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福岡との次の対戦がJ2なのか、北九州もまた立つことを夢見ているJ1なのかは分からないが、500万もの県民がいる福岡県の名に恥じず、また九州を代表する二大都市の威信がかかった本物の「ダービー」になるために、順位や置かれた状況を抜きにした熱いバトルを期待したい。
ここまで1勝の北九州。気持ちが空回りしているというよりは、残念ながら気迫の感じられない試合もあった。ベテラン選手は危機感をにじませ、チーム全体のメンタル面での成長を促す。「ダービーは雰囲気が違う。ここで気持ちの入らない試合を見せるわけにはいかない」と話すDF河端和哉は今週も一際大きな声でチームを鼓舞。チーム最年長のMF桑原裕義も「地域リーグ時代からしぶとくやるのがうちのサッカー。1人でするものではないので、カバーするとか、サポートするとか、そういう当たり前の助け合いをしないと」と原点を見つめ直す。
「苦しいと言えば苦しい。でもここで崩れないのもこのチームのすごさ。僕らの年代がチームを引っ張っていくようにしないといけないし、それも求められていると思う」。29歳のFW大島康明もそう話し険しい表情を浮かべたが、確かな自信も垣間見えた。
チームが低迷したまま終盤戦を迎えた。自信を失いかけている選手もいるだろう。それでもJリーグ経験豊かな選手たちがチームを引っ張り上げようと奮闘している。練習中や全体練習が終わった後も、ベテラン選手や年齢的に選手に最も近い藤吉信次コーチらが身振り手振りで若い選手らにプレーを教えていた。チームを立て直したいという思いがはっきりと伝わってくる。成績は振るわないが、這い上がろうという熱意の灯はまだ消えていない。
ところで、前回のダービーの際に「福岡には特別な思いがある」と話して最も燃えていたのが北九州市出身のDF重光貴葵だったが、残念ながら重光は離脱中。それでももう一人、燃えている男がいた。北九州市近郊のみやこ町出身で、福岡から移籍してきた長野聡だ。
長野は「僕とバタさん（河端）のところでしっかりと止めて、カウンターで決定機を作っていきたい」と試合を展望。昇格のかかる古巣に対しては、「アビスパには『あそこで勝っとけば』というような試合をしたいですね」と闘志を燃やした。
一方で、同じく地元出身選手のFW池元友樹は「ダービーというよりも、最近は勝っていないのでまず1勝しないと」と対戦相手にかかわらず勝利にこだわった。
北九州にとって福岡はもちろん簡単に勝点が取れる相手ではない。与那城ジョージ監督は「守りきれるわけではないし、引いても攻撃に出られない」と北九州の現状を分析。「不安を抱えたまま試合を迎えることはできない」と語り試行錯誤を重ねている。W杯の中断明け以降、様々な手を打ってきたが、実を結ぶべき時期にも来ている。このダービーで結実するかどうか、その手腕に期待したい。
そして最後にものを言うのはサポーターの後押しだ。河端は、前所属の熊本ではアウェイでも大勢のサポーターが詰めかけて後押ししてくれたと語り、「（北九州はダービーで）ホームジャックされてるからね。今度はうちらがジャックするくらいじゃないと」と話していた。
声をあげ、手を叩いての精一杯の応援。それに応えうる試合を見せなければ、勝っても負けても、どんな言葉を発しようとも響かない。今週の選手たちを見ていると、気持ちの入った試合をしたいと繰り返したベテラン勢の言葉通り、これまで以上に練習に熱がこもっていた。結果はどうであれ熱い試合が期待できるだろう。
イレブンとサポーターの力で、レベスタに黄色の存在感を示そう。伝統は始まったばかり。どこにも負けない世界一熱いダービーへ、ともに育て上げていこう！
以上
2010.10.22 Reported by 上田真之介
