小村徳男監督の「風上を生かして（相手の）背後を突いていこう」というハーフタイムの指示を受け、ロングパスを多用していた鳥取が、69分にその形から逆転ゴールを奪う。横竹翔が前線にロングパスを送ると、住田と競り合いながら追走していた水戸の輪湖直樹の頭にボールが当たり、飛び出していたＧＫ笠原と入れ替わる形になって、住田が無人のゴールに難なく蹴り込んだ。「今週のテーマだったコミュニケーションの不足が失点につながった」と柱谷監督が語ったように、水戸にとっては手痛い連係ミスだった。

その後、水戸は選手交代と布陣変更で同点ゴールを狙ったが、風下の影響でボールを思うように前に運べないこともあり、チャンスを作ることができない。逆に鳥取は、４分のアディショナルタイムも終わろうかという終了間際、カウンターから奥山泰裕が左サイドを破り、パスを受けた久保がシュート。これは当たり損ねになったが、86分から交代出場していた岡本達也に渡り、反転から左足で蹴り込んでダメ押しの3点目を奪った。今季水戸から加入した岡本は、古巣相手の移籍後初ゴール。結局、このゴールがラストプレーとなり、鳥取が3―1で勝利を収めた。

水戸は、輪湖が「（試合への）入りは今までで一番良かったし、点を取った後も前から行けて、良い流れを作ることができた」と語った通り、理想的な展開に持ち込みながらも、それを持続することができず、今季初黒星を喫した。本稿締め切り時点で詳細は不明だが、試合中に救急車で病院に向かった本間の状態も不安材料。まだシーズン序盤とはいえ、目標に掲げるＪ1昇格に向けて、チームの総力が試される踏ん張りどころと言えそうだ。

鳥取は開幕からの勢いが衰えず、この日も序盤の劣勢をはね返して勝利をつかんだ。全体が下がり過ぎて押し込まれる時間帯もあるなど、課題も見られるものの、久保が「一戦一戦、みんなが成長していると思う」と語る通り、攻撃に移るときの切り替えの早さなど、少しずつ良くなっている部分も多い。何より結果が出ていることで、チーム全体が大きな自信をつかんでいる。6500人近い観衆が詰めかけたスタジアムの雰囲気も素晴らしく、下位に低迷した過去2年間とは異なるシーズンになりそうな、期待がふくらむ勝利だった。

以上

2013.03.18 Reported by 石倉利英