本文へ移動

今日の試合速報

ルヴァン 準々決勝 第1戦
ルヴァン 準々決勝 第1戦

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第24節 北九州 vs 草津】レポート:草津がアディショナルタイムに劇的ゴール。北九州は内容を結果に結びつけられず。(12.07.16)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
5分の長いアディショナルタイムが終わろうとしていた。

草津はこのアディショナルタイムは自陣に引き、スローインのボールを取るのもゆったりとしていた。リスクを負って勝点を失うよりは、最低限の勝点1を得ようという考えが出てくる時間帯だ。一方で北九州は88分に林祐征を投入、明白なターゲットを置いて勝点3を取りに行こうとしていた。そういう時間帯に、得てして勝負は秘めたる不思議な綾を見せてくれるものだ。

記録上は90+5分。分かりにくいが、後半アディショナルタイムの4分台。そう、アディショナルタイムはもう終わろうとしていた。

左からのCKを得た草津のラストチャンス。途中交代のヘベルチがゴールのファーサイド際にスピードを抑えたCKを入れると、シュートしようとする草津とクリアしようとする北九州の選手が入り乱れ、ボールはニアサイドへとこぼれる。そしてそこに入り込んでゴールへと振り抜いたのが中村英之だった。「どっちが点を取るかという試合。こういうときはセットプレーが意味を持つ」と冷静にチャンスを待った中村。劇的弾が草津に4試合ぶりの勝利をもたらした。

勝負は不思議なものだ。前半の草津のシュートはわずかに1本。対する北九州は6本を放った。決定的なチャンスもいくつかあり、22分に左サイドをえぐったレオナルドからの低いクロスに竹内涼が反応して右足でシュート。35分には木村祐志のFKを小森田友明が頭で繋いで、最後はキローラン木鈴が左足を振り抜いたが、いずれもわずかに枠を捉え切れなかった。ただ、前半は北九州がゲームを支配していたことを考えれば、チャンスの数もシュートの本数も少なかった。「相手がもっと怖がるようなそういうところへボールを入れていく、シュートで終わるところが足りなかった」(三浦泰年監督)。ゲームはゆっくりと草津へと傾いていく。

後半は一転して草津の時間帯が続くようになる。53分、左サイドを上がった永田拓也からのパスを受け、この試合で前線を張った遠藤敬佑が右足で枠を捉えるシュートを放つ。GKが外にはじき出してCKを得ると、そのCKに中村が合わせてクロスバーを叩き、ネットは揺らせなかったものの草津が波状攻撃でゴールに迫った。
波状攻撃が一旦落ち着くと、北九州は70分に多田高行の左からの長いクロスボールを竹内がゴールラインぎりぎりのところで折り返してゴール前に繋ぎ、池元友樹がヘディングシュート。GK北一真の手に収まってこちらも決めきれないが、次第に北九州がまた自分たちの時間帯を作るようになる。
さらに69分に中原秀人を投入すると、ダイヤモンド型の4−4−2から、新井涼平のワンボランチのまま4−3−3に変更。「前線に人数を掛けられる」(新井)布陣であり、「相手の右サイドの裏を突きたかった」(三浦監督)という意図を持っての4−3−3もすんなりとはまった。89分には木村のアーリークロスを途中出場の常盤聡がボックス内でおさめると、相手DFを交わしながらシュート。コースに入ったDFに出されるが、「中原と、常盤の交代は相手に脅威を与えることができた」と三浦監督。前半に足りなかった「相手への脅威」が増えた北九州が、劇的弾を自分たちのものにする時間帯が近づこうとしていた。

しかし。5分の長いアディショナルタイム、勝点3を呼び込んだのは、苦しい時間を耐えた草津だった。

草津は4−4−2のままにメンバーを入れ替え、試行錯誤しながら北九州に乗り込んだ。「苦しんだ分この勝利は大きい」と副島監督。次節ではゲームメーカーの松下裕樹が累積警告で出場停止となり、さらなるメンバーの入れ替えは避けられないが、「厳しいゲームになると思うが継続して戦いたい」と引き締めた。

北九州にとっては悲観する負け方ではなかった。まだ北九州はJ2を戦い抜いてJ1を目指す道のりを歩み始めたばかり。そのチームが最後の1分を除けば、最底辺からのビルドアップと前線でのポゼッション、裏へのスプリントという魅力的なサッカーを展開した。守備のハードワーク、引いた相手を崩す工夫を『できていない』と評するのは簡単なことかもしれないが、それよりも『できた』ことを数えていける温かな目を持っていたい。「時間と経験とこういうハードな試合をもっともっと積み重ねることによって、今日みたいな試合を、しっかりしたサッカーをやって取れるチームに変わっていければ」。この日、誕生日を迎えた三浦監督は悔しさの中にも手応えの表情を浮かべていた。

拙稿のしめくくりに、もう1点、言及しておきたい。
この日の入場者数は2,894人。J2の11試合で最も少なかった。「平成24年7月九州北部豪雨」と名付けられた災禍から一夜明け、蒸し暑くもおだやかな天候となった3連休の中日だ。雨が降っても、晴れても、勝っても、負けても、この数を続けるわけにはいかない。
チームは『できていない』状態から『できる』状態へと確実に進んでいることは分かるが、チームを取り巻く我々の『できる』ことは増えているのだろうかと、もっと試合のダイナミズムを伝えられればという自戒を多分に込めながら、入場者数の低迷に臍をかむ思いで本城をあとにした。
いま、北九州は、サポーター、クラブ、チーム、スポンサー、そしてそれを伝える者たちの『できる』ことへの挑戦と継続が試されているようにも感じる。点の努力を線へ、面へ。まだまだシーズンの残りは長い。

以上

2012.07.16 Reported by 上田真之介
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/09/05(木) 14:00 Jリーグ審判レポート(シンレポ!)審判の舞台裏 #6 「元Jリーガー 御厨貴文が審判への道を選んだワケとは?」