12月29日（火） 第89回天皇杯準決勝
名古屋 1 - 1（PK 5 - 3）清水　（13:06／エコパ／19,578人）
得点者：16' 岡崎慎司（清水）、56' 玉田圭司（名古屋）
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勝敗を別に考えれば、素晴らしいゲームだった。清水は、名古屋の力量を十分に理解したうえで、勝つための試合運びを忠実に実行し、ほぼ思惑通りの展開に持ちこんだ。だが、残念ながら結果だけは思い通りにならなかった。

天皇杯に優勝し、ACL出場権を獲得したいという想いが非常に強い両チームは、準々決勝からの17日間で万全の準備を行い、その成果をキックオフ直後からピッチ上で表現した。球際では激しい競り合いが見られ、攻守の切り替えも非常に速く、気持ちの入った集中力の高いサッカーを披露したのはどちらも同じ。パスをつなぐ数では名古屋が上回ったが、清水も要所でリズムよくパスをつなぎ、相手ゴールに迫っていった。

ただ、前半はある程度相手ペースになることは想定の範囲内。名古屋が素早い攻守の切り替えで前から厳しくプレッシャーをかけて清水の速攻を止め、パスをつないで主導権を握る展開が多くなったが、「前半は相手のプレッシャーが厳しいけど、後半は絶対にルーズになってくるという話だったので、耐えるところは耐えて、相手の背後をうまく突くということを狙いにしていた」（兵働昭弘）という意識で、焦りはなかった。ヨンセンではなく長沢駿を先発起用したのも、相手のアンカー（吉村圭司）を長沢にしっかりマークさせ、サイドチェンジを少なくさせるという狙いもあっただろう。
そして、16分には狙い通りの形で先制点を奪うことに成功する。リスタートから名古屋のプレッシャーが一瞬緩くなった中、「顔を上げたときに兵働さんが走っていて、DFが1人つられてオカ（岡崎）のところがコースが空いた」と言うボランチの本田拓也が、名古屋の高いDFラインの裏にフィード。そこから岡崎慎司が動き出しの良さを生かしてDFより一歩早く裏に抜け出し、GK楢崎正剛の直前でちょんとボールを蹴り上げてループシュート。これが見事に決まって、清水が貴重な先制点を奪った。
岡崎は、その他のプレーでも精力的な動きと球際での強さを発揮し、コンディションが戻ってきたことを証明。エースとして頼もしい働きを見せ、序盤から大いに可能性を感じさせていた。

その後の展開は、前述の通り名古屋が押しこむ時間が長くなる。しかし、清水の中盤は素早い帰陣できっちりと守備のブロックを作り、DFラインも児玉新を中心に細かいラインの上げ下げを行って、できるだけラインを高く保つ。単純な高さ勝負ではケネディに勝てなかったが、ブロックのコンパクトさを保っていたおかげで、その後のセカンドボールは清水がよく拾い、決定的なチャンスは名古屋に与えなかった。
後半に入ると、ヨンセンを投入して2点目を取りにいくが、初めのうちはまだ名古屋のペース。3分の左クロスから競り勝ったケネディのヘディングがポストに当たるなど、彼の高さでヒヤリとさせられる場面は何度かあったが、それ以外に守備の破綻はない。
しかし、PKを与えてしまったことは唯一計算外だった部分。10分の左クロスに対して児玉とケネディが絡んで倒れ、主審はPKスポットを指さす。これを玉田圭司に決められ、試合は振り出しに戻った（後半11分）。
そこから勝ち越し点を狙う清水に、カウンターのチャンスは何度かあったが、そこでミスが目立ってシュートまでなかなか行けなかったことも、前半から目立った課題のひとつ。さらに、CKが120分間で11本と数多くあったが、チャンスらしいチャンスになったのは延長前半1分のヨンセンのヘディングだけというのも、思惑通りにはいかなかった部分と言える。

だが、後半30分を過ぎたあたりからは、予想していた通り名古屋に疲労が目立ち始めて清水ペースになってくる。そして1-1のまま迎えた延長前半では、12分と13分に岡崎が決定的なシュートチャンスを迎えるが、GK楢崎の好守に阻まれてしまう。とくに12分のシュートは、あと少しだけコースが厳しければゴールになっていた場面だけに、岡崎も「そこでゴールを決められないのは自分の責任」と悔しさをにじませる。結果的にも、このシーンが勝敗の行方を大きく分けた。
その後も、両チームとも死力を振り絞って勝ち越し点を奪いにいき、清水の選手たちも最後まで勝利をあきらめずに戦い抜いた。だがPK戦では、最後の杉本恵太のシュートがバーに当たりながらもGK山本海人の背中に当たって決まるなど、運に恵まれなかったこともあって3-5で敗退。清水は、どうしても欲しかった決勝への切符を手にすることはできず、今季の戦いに幕を閉じた。

これで清水は今年もタイトルなし。この試合でも勝機は十分にあったが、最後の詰めを欠いた。この悔しさをバネに、「自分たち自身にもっと高いものを要求して、厳しくやっていく必要がある」というキャプテン兵働の言葉通り、来季こそもう一回り成長し、最後のワンピースをはめ込む姿を見せてほしい。

以上

2009.12.30 Reported by 前島芳雄